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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(二年生)
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24 乱入、二回

 しばらくするとテオたちがぱたぱたと駆け込んできた。

「悪い! 遅くなったー!」

「兄上、遅くなって申し訳ありません」

「掃除当番だった?」

「違います。テオが担任につかまったんです」

 何やったの?

 僕の視線に気づいたテオが慌てて弁明する。

「なんもやってねーよ! 七不思議のことで、危ないことはしないようにって言われただけ」

「探るなって圧を掛けられた?」

「いや、そーいうのでもない。夜に寮を抜けだしたり、変なものを見かけても追いかけたりするなって」

 ふ~ん。ってことは、夜に外を出歩かせたくないんだね。

 ゴーレムを動かすようなことが起きてるのかも。侵入者がいるのかな。


「まぁいいや。みんな座って座って」

「あっ! クッキーがある!」

「シルトとランツェが持ってきたのか?」

「はい、お昼にアルベルト様が捜査会議をすると仰ったので、ご用意させていただきました」

 シルトが人数分のお茶を入れながら、イジーの問いに答える。

「テオはクッキーばっかり食べてるんじゃないよ。何処まで調べられたの?」

「地下迷宮の噂が集中しているのは、中央公園だったので、そこを重点的に調べたんですけど」

 地図を広げながらイジーが説明する。

「なにも見つけられませんでした」

 どれどれ。

 イジーが広げた地図には噂がある場所に×印が付いている。

「イジーもお手あげ?」

 こっくりと頷くイジーを見て苦笑いが漏れる。

「じゃぁ僕からヒントね」

 予め用意していたのは、要塞時代の地図だ。これは最初のころにテオとイジーに渡していたんだけど二人とも活かしてくれていなかった。

「さて、こっちが要塞時代の地図ね。そしてこっちは現在の学園都市の地図。二つを見比べて、中央公園があった場所は、昔何があった場所でしょう?」


「「あっ! 城!」」


 二人ともそろって声を上げる。

「そう、中央公園は、この要塞のお城があった場所。次はこっち」

 中央公園の地図と、要塞時代だった頃のお城の内部地図だ。

「お城といっても、内部は広いからね。ここが要塞の持ち主だった城主が住んでいただろう居館区だったようだよ」

 現在の中央公園の地図に、居館区があっただろう場所にバツ印を付ける。

「元の要塞主は結構裕福な人だったのかな? 自分たちが住む居館とは別に別館がある。おそらく公的な仕事はこの別館でやっていたのかもしれないね?」

 別館のほうにもバツ印を付ける。

「こういったお城には、大体何がある?」

「武器庫! 鍛錬所!!」

 元気よく答えるテオをじっと見ると、言葉を詰まらせる。

「それだけじゃないでしょ?」

「……地下牢?」

「それもあるね。イジーは?」

 ジーッと地図を見つめていたイジーはぽつりとこぼした。

「脱出用の隠し通路」


 はい、大正解。


 答えを出したイジーとは逆に、テオはクッキーを咥えながら、呆然とこっちを見ている。

「行儀悪いよ? ちゃんと食べな」

 僕がそう言うと咥えていたクッキーを全部口の中に入れて、紅茶で流し込む。

「地下迷宮って、隠し通路のことだったのか?!」

 まぁ、おそらく? たぶん? なんじゃないかなー?

「ダンジョンじゃねーのかよ! つまんねー!!」

 途端にやる気をなくすテオに、僕はむっとしてしまう。

「はぁ? なに? もう解明できた気でいるの?」

「だって、地下迷宮じゃなくって、脱出用の隠し通路、なんだろ?」

 僕は持ってきた地図をくるくると丸めて、ぽかっと頭を叩く。

「このおバカ! いいかい、七不思議のお楽しみは、検証してこそでしょうが」

「検証?」

「そもそもどうして、脱出用の隠し通路が、地下迷宮なんて言う七不思議になったんだ? それさえもわかってないのに、もう全部わかっちゃいましたなんて思ってるんじゃないよ」

 僕の言葉を聞いてテオははっとしたような顔をする。

「そう、だよな」

「地下迷宮こと隠し通路は、まだあるのか。探してみます」

 イジーが僕を見ながら言う。

「見つかったら教えてね?」

「はい」

「じゃぁこれも……」

 以前ネーベルと一緒にチェックして回った、甲冑姿の銅像が置かれている場所を書き記した地図を渡そうとしたときに、バタンと音を立てて勢いよく扉が開く。


 そこには息を切らした女生徒が二人。

 白茶の髪に琥珀色の瞳をしたイヴ・アンラーゲ嬢と、彼女に手首をつかまれて、ぜーぜーと息を切らしているアンジェリカ・ブルーメ嬢が立っていた。


「匿ってください!」


 開口一番に助けを求めてきたその言葉を聞いて、ランツェに目配せすると、ランツェは二人を中に招き入れ、扉を閉める。

 そしてそのまま、設置されている衝立の奥へと二人の姿を隠すと同時に、再び出入り口の扉が開かれた。

 出入り口の前で立ちふさがるシルトが、二度目の乱入者を見下ろす。

「何か御用でしょうか?」

 人がいると思わなかったのか、相手は驚いたように、シルトを見上げる。

「あっ…、あの」

「本日、この場所はアルベルト殿下とイグナーツ殿下が利用しております」

「す、すみません!!」

 二度目に乱入してきた男子生徒は、素直に謝ると踵を返して立ち去っていく。

 しかしシルトはいつまでも扉を閉めることなく、立ち去っていく男子生徒の姿が廊下の角を曲がっていくまで見届けてから、ゆっくりと扉を閉めた。


「出てきていいよ」

 衝立の奥から、ランツェに促されながら姉妹が出てくる。

「助けていただきありがとうございます。イヴ・アンラーゲと言います。こっちは異母姉のアンジェリカ・ブルーメです」

 そう言って妹のほうは、しなれていないカーテシーをする。

 うっそでしょぉ。

 異母姉妹であることを隠さずに自己紹介しちゃうのかい。

 


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