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第七話 (1)

 トウケイという新しい街とその周りの森の跡の荒地を過ぎてしばらく行くと良さそうな森があった。近くに村もあった。森の中に入ると気持ちが良かった。あたしはしばらくこの森で過ごすことにした。


 森の中を歩いたがこの森には魔物はいなかった。美味しい木の実もあった。泉もいくつかあった。木を切った跡もあったがそこには若木が植えられていた。しばらくすると元のようになるだろう。


 子供が来ないかな。遊びたいよ。元気な子供の顔が見たいよ。この森なら美味しい木の実や山菜、果物のなるところを案内できる。こないかな。子供。


 暖かい日。子供が遊びに来た。あれなんだか懐かしい感じがする女の子がいる。なんだろう。そっと何日か見守った。


 何日かしてその子と目があった。

 「お狐さん」

 あたしが遊んだ子供の末だ。目元と声がそっくりだ。

 あたしだよ。

 あたしは嬉しくなって出ていった。


 「お狐さん。あそぼ」

 うん。たくさんあそぼ。

 「お母さんのおばあちゃんが子供の時、お狐さんと楽しく遊んだってお母さんが言ってたよ。亡くなるまでいつも言ってたって」


 あたしは嬉しい。あたしと遊んだ子があたしの事をずっと覚えてくれていた。あたしも覚えているよ。この子の目元と声からあの子だよ。ちゃんと心の中の宝箱に入っているよう。


 あたしは子供たちとたくさん遊んだ。木の実も山菜も一緒に取りに行った。何年も一緒に遊んだ。女の子がいっぱいお話をしてくれた。子供たちの村にも行った。みんな歓迎してくれた。畑仕事も手伝った。相変わらず芋掘りなどだけど。


 何人かおじいさん、おばあちゃんが亡くなっていった。あたしは悲しんでいる子供のそばに寄り添った。あたしのできることはそれくらい。

 森に遊びに来る子も顔ぶれが変わっていく。


 あたしに初めて声をかけてくれた女の子もお嫁に行くと言った。トウケイの街の中だって言っていた。あたしは街には行けない。ここはトウケイに近いからしばらくここにいることにした。


 女の子がお嫁に行く日、トウケイの近くまで一緒に行った。

 あれ、森跡に木が植えてあって、そこからトウケイの街中に広い幅で木が植えてあった。5年かなあ、10年かなあ。あたしが歩ける森になっているだろう。そしたらこの子に会いに来られる。あたしは嬉しくなって女の子のいく先をじっとみていた。ずっと先の方の木が植えられているそばの家に入って行った。あたしを見て手を振ってくれた。あたしもアオンと返事をした。元気でいるんだよ。幸せになるんだよ。あたしは森に帰った。


 それから何年かいつものように子供たちと遊んだ。

 「お狐さん」

 女の子だ。赤ちゃんをおぶっている。赤ちゃんを見せに来てくれた。あたしは嬉しい。丈夫に育つんだよ。少し話して元のうちに入って行った。


 次の日、帰ると言って来たのであたしは送っていくことにした。トウケイにつくまでいっぱいお話をしてくれた。

 あれ、トウケイの街中に伸びて行く森の道の木がもう屋根ぐらいに大きくなっていた。もう少しで森になりそうだ。大きくなるのが早い。


 女の子がまたねと言って森の道と家の境にある道を歩って行って、家に入る時手を振ってくれた。あたしもアオンって返事した。あたしは嬉しい。あと何年かで女の子の家の前まで森を辿っていける。


 嬉しくて飛び跳ねながら森に帰った。途中お狐様、何かいいことあったかいと何人かに声をかけられた。

 うん、て返事をした。


 それから何年かいつものように子供たちと遊んだ。

 「お狐さん」

 女の子だ。赤ちゃんをおぶっている。女の子の隣にはちっちゃい女の子がいた。この前来てくれた時赤ちゃんだった子だ。ちっちゃい女の子はお狐さん?と女の子に聞いた。

 「そうだよ。あたしの友達のお狐さんだよ」


 あたしは嬉しい。友達だ。ちっちゃい女の子とも友達になりたい。

 赤ちゃんもちっちゃい女の子も二人とも丈夫に育つんだよ。あたしは祈った。それから少し女の子は話をしてくれて元のうちに入って行った。あたしは嬉しくて一緒におうちの前まで送った。明日帰ると言って女の子はうちの中に入って行った。


 次の日、お狐さん、と女の子がちっちゃい女の子の手を引きながら来てくれた。あたしは嬉しい。女の子と、おぶった赤ちゃん、ちっちゃい女の子でお話しながらトウケイまで歩いて行った。


 トウケイの街中に伸びている森の道は、立派な森になっていた。

 あたしは嬉しい。この森を辿って女の子の家の前まで行ける。女の子と森の中をお話しながら歩って女の子のうちの前まで来た。

 「お狐さん。またね」

 ちっちゃい女の子が言ってくれた。

 うん。こんど遊ぼうね。

 あたしは言った。

 女の子がうちの中に入って行った。ちっちゃい女の子が手を振ってくれた。あたしは嬉しい。

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