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【BRSC】バトロイド・ストラグル・コンペティション ~Soldier F1 vs RGフィスト~

作者: 永山


 2~3mサイズの人型兵器、バトルロイド。人型の多目的装甲車と例えられるバトロイドは新たな歩兵として戦場を変容させた。


 次なる戦争に向けて、各陣営は新たなバトロイドを開発する必要に迫られた。そのために、西方連邦の軍事企業達は、仮想空間を用いた試作・試験システムを構築した。


 それが、このBattleRoid Struggle Competition 〈BRSC〉である。このゲームでは、バトルロイドを自由にカスタムできる。更に、その機体を自分で操作して性能を競い合おう。


 それでは、楽しいゲームを。





 フェザー級戦闘試験用リング、金網に囲まれた10m四方のリングで今宵も2機のバトルロイドが対峙していた。


 『赤コーナー Soldier F1』


 赤く塗装されたコーナーに居るバトルロイド、Soldier F1 は初心者用に設定された初期機体の1つだ。右手にアサルトライフル、左には半身を隠せるほど大きい楯、右肩に単装砲を備えた使い勝手の良い射撃型のバトルロイドである。


 『青コーナー、RGフィスト』


 対するバトルロイドは無手、恐らく格闘型の機体だろう。特に目を引くのは、普通の機体より一回り太い前腕部の装甲だ。籠手だろうか、それとも何らかの武器を仕込んでいるのだろうか。

 

 白兵型と射撃型の対戦では特に距離のコントロールが重要になる。白兵型は近づけないと一方的に撃たれて負ける。射撃型は内に入られると銃火器を活かせず、負ける。自分の得意な距離を保ち切れるかがこの戦いを左右する。


 『Ready Fight !! 』


 システムの宣言に合わせて、弾けるように駆け出したのは青コーナー、RGフィスト。速攻で距離を詰めて得意の白兵戦に持ち込むつもりだ。


 フィストはジグザグと左右に揺れながら、右側、つまりF1の盾側に回り込む。F1の盾で射線を切る狙いだ。


 F1は盾の下部にあるストッパーを展開、盾を自立させて身軽になる。それと同時にフィストを追うように弾をばら撒き牽制する。


 格闘型故に強化されている装甲、アサルトライフル程度なら問題無し。カメラの破損だけは防ぐため、頭部を両腕で防御。更に、フィストの前腕に内蔵された機能、Eマグネットガントレットを起動する。


 放たれた弾道の不自然なブレ。綿密に分析すれば、フィストの前腕に吸い寄せられる様にブレている事が分かるだろう。これによって銃撃の威力を削り、突貫!



 ドン !!! と爆音が響き、フィストが吹き飛ばされる。


 ――隠し武器、対戦において一般的なカスタムテクニックの1つだ。リングで向き合っての対人戦である以上、カメラ以外のセンサーの必要性は低い。それ故に、隠し武器からの攻撃は奇襲として成立する。


 今回、猛威を振るったのはSoldier F1 の左腰、大楯で隠れる位置に仕込まれたミサイル。フィストの突撃に合わせ、盾から体を出して発射。これで体勢が崩された。


 この隙に最低でも足を1つ潰せれば、F1は圧倒的な優位に立つ。F1はすかさずアサルトライフルを連射しつつ、落下予測地点に単装砲の照準を合わせる。フィストにこれを回避する手段は―――ある。


 落下する前、空中でフィストの軌道が不自然に変わる。Eマグネットガントレットの磁場が機体を牽引、リングを囲う金網に吸い付くように移動した。


 F1は慌てて単装砲の狙いを修正。金網に着地した一瞬の硬直を狙って発射する。フィストもすぐさま飛び退き直撃を避けようとする。


 結果として、砲弾はフィストの左足に直撃、バランスを崩して着地する。吹き飛んだフィストは、F1の追撃を転がって回避。


 この時点でF1は勝利を確信する。フィストの左足は大破、ミサイルが直撃した右腕もボロボロだ。実際、右腕はもう1度磁場を発生させたらショートしかねない。後はフィストを近寄せなければ判定勝ちは確実だ。


 ここでF1の誤算が2つ。1つ目は格闘型の性質。格闘型には、現実の格闘技を再現するために、人体に極めて近いフレームが採用される。その可動域への失念。それ故に、前転による接近、その予想外の加速に対処が遅れる。


 そして、もう1つの誤解。それは、腕、Eマグネットガントレットの機能は、磁場の発生による防御と移動だけだと誤認した事である。これらの機能は主機能の副産物に過ぎない。


 ロケットパンチ、言わずと知れたロボットの必殺技である。拳、あるいは前腕部を分離し、発射する事で対象を撃破する。当然、これはBRSCにも実装されている。しかし、有用性という観点から見れば評価は低い。腕を切り離すデメリット、推進剤の重量などの欠点に対して、火力はミサイルに劣る。所謂ネタ武装というのが一般的な評価だ。


 ロケットパンチを必殺技たらしめる、それがRGフィストの設計思想である。ロケットでは敵を倒すには速度が足りない。より速く拳を打ち出すための機構、そのために辿り着いた結論が電磁加速。Eマグネットガントレットは籠手にして銃身、その内部で加速された拳は1秒間のチャージの後に発射される。


 F1の前転への反応の遅れ、その隙をRGフィストは見逃さない。左手から放たれた拳、RailGun Fist がF1の胴を貫いた。


 『K.O. Winner RGフィスト!』


 勝敗は決した。勝利者はRGフィスト、しかしこの勝敗は入れ替わり得るものだ。なにせ、この電脳世界ではこれからも無数に繰り返されるのだから。


Soldier F1:初期機体のSoldier F1 をほぼそのまま、一部だけカスタムした機体。初期機体そのままの外見で相手の油断を誘い、大楯で隠した左腰のミサイルラックからの意識的奇襲を狙っている。

武装はアサルトライフル・単装砲・ミサイル・大楯


RGフィスト:両腕に装備したEマグネットガントレット、それによる電磁加速を用いた腕部の射出を切り札とする格闘型のバトルロイド。腕という大口径から放たれるレールガンは必殺技と言うに相応しい破壊力を持つ。ただし、これを運用するために重量の多くがバッテリーに占められている。結果として、シンプルな格闘型と比較すると装甲やモーターのパワーは劣る。

武装はEマグネットガントレットのみ。


フェザー級:BRSCにおける、最軽量の重量区分。200kg以下の機体はここに区分される。

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