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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(二年生)
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12 ちょっとだけ後ろ暗いお話

 イジーの乳兄弟は、学園都市に来る年齢になっても、その思考……つまり自分は国王陛下の子供であるという認識を改めることがなかった。

 周囲の大人がどれだけ言っても、ときには魔力鑑定の結果を出しても、認めなかったそうだ。

 乳兄弟を預かることになった神殿も、それが王妃様からのご依頼で、なぜそうなることになったかという詳細も伝えられていたので、乳兄弟の矯正も自分たちに課せられたものとしていた。だからその結果も、逐一王妃様へ報告されていたのだ。


 預けられた当初は、事あるごとに自分は国王陛下の子供だと嘯いて、周囲の反感を買っていたそうだ。

 特に同世代の神殿に保護されている孤児や、神殿に通って基礎の勉強を教わっている子供たちには、すこぶる評判が悪かった。

 いや、だってね、乳兄弟の態度は、どこをどう見ても王族のものとは思えないものだったし、事あるごとに司祭から諫められていたのだから、誰も信じないし、嘘つきだと思われても仕方がない。

 乳兄弟も周囲の反応を見て、これはまずいと思ったのか、『自分は国王陛下の子供』と声に出すことはしなくなった。

 ただしこれはそういうことを言わなくなっただけ。

 『国王陛下の子供』と声に出さなくなった代わりに、今度は含みのある態度をとるようになったのだ。

 意外と賢い。

 だってさ、声に出して言い続けてくれたなら、不敬罪、王族を騙った詐欺罪として、罪に問えるのにね。ついでに処分も楽々だ。

 その手が使えなかったのは残念だよ。


 だけど、イジーの乳兄弟、使い捨ての餌にはもってこいなんだよね。


 人を人とも思っていない、非人道的な扱いをしているという自覚はある。

 でもイジーを国王にするのに、あの乳兄弟、邪魔なんだよ。イジーの瑕疵の一つになる危険性があるんだもん。

 僕がこういうことを考えているって、ネーベルに知られるのは、避けたかったんだよなぁ。

 汚れ仕事をお前ひとりでやるんじゃないって、怒られそうで。

 案の定、餌にしようと思ってると言ったら、ネーベルには呆れたような視線を向けられてしまった。

「そーいうことは、前もって言ってくれよ。あと、お前が直接やるな。俺を使え。そのために俺がアルの傍にいるんだぞ」

 ほらぁ、言われたぁ。

「ごめん、なさい」

「よし、許す」

 やったー許された。

 でもきっと次はないだろうから、ネーベルに隠し事はしないでおこう。


「それで、どうすんだ?」

 現在イジーの乳兄弟は、何かとイジーと張り合っている様子が窺えるのだけど、イジーは全く相手にしていないと言うか、眼中に入れていない状態だ。

 もしかして、乳兄弟のことは、もうイジーの記憶には、残っていないのかもしれない。

 学力テストの結果発表だって、あの乳兄弟はイジーに及ばないからなぁ。

「放っておいていいよ。餌だから、食いついてくれないとね」

「餌、な。見張ってなくてもいいのか?」

「気づかれちゃったら元も子もない」

 張り付いてたら、かえって警戒されちゃうよ。

 僕の言葉に分かったとネーベルは頷いた。


 イジーたちには聞かせられないキナ臭い話を切り上げて、集めた噂話は昼休みまでにまとめ上げた。

 お昼休みになって、いつものリザーブした教室に向かおうと立ち上がったら、教室の出入り口から、自分の名前が聞こえてきた。


「リューゲン王子殿下はいらしてるか?」

「リュー……?」

「え? だれ?」

「あ、アルベルト様のことじゃないか? アルベルト様、上学部の先輩がアルベルト様に用事があるようですよ?」

 最初の自己紹介の時、僕は自分のことはリューゲンではなくアルベルトと呼んでほしいことと、王子殿下や殿下はつけないで欲しいとお願いしているので、クラスメイトはみんな僕のことをアルベルトと呼んでくれている。

「はーい、今行くよー」

 ネーベルと一緒に出入り口に向かうと、見知らぬ上級生。

 ネクタイの色が赤色。ってことは四年生の先輩だ。


「初めまして、アルベルトです。何か御用ですか?」

「お、お初にお目にかかります。上学部、四年のドミニク・シューレと言います。今日は、リューゲン第一王子殿下にお願いがあり、お伺いしました」

「長くなりますか?」

「え? あの……」

 長くなりそうだな。

「これからお昼なので、一緒にどうぞ。ついてきてください」

 取り次いでくれたクラスメイトに礼を言って、先輩を連れて教室から離れていく。


 リザーブしている教室に行くと、もうすでにテオたちは来ていて、シルトとランツェが、しっかりお昼のセッティングをしてくれていた。

「お待たせー」

「やーっと来た、って。またお前か」

 シューレ先輩を連れているのを見たテオが、呆れたような顔をしていた。

「なんだ、テオ知ってたんだ?」

「知ってるっていうかー」

 言いながら傍にいるイジーに視線を向けると、イジーはシューレ先輩を睨みつけている。

「お前、まさか兄上を勧誘する気か」

 ガルガルではなく、唸り状態のわんこのようなイジーに、シューレ先輩は完全に腰が引けてる状態だ。

「おや、まぁ。イジーが本気で怒るなんて珍しい」

 テオとはよく言い合いしてるけど、あれはガチでやってるわけじゃなくって、親しさゆえのじゃれ合いだからね。

「先輩すごいですよ。イジーを怒らせるなんて、才能あります」

「イジーはアルのことになると、いつもこうなるだろう?」

「え? そんなことないでしょう」

 僕の言葉に誰も頷いてはくれなかった。

 なんでだよ!



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