05 狙われているのは誰だろう?
王妹殿下のところは現在娘さんが二人に、去年男子が生まれたそうだ。
そんなわけで、王妹殿下の子供が、恋のライバルになるということはないだろう。
ハイレイシス王国からその手の刺客が出てくるとしたら、ハイレイシス王国の王子殿下たちになるだろうけど……、あそこの男子王族は全員成人していたんじゃないか? ついでに、大公夫妻とは違って婚約者はちゃんといるだろう? その婚約者をほっぽって、オティーリエに粉かけてきたら、あれよ、うちの国王陛下と同じじゃねーか。
何処の国もあんなことはするなと、教訓として言い聞かせてるだろう?
他に考えられる可能性。
ちょーっとあんまり考えたくないんだけど、王妃様の故国、リトス王国の王族。
うちの国王陛下同様やらかしちゃってるんだよなぁ~、あそこの王族。だからたぶん、直系王族はラーヴェ王国に留学してこないはず。
リトス王家は王妃様にとっての加害者で、王妃様は被害者って立ち位置だから、そこでリトス王家の人間がバカやったら、肩身狭いどころの話じゃなくなるぞ。
最悪、国家間戦争勃発する。
だからリトス王家の直系が、このラーヴェ王国にやってきて騒ぎを起こすとは思えない。やるとしたら、王妃様に婚約破棄を突き付けた第二王子のお子さん。
そこは僕、全く調べてないから、あとでシルトとランツェにお願いして調べておいてもらおう。
「そう言えばさ、元のラノベで、巻き込んだ隣国ってどこだったの?」
ずっと聞き忘れていたことをオティーリエに聞くことにした。
「王太子殿下とヒロインの邪魔をするために、隣国巻き込んで戦争起こしたんだよね? その隣国ってどこ?」
僕の話に何のことなのかすぐに思い至ったのか、オティーリエは答える。
「リトス王国です」
「王妃殿下の故国かぁ……」
やっぱりそこかぁ。じゃぁもし何か仕掛けてくるとしたら、リトス王国の王族か、もしくは傍系……、一番怪しいのは、臣籍降下した第二王子のお子さん付近かな?
「ネーベル、ヒルト、ちょっと聞きたいんだけどさ。もしここで、リトス王国の王族がラーヴェ王国で恋愛がらみのやらかしをしたとするじゃない? 戦争になると思う?」
僕の話にネーベルは考え込む。
「微妙なラインだよな」
「恋愛がらみで戦争まで発展するかというと……、ですがこれがラーヴェ王国の王族に対して尊厳を損なう行為をしたとなれば、話は違ってきますね」
ヒルトのその話にネーベルも同意はするかのように頷き、他の懸念事項を言い出す。
「摂政に当たっている貴族は、騒ぐ。でも、肝心の国王陛下はどうだろうな?」
あー、それな!
「対象がイグナーツ様であったなら、猛抗議しそうだけど、アルであったなら、なぁなぁで済ませそうな気がしないか?」
ネーベルの言葉に、ヒルトもオティーリエも否定することができない。
「国王陛下はアルベルト様を軽視している傾向があります。子供の諍いとか、若い頃の過ちは誰にでもあるとか、そっちに持っていくでしょう。ですが、それを王妃殿下が見過ごすとは思えません」
うん、見過ごさないだろうなぁ。王妃様は母上が宿下がりしてから、王宮内での僕の保護者的な立ち位置でいてくれる。
僕に何かがあれば、王妃として抗議してくれるのは間違いないだろう。
ヒルトの話にそこまで国王陛下との関係が拗れているとは気が付いていなかったのか、オティーリエは気まずそうだ。
「その……、申し訳ありません。わたくし、アルベルト様と国王陛下がそこまで拗れているとは思っていませんでした」
「どこまでが女神の影響かはわからないけど、あの人、他人が僕を貶めたり悪意あることをしたりしても、それが悪いこと、酷いこと、って認識しないんだよね」
現在はほぼ没交流状態だから、関わることもないし、どうでもいいんだけど。
「それよりも、両国で問題が起きたと取りあげられる内容は、他国の王族に対しての無礼と傷害、ぐらいなものか。さすがに恋愛沙汰は個人の話になるよね?」
「程度にもよります。例えばアルベルト様かイグナーツ様のどちらかと、そう言ったことが起きて、相手を貶めるようなことをしたとなれば。ですが、それですぐに開戦となるわけではありません」
そうだよね。まずは話し合いだよ。
「もし、女神の影響を受けた人物が行動を起こした場合、標的は誰になるのでしょうか?」
オティーリエが注目するのはそこか。
「考えられるのは、アルベルト様とイグナーツ様。それからテオドーア様」
答えたのはネーベルだった。
「ここまでくると、アルの言っていたセオリー通りの現象にはならないはずだ。アルが標的の場合、アルには婚約者がいないから、アルと恋に落ちるだろう令嬢に近づいてちょっかいを出してくる」
あり得るな。まだそんな相手はいないけど。
「テオドーア様も同様だ。あの方にも婚約者がいないから、テオドーア様の好きになる方に近づく可能性が高い」
「そこにヘッダも入れといて」
僕がそう言うとみんなの視線が向けられる。
「テオ、外見はとか言ってたけど、ちゃっかりヘッダに惚れてるよ。本人がどこまで自覚してるかはわからないけどね」
「あの、アルベルト様、それは……」
複雑そうな顔をするオティーリエは、ヘッダの立場を慮っているからだろう。
「どうするかは、テオ次第だよ。余計な手出しはしないようにね」
「狙われるのは、やはりヘッダ様」
「ヘッダ様だけと言うわけではないと思います。イグナーツ様に近づく相手もまた、女神の影響を受けると思っていいのではないでしょうか?」
ヒルトは鋭いところをついてくる。そして他人事のようになっているオティーリエにも言及した。
「あとオティーリエ様。貴女もですよ」
「え?」
びっくりしているオティーリエに、ヒルトは忠告する。
「舞台から降りたと気を抜いてはいけません。アルベルト様が言うには、女神はオティーリエ様を主役にしたがっていると仰っていたではないですか」
そうそう、女神が狙っているのはオティーリエであることは、間違いないのだ。
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