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サザリィの勤め

「……あのビッチなら大丈夫とはとても思えん……」

 エウロバは憂鬱そうな表情を浮かべていた。この身体になってサザリィが勤めを果たせるかと不安らしい。


「……サザリィは色々私に積極的でいてくれますし……」

 正直マズい。

 この身体になってから僅か1日で性欲が大変なことになっている。


 目の前の母のようなエウロバにすら発情しかねない。


 エウロバ。

 幼い頃の記憶からも、彼女は本当に母のように私に接してくれた。


 実母は望まない父との性交が本当に嫌だったらしく、父の面影がある私に対してすれ違う度に「……気持ち悪い」と吐き捨てて過ぎ去る。


 そんな光景を見て怒鳴るのがエウロバだった。


「サノバビッチ!!! てめえ!!! お前が腹痛めて産んだ子供だぞ!!! 放置も許せないが!!! わざわざディスってんじゃねーぞ!!!」


 そして幼い頃の私を抱きかかえ

「あんなビッチの言うことは気にするな。お前は皆から望まれて産まれた子だからな」

 と慰めてくれていた。


 彼女も親から放置されて育ったらしい。そういう境遇が私に対する共感になったのだと思う。


 リグルドの記憶を引き継いだ私から見てもエウロバは母だ。


 見た目美人だが、母。

 発情はマズすぎる。


「エウロバ。幸い今日は決裁する書類も、面談する相手も少ない。早めにサザリィと会って準備します」



 早めに寝室に戻ろうとすると侍女達が申し訳無さそうにしていた。


「昨日はラウレス様を送り出せずもうしわけありませんでした」

「我々の誇りにかけてもラウレス様にはしっかりお勤めして頂きますので、どうか次はお呼びされてください」


 なんかラウレスが慕われている。

「もちろんだ。だが今日はサザリィの日。サザリィを呼べ」



 そんなサザリィなのだが、廊下から叫び声が聞こえる。


『この!!! 田舎もんがぁぁ!!! よりによって陛下へのお付きの日に!!! この為に用意した衣装を汚すな!!! バカ!!!』

 サザリィの絶叫と


『田舎もので申し訳ありません』

 なんか感情を全く感じない、侍女達の棒読みの謝罪。


 多分だがとびきりのエロ衣装で乗り込もうとしたところ、その衣装を汚されたとキレてるんだと思う。


「……侍女達のサザリィに対する反発は、エウロバに対する反発もあるんだろうな……」

 サザリィはこの帝国の首都、神都を「田舎」と馬鹿にしている。


 現に神都のある南方は文化がそれほどでもない。


 エウロバのいるアラニアは北方。こちらは文化が発達していてオシャレ。


 エウロバは帝国を一つにすると公言している。

 公国の連合体である帝国の体制は限界を既に過ぎている。


 公国制度を無くし、帝国の名の元一つになろうと。


 そうなったときに、首都はこの南方の神都でいいのか?

 となれば当然そうはならない。


 大陸中央部にある大都市『識都』か、アラニアのいる北方の都市の方が経済的にも恵まれ、人の交流も多い。


 だからこそ、この神都にいて帝国に仕える召使い達はエウロバに対する反発がある。


 それに加えて、クソ生意気なサザリィである。嫌がらせの一つもしたいのは分かるが


「サザリィ、侍女達のミスは仕方ない。そのまま来るように」



「へいか♡ 本当にお待たせしました。 本当にあの使えない連中は困ります。だから田舎って嫌いなんですよねー♡」

 ニコニコしながら侍女達を罵倒。


 ラウレスの時には侍女達もいて励ましていたが、サザリィには誰も付いていない。


 孤立するのも困るのだが。


「サザリィ、奉仕してくれ」

 とりあえず興奮しているので。これを鎮めてから話をしよう。


(……リグルドの時も性欲は強かったな……)

 前の記憶。

 思い返せばよく手を出さなかったものだ。


 リグルドは神教の幹部。女性信徒の相談にも良くのっていた。


 なにしろ向こうは「リグルド様が間違いを起こすわけがない」と平然と近寄ったり触れたりしてくるのだ。


 ああ、思い出すと本当によく耐えていた。自分を褒めたい。


『リグルドさま♪ お元気ですか♪』

 ハユリとかがその筆頭で、大きな胸を押し付けながら抱きついたりしてきたのだ。


 また相談事の時にわざわざ密着して、耳元で囁く女もいた。


 その鬱憤のせいか、早くサザリィに襲いかかりたくなっている。


 ずっと我慢していた性交。

 精通を迎えた直後は身体が不完全で、乗り気でもなかった。


 だがこの身体なら……


「……っ!!!??? え!? こんなに大きいの!?」

 男根を引っ張り出すなり驚くサザリィ。


「……今はもう勃起しているからな」

 ラウレスも驚いていたが、身体付きの割には大きいのかもしれない。


 なにしろリグルドの時と同じぐらいの大きさなのだ。

 リグルドの時は巨体と言っても良いぐらいに体格は良かった。


 今の身体はリグルドよりも細く小さい。

 だが男根の大きさは変わらない。


「ああ。興奮しているからな……いきなり挿入など言わない。まずは鎮めてくれ」

 もうお預けにされるのも嫌になる。


「……は、はい! そうですよね! 陛下。一生懸命頑張りますので、気持ちよくなってくださいね♡」


 サザリィはそう微笑むと、手を差し出してくれる。


 ああ、まずは手でしてもらうのもいい。そう思ったが

「……!? い! いたい!」

「ご、ごめんなさい!」


 思いっきり爪が食い込んだのだ。

 ああ、ダメか。今日も我慢しないと……


『てめえ! ビッチ!!! 手コキも出来ねえなら舌でやれ!!! 舌でチロチロ舐めるぐらいならできんだろ!!!』


 扉から怒号。

 エウロバの声。


『エウロバ様!!! 勝手に陛下の寝室エリアに入ってはいけません!!!』

『すぐに出て行ってください!』


 侍女達が廊下でエウロバを止めているらしいが


『やかましい! 陛下の健やかな性行為にこそ集中しろ! サザリィ! 下手に咥えなくていい! 舌で包み込むように舐めろ!!!』


 エウロバの指示を聞きながら、サザリィは奉仕を始めた。



「エウロバ。もうしないとは思うのですが、今後は控えてください」

「……すまぬ。反省している」


 昨日の夜。

 サザリィは絶対やらかすと確信していたエウロバは侍女達の制止を振り切り、私の寝室エリアに来て叫んでいた。


 本来これは懲罰ものの行為。


 しかもサザリィが無事に奉仕できたと知った途端扉を開け


「ビッチ!!! よくやった!!! 最高だぞ!!!!」

 とサザリィを抱きしめて騒いだりしていたのだ。


 皇帝の寝室に無断で入り込むなど、本来は極刑。


 しかしだ

「サザリィの人望は完全にありません。侍女達も彼女に教育しません。寝室エリアに入り込むのは止めて頂きたいですが、教育目的でサザリィとお会いするのは構いません」


「ああ、そうさせてもらう。ラウレスに協力的らしいからな、あいつら」



 ラウレスに協力的な侍女達。

「……少し疑わなければならない部分もある」

 ラウレスだけ侍女達に優しいなら分かるが、ラウレスは殴る蹴るの暴行をしていた。


 それなのに懸命に侍女達は支えている。


(聖女がなにかしているのか?)

 ラウレスは聖女が選んで送り込んできた。


 彼女の能力は基本的になんでも出来るに近い。

 買収ならともかく洗脳されている可能性すらある。


「……陰謀は苦手だな。ロクなことになった試しがない。素直に聞くか」



『やってません』

 現聖女のミルティアとの会談。

 会談と言っても、遠距離会話装置でだが。


『やってたら操ってやらせてましたね。タチアナさんから聞いて呆れました。私はこの件では完全にノータッチです』


「……そうですか。わざわざ嘘をつくとも思えません。失礼しました」


『しっかし、揃いも揃ってマトモに出来ない妾とか面白いですねー。ラウレスも訓練してるのにあの体たらくは、むしろ私が疑うレベルですよ。そっちの侍女達に嘘の訓練教え込まれているとか』


 そういう考えもあるな。

 代々の皇帝で「側室の性戯が下手くそで性交が出来ない」とは聞いたことがない。


 子が出来なくて困っていた先帝も、性行為には困っていたとは聞いてはいない。


「急にこの姿になって戸惑っているのでしょう」

『しっかしそちらの神様も意味分かんないですねー。そんなデタラメなことやらかすのに具体的な指示は無いんでしょう? 基本的に介入は最低限。それなのにあなたを送り込むなんてことは仕出かす。よくわかりませんね』



 神の意思。

 リグルドの頃に何度も考えていた。


 神教の神は実在するのだろうか? と。


「実在はしたとして、なんかしらの制約で介入が不完全なのだろうな」


 そう納得していた。

 そして実在は本当にした。そしてその介入も不完全だった。


「自らの意志で決めることが神の意思。この身体に意味を持たせるためには、赤子を産むことだろうな」



 聖女との会談後、龍族との話し合い。

「リュハに教育をさせてください」

 現在の龍族のリーダー、エールミケアが直接会いに来ていた。


「……ラウレスにも、連れ帰って教育させて欲しいと話が来ましたが、それは断りました。既に正式な側室として発表しています。宮殿から出すわけにはいかない」


「ならば教育係りをこちらに置かせて頂けないでしょうか?」

 教育係り。


「そういうことならば問題ありません。どなたがいらっしゃるのでしょうか?」

「はい。クミルティラを送ります。彼女はこの神都に慣れ親しんでいますし」



 クミルティラ。

 龍族の諜報で、リーダーであるエールミケアの後輩。


 基本的に神都におり私ともよく話をしていたのだが


「……クミルティラに、性の教育……???」

 クミルティラは良く知っている。天然気味で、いつもニコニコしている、龍族らしからぬ存在。


 そして、身軽な格好が好きで、髪も龍族の中では珍しく短い。

 胸も膨らんでおらず少年のような出で立ちなのだ。


「……まあ、訓練とか知識は別の話か」


 これでリュハとサザリィには直接の訓練相手が出来ることになった。


「オーディルビスに連絡しろ。教育係りを連れてくる分には問題はないと」



 そしてこの3人の教育係りだが。

 まあ大変だった。


 まずサザリィについたエウロバ。


「ビッチ!!! 性交に理屈を求めるな!!! 獣のように求めて!!! 獣のようにやりゃあいいんだよ!!!」


「でも!!! そんなのはしたないです!!! そういうのは田舎ものがやることです!!! わたしはもっとスマートにやりたいの!!!」


「はしたねーもねーんだ!!! 肉と肉のぶつかり合いに! 都会も田舎もあるか!!!」


 エウロバとサザリィの言い争い。


 エウロバはサザリィの人望が無く、侍女達からの教育が望めないと判断すると、アラニアから専門の世話役を用意した。

 実技はその人が教え、精神性をエウロバが教える。


 その世話役の人なのだが

「サザリィ様。私はどちらの意見も分かります。まず性行為というのは、その前段階も重要なのです。そこをスマートにこなすことも側室、正妻の立派な勤めです」


「でしょう!!!」

 世話役の人に擁護され嬉しそうにするサザリィ。


「ですが、最終的に性行為とは、エウロバ様の言うとおり獣のようにお互いを求め合うものなのです。逆を言えば、そのような性交になるために、前段階が必要となります。」


 この三人、何故か私の前で話し合っているのだが。

「……それで? どうするのだ? そのスマートな性行為とやらは、すぐに出来るのか?」

 エウロバの問いかけに


「無論すぐには出来ません。しかし幸いな事にサザリィ様は非常に前向きです。自分で『こういう風にやりたい!』と言うぐらいですから。……そうですね、30日も頂ければ」


 30日。

 それに顔を歪めるエウロバ。


「……長子に拘る気もない。陛下に失礼のないように。そしてあまりお待たせするな。寵愛は無限にあるわけではないぞ」



 次にリュハ。

 こちらはクミルティアの教育とやらが常軌を逸していた。


「いたーーーーーい!!!」

「これぐらいで騒がないでください。なんですか、両脚開脚ぐらいで」


 リュハの部屋から響き渡る絶叫。

 中でなにをやってるかは見えないが、クミルティアがリュハの股を広げようとしているらしい。


「裂ける!!! 股が裂ける!!!」


「とりあえず関節を柔らかくするんです。柔らかければ、濡れてようが濡れてなかろうが、とりあえず入りますから」


「とりあえず挿れてどーすんのよ!!! あんた私を壊す気!!!???」


「性行為できねえ。とか言うんだったら、取り敢えず、股開いて誘えば良いんですよ。穴空いてるんですから、取り敢えずまずは穴扱いからです。さ、開いて、開いて」


「いたーーーーーーーーーい!!!!! ふざけんなよ!!! お前!!!!! 殺す気か!!!!」


「いや、別に私は良いんですよ? お前のマ〇コペロペロ舐めて、濡れた状態で陛下に送り込めばそれで済む。でもそういうのが嫌だとか言うから私が柔軟体操みたいなことで妥協してるわけです。あんま我が儘言うようなら、フェルラインさんにお願いして、そのマ〇コ無理矢理広げて貰いますよ?」


 その言葉に、黙るリュハ。


「ほら、それが嫌なら股開け」

「折れる!!! 脚がおれるーーーー!!!!!!」



 リュハも時間がかかりそう。

 そして、ラウレス。

 彼女の教育係として、オーディルビスから女性が一人来た。

 そしてこれが侍女達と凄い揉めていた。


「まずは運動からです! ラウレス様のこの身体では実際に挿入に耐えられません! 口戯と手戯で陛下に御奉仕して、その間に身体を慣らされるべきです!」


「今までなにを教育していたんだ!!! 陛下が急に大きくなられた事情を考慮したにしても! 口戯も手戯もまともに出来ないのでは教育になっていない!」


 オーディルビスから来たロンドスネイプは、現状のラウレスを把握したあとに侍女達に怒鳴っていた。


 私から見たら侍女達はラウレスの味方なのだが、ロンドから見たら「わざと邪魔をしているのでは?」と疑っているらしい。


 オーディルビスは本来は敵国だ。そういう懸念はよくわかる。


 だが

「失礼なことを言うな。ロンドスネイプ。彼女たちはよくやっている。私が未熟なだけだ」

「ラウレス様! 気持ちは分かりますがここは帝国! 全てを疑えとは申しませんが、警戒もされてください!」


 ラウレスの場合は侍女達とロンドの対立。

 ロンドが来たことにより、むしろ進まなくなっていた。


 部屋から響く声を聞きながら

「……まあ、仕方ないんだが……」


 聖職者として性行為をずっと我慢し、皇帝として生まれ変わっても結局我慢。


 そんな運命なのかもしれない。


「……性行為だけが問題でもないしな」

 この3人の後ろには、世界を揺るがす存在がいる。


 ラウレスは聖女とタチアナ。

 リュハには龍姫と龍族

 そしてサザリィにはエウロバ率いるアラニア公国。


「……現状の帝国本国はこの三勢力に翻弄されている。そして今からこの三勢力に対抗するぐらいに帝国本国の力を強くすることなど夢物語だ」


 となればだ。どこかと親密になり勢力を拡大するしかない。


 聖女とは基本的には無理だ。

 そもそも神が私を遣わせた理由は

「このままでは帝国は崩壊する。そうなったら帝国本国が崇めていた神教の勢力が激減する。それを食い止めろ」だからだ。


 聖女信仰は隣の大陸では支配的になっている。

 エウロバ率いるアラニア公国も、民衆の大部分は聖女信仰。


(となれば、結局は龍姫か)

 それしかない。


「龍族クミルティアを呼べ」

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