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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)

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28 セオリー通りの嫌がらせ報告はできない

 王立学園の理事会や、学園都市の運営陣としては、オティーリエの次兄はもとよりお荷物な人物だったので、これを幸いとして学長降ろしをして退任という形にしようと思ったそうだ。

 が、そこに待ったをかけたのが、学園都市を創立させ運営に携わっているハント゠エアフォルク一族のヘッダである。

 『そこまで言うなら、万が一の責任をアインホルン上学部学長が取っていただけるのですよね?』と、神殿誓約がかけられた誓約書にサインさせたそうだ。

 誓約内容は、『王立学園に在学中の僕とイジーが、何者かに襲撃、その予備軍の接触、お二人の王子殿下の御身に危険が差し迫った場合は、未遂であろうとも、学長に責任を取ってもらう』である。

 もう100%理事会と運営陣にとって、都合のいい内容であるにもかかわらず、アインホルン公子は、その誓約書にサインしちゃったんだって。

 ファァァァァー!! やべーな、まじで何も考えてない!!

 普通ならそこで、もっと事細かに内容を取り決めて、自分への不利なことにならないように修正を掛けるべきだったのに、今は諸外国と摩擦が起きてないし平和だから、襲撃なんかおきないと思い込んでいる。

 逆を言えば、アインホルン公爵家の人間で、王位継承権を持っている公子なのだから、立ち回り方によっては、国内で重鎮に近い位置にいてもおかしくなかったし、情報だって回ってきていただろう。

 にもかかわらず、重要な国政に関わる情報を回してもらえていないということは、それが他の重鎮たちの彼への評価なのだ。

 上の人間がそうそう簡単に、その手の情報を関係者以外に漏らすわけない。だけど、彼は、自分は継承権を持っている公子だから、その手の情報は回されて当然と信じて疑っていないのである。

 その迂闊さが命取りになるっていうのにさぁ。

 アインホルン学長は、もう何年も前の出来事である誘拐未遂事件のことを根に持っていて、僕を敵視というか、妹にちょっかいをかける気に食わない人物と脳内変換を起こして、現在に至っている。

 護衛の話も、些細な嫌がらせ程度だと思っているのだろう。

 だけど、ヘッダとオティーリエは、彼のその些細な嫌がらせを利用する気なのだ。

 王族である僕らの命を軽んじ、本来なら常時つけるはずの護衛を外す手配をしたと、僕らへの不敬を前面に押し出し、学長降ろしと領地への謹慎を目論んでいる。

 アインホルン学長を領地へ連れ戻した後は、謹慎させると言っていたが、まぁそれだけじゃすまないだろうね。

 継嗣はすでに始末されてしまっているし、ここで直系王族を害した余計な火種を残しておくほど、アインホルンも甘くはないはずだ。

 そのうち、アインホルン学長は、自分の甘さで王子殿下二人を危険にさらしてしまったとして、そのことで心を壊して自殺することになる。

 高位貴族になればなるほど、身内の後始末には容赦ねーからな。


 アインホルン学長のことは、そこまで僕に関わってきていないし、何かされるにしても小さな嫌がらせだから、僕の方から何かする必要もない。ヘッダやオティーリエに任せていて大丈夫だ。

 それよりも気を付けなければいけないのは、『女神』とかかわりがあるようなことを言っているオクタヴィア・ギーア嬢と、オティーリエの傍に出没しているヴァッハだ。

 オクタヴィア・ギーア嬢は、まるでタイミングを図っていたのか、彼女の話をみんなに周知したのを境に、僕らの周囲をうろつくようになった。

 ただ彼女の行動はこれまた不明すぎる。

 桃色の髪に浅葱色の瞳のオクタヴィア・ギーア嬢は、僕らの周囲をうろつきはするものの、僕らと直接会話をしようと教室を訪ねてきたり、声を掛けてくるわけではない。

 遠目でこちらを窺っていたり、僕らが移動する廊下で待ち伏せしていたりするものの、わざとぶつかってきたりすることはない。

 何がしたいのかは不明だけれど、前世でざまぁ系のラノベを読み込んでいたオティーリエによれば、接触するタイミングを計っているのではないかということだ。


「アルベルト様とイグナーツ様は、彼女を見ても視線を素通りにさせてますよね? ジーッと見つめていませんし、わざわざ振り向いて確認もしていない。おそらく彼女の方はお二方が自分に気づいていないと思っているのではないでしょうか?」

「反応すると寄ってきそうな感じはするからねぇ?」

 そのためイジーにも視線を合わせないように、見てもさりげなく視線を外して、反応しないようにと言ってある。

「ギーア様の意図は分かりませんが、もし巷で話題になった聖女と王子の話や、男爵令嬢のシンデレラストーリーを読み込んでいる方だとしたら、お二方との出会いにも劇的な演出を望んでいるのではないでしょうか?」

「んー、それこそ恋物語に出てくるような?」

「はい、もしくは……」

 オティーリエは途中で言い淀むが、途中でやめることはなく最後まで言い切った。

「アルベルト様とわたくしと同じ共通点をお持ちではないかとも考えられるかと」

 傍にイジーたちがいるせいか、オティーリエは具体的な単語を出さなかった。

 でも、僕はオティーリエが何を言わんとしているのかわかる。

 オティーリエは、オクタヴィア・ギーア嬢が、僕とオティーリエと同じく、転生者なのではないかと言いたいのだ。

 ないとは言い切れない。

 むしろその可能性のほうが高いかもしれない。

 もしオティーリエの言う通りなら、そっちの方も警戒しないといけないのではないか? と思ったら、オティーリエは心配いらないと言った。

「どちらにしろ、アルベルト様たちと行動を共にしていることは、隠れて嫌がらせをしているという難癖をつけるのには無理があります」

 確かにそうか。

 あの手の嫌がらせを受けたという訴えは、王子と悪役令嬢の不仲。そして行動を共にしていないという隙をついてのでっちあげだ。

 オティーリエとブルーメ嬢は、一時も僕らと別行動をとることがないのだから、その手の冤罪を作るには無理だろうな。


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