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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)
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02 ヒロインの事情

 ブルーメ嬢もオティーリエとほぼ同じだと思う。

 これはもしかしなくても、女神の介入で間違いないはずだ。意識や思考、それから感情を女神の都合のいいように誘導されていたとみていいと思う。

 僕だって、回線が繋がっていないとき、ときどきおかしな感覚と言うか、自分らしくない感情に支配されそうになった時があるから。


 僕が口を開くのを待っている様子のブルーメ嬢に気が付いて慌てて話を始める。

「僕が聞きたいことはね、あの時言っていた、声の話なんだ」

「声……、あのお母様たちのこと教えてくれた声のことですか?」

「うん、その声。女の人の声だった?」

「はい、そうです。どう表現したらいいのでしょうか。いつも笑いを含んだ声のような、私に話しかけてきたときは、いつも楽しくて仕方がないと言った感じで」

 オティーリエの時もそうだったな。笑い声が聞こえたって言っていた。

「大笑いする感じじゃなくって、くすくす笑うような感じ?」

「はい、そうです。でもその……、悪いことを嗾けられている感じではなかったんです。私のことを心配しているといった様子で、それでこの通りにすると、少しだけいいことが起きたんです」

「いいこと?」

「はい。私付きの侍女が、親身になってくれたり……」

 その侍女はあれか? ブルーメ嬢の身なりをおかしいと言わなかった侍女のこと?

「お父様やイヴのお母様から怒鳴られなかったり」

 その代わり無視されたのでは? あと、いないものとされて、食事を抜かされたりしたんじゃないかな?

 か、感覚がバグってる……。

 そんなの全然いいことじゃないよ?

 これが俗にいう洗脳って言う奴か? されてることは酷いことなのに、その前がもっと酷い仕打ちだったから、あれよりもましだとか、これぐらいで済んでよかったとか、そのうちなにもされなかったって、脳内変換していってしまうやつ。

 女神の醜悪さを知るたびに、シルバードラゴンが、神を名乗るなどと烏滸がましいって言っていた意味がよくわかる。

「その声って、イヴのことも何か言ってたんだよね?」

「はい、味方のふりをしているけれど、私のことを蹴落とそうとして様子を窺っているだけだとか。でも、イヴは、確かに言い方はとてもきつかったりはしたんですが、そうさせたのは私の態度であったと、今ではわかっています」

 まぁねぇ、なんかうじうじしてはっきりしないのが我慢ならん! ってタイプだからね。

 あと、自分のことなのに現状打破する気配がなかったことも、イヴには腹立たしかったのかもしれない。

 でもそれはさ、できる人とできない人がいるからなぁ。

 いや、ブルーメ嬢はしなければいけない人、だったか。なんせ次期伯爵だもの。穀潰しであろう父親とその愛人であった後妻をコントロールしなくてはいけない立場だったはずだ。

「あの声はイヴは私のものを何でも欲しがるはずだって言っていたんです」

「何でも……。服とかアクセサリーとか?」

「はい。でもイヴは私が身に着けているものを見ても、欲しいとは言いませんでした。私の着ている服やアクセサリーを見て、時々顔をしかめてはいたんですが、あれは羨ましいというよりも、どちらかと言えば、奇異の目だったように思います。それで昔の自分のファッションを改めて思い出すと、確かに合っていなかったのです。なんというか、ちぐはぐで奇抜であったと思います」

 あぁ……つまりイヴは、ブルーメ嬢のファッションセンスに、もっとセンスを磨けと思っていたのかもしれない。

「それで、その……婚約者のことになるのですが」

「あぁ……、えーっとフィッシャーだったっけ?」

「はい、パウル・フィッシャー様です。パウル様の母親であるメラニー・フィッシャー伯爵夫人は、私の亡くなった母とは学生時代の友人でいたそうです。メラニー様に連れられて、よく我が家に遊びにいらしたんです」

「婚約者になったのは、その伝手で?」

「いえ、フィッシャー伯爵と母との取り決めでした。その……、フィッシャー伯爵は観賞用の魚に投資をしていたそうなんです」

 観賞魚、かぁ。錦鯉とかそういうのかな? この世界に錦鯉……。いや、地域的に言えば熱帯魚のほうだな。

「ところがその投資していた観賞用の魚が全滅してしまったらしく、結局その事業は借金だけ残って廃業となってしまったわけでして。そこで、夫人と友人であった母に借金の申し込みをしにきたんです」

「あー、負債を肩代わりする代わりに、フィッシャーをブルーメ嬢のお婿さんにっていう話だったのかな?」

「はい。パウル様は次男でしたし、母はその頃自分の体調が思わしくなかったことにも気が付いていたのだと思います。それにその、お父様との仲もうまくいってなかったので、私の下の兄弟は期待できないというか……」

 うんうん、わかるよ。

 子供はもうすでにブルーメ嬢がいるから、作る必要がないと思って、伯爵代理はイヴのお母さんのところに入りびたりだったんだろうね?

「そっか~、ん? ちょっと待って。その婚約の話が出る前から、フィッシャーは夫人と一緒に遊びに来ていたの?」

「どっちだったのでしょうか? 最初は夫人とパウル様のお二人だったと思います。そこから、一度ご家族全員でいらしたと……」

 じゃぁ、婚約は後からかな?

「前ブルーメ女伯と、フィッシャー夫人は昔から仲がよかったのかな」

「よそよそしい感じではなかったかと思います。母が亡くなってからも、時折御呼ばれしてくださいましたし」

 それだけではちょっと判断できないな~。

 ブルーメ嬢の母君はともかく、フィッシャー夫人は自分の息子の所業を知っているのか?

「ちょっと突っ込んで聞いていい?」

「はい?」

「フィッシャー伯爵夫人って、自分の息子が幼馴染みファーストして、婚約者を蔑ろにしているのは知ってたの?」

 僕の問いかけに、ブルーメ嬢はぽかんとした表情を見せた。


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