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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)

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36『神は天に在り、世は全てこともなし』

 寝台から体を起こした僕は、ネーベルとヒルトに、祝福を掛けてもらった時に起きたことを詳しく話した。

「シュヴェルの神事長には、加護持ちは感応しやすくなるって、前もって言われてたから、威圧が強くなる程度かな? って軽く考えたのが悪かった。まさか直接声を聴くとは思わなかったよ」

「神の声か……。なぁ、ちょっと気になったんだけど、シュヴェル神の声を聴いたアルがこんなふうになったのに、なんでブルーメ嬢は平気だったんだ?」

「そこなんだよなー。シュヴェル神は自分たちと女神ウイステリアは」

 シュヴェル神は等しくないと、言ったんだよね。等しくない。つまり自分たちと同じではないってこと。

「ウイステリアは? なんだ?」

 途中で話すのをやめてしまった僕に、ネーベルが先を促してくる。

「自分たちを神と呼ぶなら、女神は等しくないって言ったんだよ」

「等しくない……、神ではない、って事でしょうか?」

「そう、思うよね? 僕もそう考えた。でもウイス教が存在している以上、女神ウイステリアは、紛うことなく神なんだよ」

 あと超常的な存在であることは間違いない。

 母上だけじゃなく、国王陛下やオティーリエ、それにブルーメ嬢とか、人の意識に干渉できるということは、人じゃない。

「神にもランクがあるんじゃないか?」

 考え込んでいたネーベルが口を開いた。

「人間だって王族、貴族階級がある。神にだってそういう階級があるんじゃないか? それにあのシルバードラゴンが言うには、この世界はもともと創生者であるシュッツ神道の神々が創った世界だ。そこに女神ウイステリアが後からやってきた。力の配分では、どう見たってシュッツ神道の神々のほうが上のはずだ」

 うん、そう言われると確かにそうだ。

「でもシュッツ神道の神々は、容易に人の世に手を出さない。昔はシュッツ神道の神が人前に現れて何かをしたってことはあったけど、今はそういった話はほとんどない。つまり、シュッツ神道の神々にとって、人の前に姿を現す時期は終わったってことだと思う」

「……なるほど。『神は天に在り、世は全てこともなし』か」

「なんですかそれ?」

 不思議そうに訊ねるヒルトに答える。

「前世の詩人が詠んだ詩の一節。解釈はその詩を読んだ人によって違ってくるんだけど、大まかに言えば、『この世には幸も不幸もたくさんあるけれど、それは神にとっては些細なことで、天上から人の営みを見ていますよ』という意味だと思ってもらえばいいかな?」

 話を聞いたヒルトが考えながらも、自分の考えを口に出す。

「シュッツ神道の神々にとって、アルベルト様と女神ウイステリアとのことは、人の世の出来事だと思っているのでしょうか?」

「堂々巡りになっちゃうね。それだとやっぱり女神ウイステリアは、神ではないってことになる。シュヴェル神は、女神なんて眼中にない様子だったよ。アレはその気になれば、プチッとできる」

「「プチ」」

「そう、プチッとね。戦神であるシュヴェル神っていうのもあったと思うんだけど、恐れ多い、いや、そんなもんじゃないね。恐怖で顔を上げられないって感じだった。あの恐ろしさはシルバードラゴンの比じゃないよ。つくづく実感した。もう僕絶対に祝福は受けない」

 僕が何とか耐えられたのはきっとヴィントの加護を貰っていたからだろうし、シュヴェル神の加護を持っているヒルトなら、もっとちゃんと会話ができていた可能性もある。

 加護を持っていない普通の人は、あの畏怖には耐えられないだろう。

「他の神様は違うかもしれないけど、二度とあんな体験はしたくない」

 人とか人外とか、もうそういった次元じゃないんだよ。

 あれなら、女神なんて塵芥なんじゃないか? 簡単に抹消できるはずだよ?

 でもシュッツ神道の神々はやらない。

 ってことは、もしかしてあの女神は、人の枠に入ってることになるのか?

 この世界は、亜人もいなければ、妖精や聖霊と言った存在もない。

 でも、『神』はいる。

 シルバードラゴンと会わなければ、僕はシュッツ神道の神もウイス教の女神も、偶像的な存在だと思っていたけど、そうじゃないってことを知った。

 それにシュヴェル神の声を聴いてしまった以上、『神』なんていない! なんてもう言えやしない。

「女神の正体については保留にしておこう。どのみち僕らの前に現れなかったら何もできないわけだし、現れたとしても僕の……」

 そこでようやく思い出した。

「僕の『夜明』と『宵闇』は?」

 気絶しちゃって受け取ってないんだよね。

「こちらにあります」

 高価な布にくるまれた二振りのバルディッシュが、大事そうにすぐそばのテーブルの上に置かれていた。

「アルベルト様、確認してください」

 ヒルトはそう言って、『夜明』と『宵闇』を一振りずつ僕に手渡す。

 受け取った僕は二振りにまかれていた布をとって、目を見張る。

「え? 嘘、これ、本当に僕の『夜明』と『宵闇』?」

 いや、形も、色も、元のものとは変わっていない。変わっていないけれど、気のせいではなく、刃の輝きが殺意マシマシになってる。

 まさに神殺しの武器と言われても、みんな納得してしまいそう。

 慌てて傍にあったアイテムボックスになってるカバンから、刃のところにかぶせるカバーを取り付ける。

「ダメだ、これは気安く刃を出したりできない」

 僕の呟きにネーベルとヒルトもコクコクと頷く。

「神事長も祝福を受けた武器がこうなったのは初めてだって言ってた」

 まじかー。

 これって、僕が女神を殺したいって言ったからだよね。

 逆に言えばこれぐらいにならなければ、女神は殺せないってことだ。



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