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第三十二話

 六月十七日(土)12:00


『お兄ちゃん!』

「西園寺さん!」


 通り魔事件の翌日、俺を夢から現実に戻したのは妹(?)とその妹――ややこしいな。とりあえず美優と沙奈絵さんの明るい声だった。


「お邪魔します。具合どうですか?」


 沙奈絵さんが心配そうに容態を聞いてきてくれた。

 明日葉や美優とはまた違った、包み込むような優しさが嬉しい。


「どうも沙奈絵さん。えっと、そんなに傷が深くなかったんで明日退院ですよ」


 俺が緊急入院したこともあり、美優は昨日自分の家に帰った。

 昨日は久しぶりの姉妹水入らずの会話が楽しめたと思う。そこになぜか明日葉も混ざるのは非常に疑問だが、そこは突っ込まないようにしよう。

 昨日はガールズトークで盛り上がったことだろう。


「そうですか! 良かったぁ。工場で倒れた時は、死んじゃったかと思いましたよ!」

『そうだよお兄ちゃん! すっごい心配したんだからね!』

『私たちにこんなに心配かけるなんて、隼人は悪い弟だね! 昨日の夜もその話しかしてなかったんだから!』


 訂正。凄く盛り上がったようだ。


「助かったんだからいいじゃないか! それよりも沙奈絵さん、あれからずっと美優の事、見れるんですね?」

「えぇ、このネックレスのおかげです! 本当なら明日葉さん? とも話してみたいですけど」


 そういえば沙奈絵さんは美優のことは見ることが出来ても、明日葉とは話すことも見ることも出来ないよな。

 昨日の夜に話が盛り上がったってことは、美優が通訳したんだろうな。


『このネックレスの効果はあたしだけ認識出来るみたいで、お姉ちゃんのことは見れないらしいの』

『不便だよねぇ……私も話したいなぁ』

「明日葉も話してみたいって言ってますよ」


 明日葉の言葉を今度は俺が通訳する。

 英語とかで声が聞こえるわけじゃないから、本当に残念そうだ。


「そうですね……」


 沙奈絵さんも出来れば直接会話してみたいようだ。

 せっかく仲良くなったのだから、それが自然な流れだろうな。

 明日葉と話す方法か……。


「ん? あれ?」

『どうしたの隼人』

「いや、ちょっとな……」


 眉間に皺を寄せ、腕を組んで考える。

 明日葉と話す方法? 何か凄く何か引っ掛かる。この感じあれ? 何だ?


『お兄ちゃん、顔が怖いよ』

「なんか閃きそうなんだ……」


 あと少し、何かのピースがはまれば解決しそうな気がするんだが、その肝心のピースが分からない。


「閃きそう? 何がですか?」


 沙奈絵さんが首を傾げて俺に問いかけてくる。


「良いアイディアが……」

『良いアイディア?』


 美優の口から疑問の声が漏れる。


「えっと、とりあえずちょっとお手洗いに行ってきますね!」


 そう言って沙奈絵さんが席を立つ。


「お手洗い……トイレ……そうだ! そうだよ! 何で気が付かなかったんだよ!」


 ベッドから起き上がり、三人に向かって不敵な笑みを浮かべる。

 沙奈絵さんの言葉でパズルのラストピースがはまった。

 忘れていたが明日葉は一番有名な学校霊だ。


『隼人?』

『お兄ちゃん?』

「西園寺さん?」


 三人が俺の顔を何とも言えない不思議な表情で覗き込む。


「沙奈絵さん! 明日葉を見る手段がありますよ!」

「へ?」


 六月十七日(土)12:30


 木製の扉を叩く乾いた音が三回、静かな病棟に鳴り響く。


「花子さん。遊びましょ!」


 続けて紡がれる言葉。

 決して交わるはずのない現世と幽世を繋げる魔法の言葉。

 生命の理に反する、本来なら呪われた恐怖の言葉が、今は希望の言葉となって紡がれる。

 一人の少女によって。


『はぁーい! 今開けまーす!』


 返される言葉もまた本来なら恐怖の声だが、今は歓喜の感情を存分に含んで紡がれた。


「あ! 明日葉さんですか? 初めまして! ほ、本当に見れた!」

『見えるの? 私の姿が?』

「はい! 西園寺さんが言ってた通りです!」


 呪われた言葉によって、隔たれた二つの世界が重なり合い、二人の少女は驚きの表情を浮かべて互いに喜びの言葉を交わした。


 廊下を走る足音が聞こえる。沙奈絵さんの足音だな。


『隼人ぉ!』

「西園寺さん!」


 二人が笑顔で俺の部屋に飛び込んできた。


 六月十七日(土)13:00


 病室には二人同時に入ってきた。二人とも笑顔で俺の元に近づいてくる。


「お? その様子だと、万事うまくいったようだな?」

『うん! 隼人の言った通りだったよ!』

「これでお姉ちゃんも明日葉さんも話せますね!」

「まぁあくまで俺たちだけ……ですけどね」


 考えてみれば美優のネックレスで霊力が上がったのに、明日葉と会話出来ないのは不思議な話だ。

 霊力が上がった沙奈絵さんが他の霊を見ることが出来ない。それはつまり、あのネックレスは霊力を上げるものではなく、特定の幽霊との波長を同期させるものではないか。だから他の霊を認識できないのではないか、ということだ。

 全て仮定の話だったがどうやらその通りだったみたいだな。


『それでも良いじゃない! こうして四人が会うこと出来たんだから!』

「そうだな! 四人と言えるかどうかは分からんけどな」


 正確に表現するなら二人と二体なんだが、姿と形? は人間だから四人と表現するのが正しいかもしれない。

 もっともその存在は俺たち二人にしか見えないんだけどな。


「これからはずっとお姉ちゃんと一緒だね!」

『うん! そうだね!』


 死という最悪の別れを経験した姉妹二人が、もう一度再開することが出来た。

 すごく感動的な場面だ。病室なのだが空気が澄んで景色も透き通って見える。

 美優と抱き合っている沙奈絵さんの姿も透き通って……透き通って?


「ん? おい、美優!」


 本来なら美優は幽霊だから透き通手見えるのが自然かもしれない。

 だが今まで俺の目には、はっきりと美優の姿が見えていたはずだ。今みたいに透けて見える事は無かったのだが。

 そう思いながら眉間にしわを寄せて美優に向けて手を差し出す。


『お兄ちゃん? あ!』


 差し出された手を取ろうとしてから美優も気付いたようだ。


「お姉ちゃん……薄くなってる」


 握っていた手を沙奈絵さんが見て呟く。その目は大きく見開かれていた。


『……やっぱり、限界かな?』


 いつもの明るい表情から想像不可能な暗い表情を作って美優が言う。

 一体何が限界だというのか?


「美優? おい、明日葉! どういうことだ?」

『もしかしたらって思ってたけどやっぱり。あのね、美優ちゃんね……成仏するの』

「成仏?」


 俺が知っている成仏の事を言っているなら、現世で命を落とした人が転生するための行為。

 それはつまり、現世との別れを意味する。


『あはは……出来ればもう少し、お兄ちゃんとお姉ちゃんと……そして沙奈絵ちゃんと一緒にいたかったなぁ』


 無理に笑顔を作って言うがその声は涙で濡れ、最後の言葉は嗚咽交じりに呟かれていた。


「そんな、お姉ちゃん消えちゃうの?」


 沙奈絵さんの瞳もまた涙で濡れていた。


『違うよ。私は成仏して生まれ変わるの。そしたらまた沙奈絵ちゃんと会えるわ』

「でも、せっかく……やっと会えたのに」


 手で顔を覆い嗚咽で滲んだ言葉が病室に響く。


『沙奈絵ちゃん……』


 呟かれた明日葉の声もまた悲しみを孕んでいる。

 想像していたとはいえ、明日葉自身も現実を受け入れられないのだろう。


『沙奈絵ちゃん、ごめんね。でもこれは私たち幽霊の運命なの。住む世界が違うのよ』


 冷静に言い聞かせるように、美優の口から残酷な言葉が紡がれる。

 その言葉は自分に言い聞かせる意味もあったのかもしれない。


「住む……世界。西園寺さん!」


 沙奈絵さんが俺を振り返る。

 その涙で濡れた瞳は、俺に何とかして欲しいと訴えている。こんな時、デキる男はなんと声を掛けるのだろう。

 いや、今おかれている俺たちの状況が特殊過ぎる。たとえ百戦錬磨のデキる男でも、正解を導き出すことは出来ないだろう。


「……沙奈絵さん、残酷かもしれないけど、こればっかりはどうすることも……」


 だから俺は事実を言葉にする。

 今の俺にはどうすることも出来ない。いや、仮に俺に霊能力があって何か出来るとしても、それは生命の理に反すること。

 何か出来ないではなく、何かしてはいけないのだ。


「嫌! そんなの嫌! そしたら私もお姉ちゃんと一緒の所に行く!」


 そう叫ぶと沙奈絵さんは病室を勢いよく飛び出した。

 嫌な予感しかしない。


『沙奈絵ちゃん!』

「美優、追うんだ! 明日葉、松葉杖を取ってくれ!」


 病室を飛び出す間際に沙奈絵さんは、「お姉ちゃんと一緒のところに行く」と言った。

 美優と一緒の所、つまりそれは……。

 今のこの状況でそれが出来る場所は限られる。間違いなく屋上だ。

 感動の場面から最悪の場面に急展開だ。しかも今回は本当に人の命が掛かってる。なんとしても止めないと。

 松葉杖を突きながら全力で沙奈絵さんを追う。屋上への階段は一つしかない。間に合ってくれ。


『沙奈絵ちゃん!』


 屋上へと続く扉の向こうから美優の声が聞こえた。

 まだ間に合う。ドアを壊すんじゃないか? と言えるほど思いっきり力強く扉を開ける。


「沙奈絵さん!」


 目に飛び込んできた光景に思わず声を上げる。

 屋上の柵を乗り越え、今まさに飛び降りるまで秒読みという状態だった。

 だがギリギリ間に合った。


「来ないで! せっかくお姉ちゃんと一緒になれたのに、またお別れなんて……そんなのないよ! そしたら私もお姉ちゃんのところに行く!」


 しかし状況はまだ沙奈絵さんが飛び降りる前という最悪に近い。

 そう「まだ」という状態なだけで、いつ飛び降りてもおかしくない予断を許さない状況だ。

 どうすれば止められる? テレビではよく血縁者や懇意の人が説得したりするもんだが、残念なことに俺と沙奈絵さんは知り合ってからまだ一日だ。

 くそ、どうすれば良い?


『……沙奈絵ちゃん、よく聞いて』


 何も出来ずにいた俺たちの横で、美優が決意したように前に出て口を開く。


「でも!」

『良いから!』


 初めて美優が声を荒げ、何かを言おうとした沙奈絵さんの言葉を奪った。

 こんな美優は初めて見る。


「……うん」

『さっきも言ったけど、私たち幽霊と人間は住む世界が違うの。今はこうして現世に残ることが出来てるけど、でもそれはほんの一瞬。未練がなくなった今、成仏するのが幽霊として当然のことなの』


 そして優しく、諭すように沙奈絵さんに語り掛ける。


「……うん」

『あたしが成仏するのにそんな顔しないで! また会えるから!』


 本当なら自分も辛いはずなのに、それでも美優は笑顔でそう話した。


「……うん」

『それにね、本当はダメらしいんだけど、私が転生する先って実はもう決まってるの。それはね……』


 そう言ってから沙奈絵さんの耳元に口を近づけて何かを伝えた。

 何だろう? 嫌な予感がするのは俺だけか?


「それじゃあ!」


 美優の言葉を聞いた沙奈絵さんが明るい声を上げ、笑顔になる。


『さ、戻りましょ! もうそんなに時間がないから、最後に四人で何か思い出に残ることしたいな』

「うん! そうだね!」


 どうやら美優の説得が上手くいったらしいな。

 この二日間でドッと疲れた。あぁ、平和な日常が懐かしい。

 そんなことを思いながら病室に戻ってベッドに横たわる。

 あれ? 屋上で美優の口から何か気になることを聞いた気がするな。確か、「四人で思い出に残ることをしたい」って言ったよな。

 思い出に残る事って何だろう? 美優に何か考えがあるのかな?

 そんなことを思っていた俺だったが、


『……っていうわけでお兄ちゃん! 何か無いかな?』


 病室に戻るやいなや、美優が俺の腕を掴みながら物をねだる子供の目で見つめてきた。

 何も考えていないのはもう美優の標準装備だな。


「はぁ……といってもなぁ、俺はこんな状態だし」

『隼人ぉ、私からもお願~い』

「西園寺さ~ん」


 明日葉や美優だけでなく、沙奈絵さんまで甘えた声で俺に詰め寄ってきた。

 昨晩の女子会で何があったんだ? 二人の性格は知ってるが、沙奈絵さんはこんな性格じゃなかったはずだ。

 誰だおねだりの方法を教えたやつは? 明日葉と美優の両方だな。良くやった。いやいや違う違う。そうじゃない。


「……だぁ! もうわかった! わかったから! とりあえず離れて!」


 出来るならずっとこの状況を味わっていたかった。俺だって男だからね。

 でもこんな状況じゃ考えつくものも思い浮かばない。とりあえず三人を下がらせて距離を取り、腕を組んで考える。

 久々の無理難題だ。生きている人間と幽霊で作れる思い出……一つしかないよな。


「そしたらベタだけど、写真なんてどうだ?」

『え?』

『でも』

「そんな事出来るんですか?」


 俺の提案を聞いた三人が口々に疑問の声を上げる。


「沙奈絵さんが知らないのはともかく、お前らは……。まったく、心霊写真って何のためにあるんだよ? 特に明日葉とは一度撮ったことあるだろ!」

『あ! そういえば!』


 そうして四人で作る思い出は心霊写真という名の記念撮影に決まった。


「それじゃあ撮りますね!」


 俺の提案を受け入れてくれた三人は、ベッドに座る俺を中心にして写真を撮ることにしたらしい。

 まぁ俺は動けないから良いんだけどさ。


『ほらぁ隼人、笑って!』


 疲れた表情をしていた俺に明日葉が不満げな声を上げる。


「この状態で笑えと言う方がおかしいだろ」

『もぅお兄ちゃん!』

「いや、心霊写真を撮ろうってのに、笑うのがおかしいだろ?」

「西園寺さん!」

「はぁ……分かったよ!笑えば良いんだろ?」


 美優だけでなく沙奈絵さんにまで言われてしまったら従わざるを得ない。

 沙奈絵さんってこんなキャラだったっけ?


「あ! そんな感じです!」


 スマホを固定して画角を固定し、左に右にと沙奈絵さんが指示を出す。

 俺たちは肉眼で明日葉と美優を視認できるが、スマホのカメラでは撮影するまで分からない。

 そう思うとやっぱり不便だよな。


「それじゃセルフタイマーを十秒でセットしますね」

『あ、ちょっと待って。美優ちゃん、沙奈絵ちゃん! ちょっと来て!』

『お姉ちゃん?』

「明日葉さん?」


 もうあとは撮影するだけという時に、明日葉が呼び止めて二人を手招きをする。

 幽霊の手招き……うん、怖い。じゃなくて何を企んでるんだ?

 あの明日葉が二人に何やら耳打ちしている。

 嫌な予感しかしない。


『あ! それ良いかも!』

『二人とも隼人への気持ちは変わらないでしょ?』

「ちょっと恥ずかしいですけど、やりましょう!」


 明日葉の提案に美優がいたずらに笑い、沙奈絵さんが頬を赤く染める。

 やはり何か企んでいるな。


「おい! 果てしなく嫌な予感しかしないんだが」

「じゃあタイマー押しますね!」


 俺の苦情を沙奈絵さんが華麗にスルーしてスマホのタイマーボタンをタップした。


「無視かよ!」

『行くよ隼人! はい、チーズ!』


 この時の写真を他の人が見たらどう思うだろう? 幽霊二人と中学生の少女から、両頬と額の三箇所にキスされてる男子高校生の心霊写真が出来上がったからだ。


『お兄ちゃん、お姉ちゃん。あたし、幸せだったよ! 沙奈絵ちゃん。また会おうね!』


 その言葉を最後に美優は光の粒子となって成仏していった。その光の粒が、美優の涙に見えた気がしたのは、俺だけじゃないだろう。


 六月十八日(日)13:00


「……というわけで、 紹介します! お姉ちゃんの転生先、私の従姉妹(いとこ)の美優紀ちゃんです!」


 翌日、沙奈絵さんの口から衝撃的な言葉が飛び出した。


「は? 転生先って……従姉妹(いとこ)だったの?」


 そういえば先生の妹さんの出産が近いって言ってたっけ。

 しかしこんな身近に転生なんて出来るもんなのか?


「そうですよ! 言いませんでしたっけ?」

「一切聞いてないですよ! あぁもう、あの時の感動は何だったんですか?」


 あの時の感動とは、美優が魂が光の粒子となって空に消えていった、寂しく切ないあの感情だ。


『まぁまぁ。さすがに記憶の殆どはなくなってると思うけど、もしかしたら隼人の事、少しは覚えてるかもしれないよ!』

「そうですよ! だから、たまにで良いから会いに来てあげてくださいね! 美優紀ちゃんにも、私にも!」


 私にもっていうのは、沙奈絵さんに会いに来るってことか? なんでそんな言い方したんだろうか?

 と思って明日葉に視線を移すと、沙奈絵さんを物凄い形相で睨んでいた。呪いでも掛けてるんじゃないのか、と思うぐらいだ。

 絶対に沙奈絵さんは狙って爆弾を投下したよな。この場所にずっと居続けたら爆風に晒されて大火傷を負う事になりそうだ。

 ここは早めに撤退するべし。


「はぁ……分かりましたよ。それじゃ、また」


 二次被害が大きくなる前に病室を出て、病院の中庭を明日葉と二人で散歩しながら会話をする。もちろんスマホを耳に当ててだ。

 のどかな中庭には紫陽花が咲いていた。

 梅雨時なのに晴天なのは運が良いと言えるな。


『美優紀ちゃんかぁ……美優ちゃんに似て可愛いくて明るい子に育つと良いね!』

「そうだな」


 病院の中庭を抜けて家への道を歩く。

 日曜日の午後の昼下がり。

 美優の一件があったからが、妙に平和に感じる。

 昨日と今日で確実に十歳は老けたよな。


『……ねぇ隼人』


 しばらく無言で歩いていたが、不意に明日葉が寂し気に話しかけてきた。


「あ? どうした?」


 あまりにも不意を突いた呼びかけだったので、スマホを耳に当てるのを忘れ、視線も明日葉へと移してしまった。

 周囲には誰も居なかったが、俺も油断していたな。


『あのね……私、成仏しようと思うの』

「……え?」


 明日葉の言葉で時が凍った。

ここまでお読みいただきましてありがとうございます。

次話から物語は最終章に入ります。

トイレの花子さんと隼人、文字通り住む世界が違う二人が最後どんな結末を迎えるのか。

感想などいただけたら励みになりますのでぜひ!

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