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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(二年生)
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25 複雑な異母姉妹

 二人? というか、イヴ・アンラーゲ嬢に自己紹介をされて、僕らもおのおの名乗りあげをしてる間に、シルトが二人のお嬢さんたちが座る椅子のセッティングを終わらせていた。

 二人に椅子に座ることを勧め、ランツェもお茶が入ったティーカップを二人の前に置く。

「う~ん、どう切り出せばいいのか迷ってしまうんだけど、とりあえず、経緯を聞かせてくれるかな?」

「……先に、お伝えさせてもらいたいのですが、私は八歳になるまで、平民暮らしをしていました。そこから一応貴族であるらしい実父に引き取られ、貴族のマナーや話し方を学びましたが、それなりにの程度です。私の態度や口調で、殿下方に不快な思いをさせてしまうかもしれません」

 堂々としてるなぁ。でもそこに媚のようなものはない。

「ここは公的な場ではないから、話しやすい口調でいいよ。僕やイジーのことも、『殿下』の敬称はなしでお願いね」

 僕の言葉にアンラーゲ嬢はほんの少し、顔を強張らせる。

「ありがとうございます。それから、こうして匿っていただき助かりました。そちらも感謝します」

 そう言って深々と頭を下げて礼を述べたアンラーゲ嬢は、鋭い視線を隣に座って俯いているブルーメ嬢に向ける。

「お姉様、何も仰らないの?」

 こ、声が……、なんとか怒りを抑えてるって言わんばかりだ。

 これじゃぁ、どっちが姉でどっちが妹かわからない。

「あ、ありがと、ございま……」

 ブルーメ嬢の小さい声は、最後のほうは聞こえなかった。

 そしてアンラーゲ嬢はスーッと息を吸うものの、それをため息として吐き出すことはなく、何かに耐えるかのように両手で顔を押さえる。

「申し訳ありません。ちょっと、落ち着く時間をください」

 あー、たぶんアンラーゲ嬢は、匿ってくれただろう僕らに対して、お前は礼の一つもまともに言えんのかと、ブルーメ嬢に言いたいのだろう。

 ここに僕らが居なかったら、間違いなくブルーメ嬢を叱責したんじゃないかな? もしくは、何も言わずに彼女の前から立ち去るかのどっちかだ。


「大丈夫? 冷めないうちに、お茶飲んでね。あとクッキーも食べて」

「……はい、大丈夫です。お茶いただきます」

 アンラーゲ嬢はフーッと息を吐き出し、ティーカップに手を伸ばす。ちなみにブルーメ嬢は、先ほどから俯いたままだ。

 対人苦手な人見知りって言ってたからなぁ。


「それで、さっきの男子生徒は、お二人の知り合い?」

「知り合い、ではないですね。私は無関係です。ですが姉の繋がりです」

 話を差し向けると、アンラーゲ嬢はそう言って、顔をしかめた。

「姉には婚約者がいるのですが、ク……その婚約者と仲の良い幼馴染みがいます。人目もはばからず婚約者がいる男といちゃついてる、常識という言葉を何処かに置いてきた女です」

 ぶっちゃけたわ。

「男に媚びるのが大変お上手な女なので、男の取り巻きがたくさんいます。姉の婚約者も相手のことを幼馴染みと言っていますが、実質取り巻きです」

 フィッシャー。君、婚約者の異母妹から、幼馴染みの取り巻き認定されちゃってるよ?

「先ほど、私たちを追いかけていたのも、非常識女の取り巻きの一人です」

「なんで追いかけられたの?」

「姉に難癖をつけていたところを見かけてしまいまして、私が言い返したらそれが気に入らなかったのか怒りだしたんです。それで、逃げたんですけど、後を追いかけてきたんです」

 それはまた……、なんと言っていいのか。

「アル、ちょっと出てくる。イグナーツ様、リュディガーお借りします」

「あ、俺も行く」

 話の途中で、ネーベルが声を掛けて、リュディガーを連れて室内から出ていこうとしたら、テオまで一緒について行く。当然のごとく、クルトも一緒だ。

 テオは逃げたな。まぁ、テオはこういう雰囲気は苦手だろうから仕方がないか。


 部屋を出ていくネーベルたちを見送ってから、アンラーゲ嬢とブルーメ嬢に向き直る。

「慌ただしくて、ごめんね」

「いえ、お話し中にお邪魔したのは、こちらですので……」

 所在なさげなアンラーゲ嬢に、僕は続けて話す。

「僕、ブルーメ嬢の婚約者のこと知ってるんだ」

「え?」

 ブルーメ嬢からは……、聞いてないか。仲悪いみたいだし。でもオティーリエかヘレーネ嬢からなにか聞いてなかったのかな?

「僕とネーベル以外、ブルーメ嬢と同じクラスなんだよね」

「あ、はい。それは知ってます」

 そっか、それは知ってるのか。まぁ仲は悪くとも異母姉のクラスだからね。

「それで、去年の学園祭の準備中に、ブルーメ嬢の婚約者がイジーたちのクラスに怒鳴り込んできたでしょう?」

「あぁ、あれ……」

「そのあと少しだけ話したんだ。あと、その日の放課後、アンラーゲ嬢がブルーメ嬢に怒ってたところも見ちゃったんだ」

 あの時のことも素直に話すと、アンラーゲ嬢は目を見開いて固まってしまう。

「……」

 そして再び両手で顔を覆って、深呼吸を何度か繰り返してから、僕に向き直った。

「見られていたなら、取り繕う気はないわ。さっきアルベルト様は、ここは公の場所じゃないって言ったし、口調も崩させてもらうわね。あと、その『アンラーゲ嬢』っていうのやめて。他の大勢の人がいる場所でもないし、イヴでいい。『嬢』って付けないで。自分のことじゃないみたいだから」

 そう言ってアンラーゲ嬢……、いやイヴははっきりと主張する。

「うん、わかった」

「あれを見たと言うなら、もうわかってると思うけど、私とアンジェリカは仲の良い姉妹じゃないわ」

 これまたはっきりとイヴがそう言った途端、ブルーメ嬢がビクッとして、俯いていた顔をあげる。

 長い薄灰色の前髪の隙間から見える桃色の目は、悲しみに染まっていた。


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