20 またもやお呼び出し
僕が学園都市内にある、甲冑姿の銅像を全部調べ終わっても、テオとイジーの地下迷宮探しは難航しているようだった。
それでもどこか楽しげで、テオとイジー、クルト、リュディガーの四人で、あーでもないこーでもないと、ワイワイ言いながら、地下迷宮を探している。
そして僕のほうは相変わらず尾行はされているものの、相手からの接触はなし。
いったい何がしたいのやら。
そんな中、今日はこれからどうしようかと、ネーベルと話しながら、帰る支度をしていた時に、またもや僕を訪ねてきた生徒がいた。
「アルベルト様、お呼び出しですよー」
またしてもクラスメートに声を掛けられて、カバンをもって教室の出入り口へと向かうと、そこには見たことのない一組の男女。
「えーっと、どなた?」
「ラヴェンデル・ベックと言います」
「リーリエ・グラーフです。リューゲン殿下にお願いがあってまいりました」
二人とも神妙な顔をしていて、そして緊張しているのかカチコチとした様子だ。
「えーっと、お願い、聞けるかどうかはわからないけど、お話は聞こうか?」
僕を呼んでくれたクラスメイトに、挨拶をしてから、ネーベルと一緒に二人と移動することにした。
移動先は、下学部の学舎の中庭だ。
放課後でそこかしこに生徒がいるものの、密集しているわけではないし、青空の下のびのびとしていいだろう。
あ、ちなみにちゃんと設置されているベンチに座ってるからね。芝生の上に座ってないからね。
「お時間を頂きありがとうございます」
そう言ったのはベックのほうで、グラーフ嬢も頭を下げる。
「もう帰るだけだったから気にしないで。それで、お願いって、なにをお願いしたかったの?」
僕が王子だってことも知ってるようだけど、二人に接触した覚えはない。
どこかであった?
二人はちらちらとお互い目配せをしあって、僕に話す役を押し付け合ってる。
「時間は確かにあるんだけど、そうやって押し付け合ってるなら、誰が話をするか決めてからもう一度声を掛けてくれる?」
「「も、申し訳ありません!」」
声を揃えて、二人は謝ってくる。
いや、謝るよりも何の用事か言っておくれよ。
「そ、その、ゆ、友人のことで、リューゲン殿下にお願いしたいことがあります」
ようやくベックのほうが話を切り出してくれた。
「君らの友人?」
「はい、フランツのことです」
フランツ? 誰だっけ?
「あぁ、あのモラハラ野郎のことか」
低く唸るような声を出して、ネーベルが二人を見据える。
そこで、フランツが、フランツ・ゾマーであることに気が付いた。
「あぁ、メイヤーの婚約者であるユング嬢に、好きだけど素直になれなくって、貶して気を惹こうとしたけど、逆に嫌われたフランツ・ゾマーのこと?」
「そ、そんな言い方しなくたって」
グラーフ嬢がゾマーのことを庇うように呟く。
「事実しか言ってないよ?」
「そ、そうかもしれませんが、でもフランツには悪気はなかったんです」
ここにヘッダがいたならば、『まぁまぁまぁ、あらあらあら。お友達だけあって、大変よく似た感性をお持ちですのね。仲がよろしくて羨ましいですわ』って、特大の嫌味を投げつけただろうな。
僕は、ヘッダのような言い回しは無理だわ。
「かもしれませんじゃなくて、ゾマーがユング嬢にやったことは、精神的な暴力だ。心を傷付ける行為なんだけど……、それでも、ゾマーは悪くないんだね?」
僕の返事に、グラーフ嬢は言葉を詰まらせる。
ふむ、盲目的にゾマーは悪くないと思ってるわけではなく、ちゃんとゾマーのやったことの酷さは理解してるわけか。
でも僕の「ゾマーは悪くないのか?」という問いかけに、否定の言葉を出さないということは? グラーフ嬢はゾマーは悪くない、そう考えてるって、相手に思われるんだけど、大丈夫?
「ベックも、グラーフ嬢と同じ?」
傍観の姿勢になってるベックに声を掛けたら、はっとして首を横に振る。
「いえ、その……、フランツがウリケルさんにしたことは、その……、良くないこと、だと、思ってます」
「でもグラーフ嬢は、ゾマーがユング嬢にしたことは、人の心を傷付ける行為ではなく、好きな相手にする、正しい行いだと思ってるみたいだよ? 僕の言葉に否定してなかったし」
「ち、違います!!」
「悪気はなかったから、好きな子の心に傷をつけてもいいんでしょう?」
「そ、そうじゃないです! あの、違うんです! 私は、その、フランツが可哀想で、だから……」
可哀想ねぇ? 可哀想、なのかぁ……。
人としてどうなの? ってことをやらかしてるのに、可哀想なんだぁ?
「もしかしてグラーフ嬢って、ゾマーのことが好きなのかな?」
そうじゃなかったら、モラハラやってる人に対して、可哀想なんて普通は思わんよ。
僕の問いかけに、ベックが驚いたように、グラーフ嬢を見る。
「え?! リーリエ、そうだったのか?! でもお前、確か婚約者がいるんじゃなかったっけ?」
「違う! あ、違うのは、フランツのことで、フランツはただの友達よ! ラヴェンデルの言う通り、私にはちゃんと婚約者がいるもの」
グラーフ嬢の否定にベックは、なんだそうかと、あっさり納得させられてるけどさぁ、グラーフ嬢の顔真っ赤じゃん。
図星を突かれて、羞恥で顔赤くなってるんだよ。なんで気が付かないかなぁ?
ベックはあっさり信じちゃってるけど、僕もネーベルもグラーフ嬢はゾマーに好意を持ってると思ってる。
「あの! いい加減なことを……」
グラーフ嬢は言いかけて、止まってしまう。
それは僕もネーベルも、グラーフ嬢の否定するさまを白けた目で見ていたからだろう。
心の奥にしまい込んだ感情を見抜かれたと思ったのか、疚しい気持ちを隠し切れないと感づいたのか……。
「言わないで、ください……」
「そりゃぁ悪かったね」
僕がまったく悪いと思ってないのは、グラーフ嬢もベックも気が付いただろうけれど、それ以上の抗議をされることはなかった。
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