台本のあるNTR
僕は、髪型を変えることになった。
『この方が寝取られ感があるでしょ?』
とアリスが言うので、ゲームの主役のように金色に染めてツンツンの尖ったヘアスタイルに変更だ。
僕が通学路を歩いていると、
「わわっ、ジョーくん、イメチェン!?」
ネジちゃんがそう声をかける。
「うん」
「いいね! ジョーくん、もっともっとイケイケの性格になってもいいんだよ」
ネジちゃんは、僕の記憶喪失前を知っているのだろうか。
「ネジちゃん、僕ってどういう感じだったの?」
僕は聞いてみる。
「ネジちゃんは知ってるんでしょ?」
「うーん、そうだね。というか、大体の子はみんな知ってる・・・ジョーくんっていえば、かなりの有名人だから」
「・・・僕も分かるよ、僕にはネジちゃんくらいしか友達がいないんだ・・・」
というより、ネジとアリス以外はなんとなく僕を避けている・・・
「気にしないでさ、気楽にやろうよ」
ネジはそう言う。
「アリスさんと上手くいってるの?」
「うーん、上手くはいってないかな・・・」
こんな『主従関係』じゃ、恋人として上手く行ってるとは言えないよ。
「上手くいくといいね!」
ネジはそう言う。
僕が鈴木からアリスを寝取ろうとしているのを知らないからだ。
・・・・
・・・・・・
「わわっ、譲司くん?」
「どーしたの・・・?」
「まさか、アリスさんのために?」
みんなが、僕の髪型に注目しているようだ。
椅子に座るが、なんとなく見られている感覚だ。
「ええ、鈴木くん。じゃあ、次の日曜日に・・・」
アリスはそう言いながら、教室に入ってくる。
鈴木はその横で、デートの約束を取り付けた笑顔で入ってくる。
僕は意を決して、立ち上がった。
(ネジちゃんも見ているけど・・・)
(けど、僕もやらないと・・・記憶が戻らない・・・)
「よう、アリスう。デートの約束かよお。そんなタマ無し野郎とよお」と言いながらアリスに声をかけた。
「ああっ、譲司くん!? な、なんだかワイルドになってステキだわっ! ああっ、腕を掴まれてエ!」a
「やだ・・・鈴木くんの前だけど、なんだか悪くないわあ」
アリスはちらりと鈴木を見る。
「アリス・・・さん、僕は一体・・・そして譲司くん、君は何を考えているんだ・・・?」
鈴木は屈辱に顔を歪めている。
「おいおい、まーだ付き合ってもねえのに、自由恋愛だろオ? サッカー部のエース君よお」
と僕は言う。
教室中は、
「ええ? じゃあ、本当に付き合ってないの?!」
「じゃあ、譲司くんの略奪NTRってこと・・・?」
「あの鈴木くんが、譲司君にNTRに遭うなんて、じゃあ残った鈴木くんを私が・・・」
と、ざわめいている。
(くう・・・こんなのを知ったネジちゃんは・・・)
と僕は後ろのネジを振り返るが、
ネジは何故か、ニンマリと微笑している。
(え・・・? ネジちゃんも、応援してくれている・・・?)
アリスは、わざと僕にしなだれかかりながら、
「ああっ譲司くんの、この強引な感じ・・・」
アリスは僕の耳元で息を荒げ、
「なんだか・・・ここまで、されると悪くないかもって感じ」
僕はさらに嗜虐的に、
「アリスう、俺とお前との深い関係だもんなあ。さて、今日も”例の場所”で、タップリと遊ぼうゼエ?」
「あああっ、止めてええ!」
鈴木は、僕に掴みかかってきて、
「いい加減にしろ、このクソヤロー!」
と怒鳴った。
無理もない。
大人しい鈴木だが、眼の前で”彼女になるはずだったアリス”がここまでの目に遭わされているのだ。
「んだあ? ボーリョクかあ? んなことしたら、てめえのサッカー部はオシマイだぜえ?」
にやりと僕は笑う。
「ク・・・サイテー野郎め・・・!」
「ああ、サイテーで上等だあ。けど・・・案外、清純派の美少女ほど、俺みてえなクズの方がいいもんだよなあ。なあ、アリスう」
すると、アリスは
「ううん、生真面目な鈴木くんもいいけどオ、こうしてワイルドな譲司くんからここまで迫られると・・・やっぱり女としてちょっと嬉しいかなあって・・・」
鈴木は、頭を殴られたように「アリス・・・さん」と呻いていた。
(ううん、少し罪悪感・・・だけど・・・)
僕はもう、はっきりと感じていた。
(楽しい・・・正直、NTRは楽しい)
(というか、これが僕の本職か? っていうくらいに、なんだかシックリきている・・・)
僕は、そもそもクズヤローだったのか・・・?
もうプロ内定が出ている程のエース、鈴木とその”彼女候補”のアリス。
それが、こうしてクラス中の眼の前で、略奪されようとしているのだ。
屈辱と言う言葉では済まない程だろう・・・
アリスは僕の耳元で、
「上手くなってきたじゃない、さあ、今夜も体育倉庫で・・・ね?」
と囁いた。