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ソレイユとの話し合い

「エウロバ。久しぶり、と言えば良いのかしら? 眠りながら見てはいたけれど」

 妖艶に笑うソレイユ。


 年齢は30を超えているようには見えないが、リグルドが生きていたころの人物だ。100歳は超えている。


 龍族は不老。

 その美しさは以前となにも変わらない。


「……おばあさま。様々紆余曲折はありました。ありましたが、おばあさまと父が望まれていた、帝国統一を成し遂げようとしています」


 それに微笑むソレイユ。

「素晴らしいわねエウロバ。まあ私もテディネスも帝国統一なんて願ってはなくて、単に逆らう連中をぶっ飛ばすというだけだったんだけど」


 あまりの物言いに苦笑いするエウロバ。

「とは言えテディネスはきっと喜んでるわよ。『よくやった、それでこそ儂の娘だ、最高のビッチだ』って」


 ソレイユはエウロバの髪を撫でながら

「胸を張って生きなさい。あなたはなにも間違えていない。でももう私達に囚われる必要もない。好きに生きなさい」


「……おばあさま。……父は……」

 涙を流し言葉を紡ごうとしているエウロバ。


「好きに生きて、それで死んでいったのだから満足よ。私が保証するわ」

 そのままエウロバはソレイユの胸に飛び込んで抱きつく。


「なにも肉親らしいことはしてやれなかったわね。それでも眠る前に話が出来て満足よ。流石にもう目覚めた状態で会うことはないと思うけれど。次目覚めるとしたら侵入者が来た時ぐらいだからね」


 そしてエウロバを抱きかかえたまま聖女ミルティアを見る。


「コアは変わっても気に入らない面構えは一緒ね」

「それはそれは。あなたの顔を見たら先代の記憶が溢れかえって大変ですよ。本当にロクなことされてないですからね」


 ミルティアはソレイユに近付こうともしていない。かなり警戒をしている。


「ここでわざわざ喧嘩はしないわよ」

「だと良いのですが」


 そしてソレイユはこちらを見る。

「ご機嫌よう、リグルド様」

「……私にも用があるという事ですか」


 地下に招かれたのは、寝床を見せる為というよりもソレイユに会わせる為だろう。

 エウロバとの会話だけが目的とも思えない。


「ええ。リグルド様。あなたはもうやるべきことは終わった。あなたもお眠りになるべきでは?」


 やるべきこと。

 既に新宗教は始まっている。

 私が教祖という形をとっているが、既に組織は整いつつある。

 皇帝が抜けても困らない体制は既に作っている。


 また後継者としての子も出来た。

 男子は既に3人いる。

 3人いれば問題はないとは思うし、既に他にも孕んでいる側室も多い。


「……それもいいかも知れませんね」

 案内したフェルラインも止めていない。

 おそらくこれはフェルラインも賛同しているのだろう。


 龍姫がいないことから、彼女は納得していないというか、抵抗はしていると思うのだが。


「それでは?」

「決断もつきません。確かにダラダラと生き延びる気はなかったのですが」


 既に事はなった。もういい。それはある。

 あるのだが


「……クミルティアを随分お気に入りのご様子。正直な話、私が言えた事では無いのですが、龍族の子は世の中を乱します。ここにいるミルティアは龍族のハーフ。エウロバはクォーター。帝国の攻防戦で名を挙げた中で、龍族と関わりがないのはタチアナ、ヘレンモール他数える程度しかおりません。このままではまた世を乱す子を産み出すのでは? と危惧します」


 フェルラインがゆっくりと口を開く。

 それはそうだろう。理解はする。

 するのだが


「龍族との性交が良すぎてハマりました?」

 ソレイユが妖艶な顔で語りかける。

 それに苦笑いをし

「そうですね。率直な話、それが大きいです」



 地下での話し合いは終わり地上に戻ってきた。

 改めて言われると自分の醜さがより感じる。


「もう死んでいいのにな」

 とっくに死んでいた。

 神という名の化け物にまた送り返されたが、その使命も果たした。


 もう良いだろう。

 そうは何度も思った。それでも死ねない。

 生きようとする。それは恐怖からくる生存本能というよりも


「やっと解き放れた感じがするからか」


 自由。

 そんなものを与えられた記憶は無い。

 産まれた時から教会に拾われ、祈ること、学ぶことは生きると同義。

 常に「しなければならない」となにかに急き立てられ生きてきた。


 それが遂に解き放たれた。

 リグルドとしての責務は果たし、皇帝としての実務ももう無い。


 既に新宗教の体制も整い、私のやることは儀礼的に物事を進めるだけだ。

 残りの世界の問題はエウロバと聖女がやるだろう。


 この状態になってやりたいことが性交というのは我ながらどうかしている。

 しかし止めようもない。


「……多分、全部わかって送り込んだんでしょうね」

 クミルティアである必然性があったかは分からないが、龍族との子を為す方向性は変わらなかったと思う。


 それがなぜなのか。直接は聞いていないし、龍姫は答えないだろう。

 フェルラインははっきりと「龍族の子は世を乱しますよ?」

 と警告をした。


 元々クミルティアが眠りにつかずに、私と子を為すというのはエールミケアの推薦らしい。

 しかしそもそも「クミルティアは眠りにつかなくていい」と決めたのは龍姫だろう。


 誰かしらは龍族の子を残す。

 それは娘のような存在の龍族に対する愛情でもあるだろう。

 同時に、世界に家族を残しておきたい。という願望でもあるはずだ。


 そんな願望にそのまま乗っかってしまっている。



 側室として招いた女性10人になり、侍女達も孕んだ。

 また人数を増やすこともできたがそれは控えるようにした。

 理由はクミルティア。


 彼女とのセッ〇スはやめられない。

 正妻にはたてないが寵愛の回数ならば圧倒的にクミルティアになる。


「身体をいたわれー」

 お腹をさするクミルティア。

 既に二人目がお腹にいるのだ。

 それは怒られて当然。


「そうは思ってもやめられないので」

 有能な女が跪いて一方的な奉仕をする。


 少しずつ頭が晴れていくような気がする。

 これをされるといつもこういう気分になる。

 それがいい。


 それに流されるままになっていると



『……リグルドさまぁ』

 突然、耳に飛び込む声。


 まだ感触は変わらない。

 だが景色は変わっていた。


 そこには微笑んでいる四神女。

「……みな。まだ……」

 生きていたのか。いや、生きていたというのも変だが。


 そして姿は生前の姿に戻っていた。


「リグルド様。神様から『どーするー?』と」

「私達とここで暮らせます。実質神様みたいな存在です」

「こっちにいて欲しいですが、無理強いはできません」

「セックスしましょーよー」


 4人が口々に言う。

 これは以前もあったビジョン。


「……恨んでいないのですか?」

 なんとなく口に出る。


 既に答えは聞いている。それでも、なお。


「恨んでいる。と言えば満足ですか? 私を道具のように使い潰したとか」

「私を外に出さずに殺したとか」

「男性恐怖症になった私を死に追いやったとか」

「戦場に送りこんで見捨てたとか」


 4人がにこやかに笑う。

 そう。それを聞くと


「そうですね。満足します」

 ああ、やっと言ってもらえた。恨まれた方がマシ。あれだけの事をして責められないと、自分が如何に巧妙に騙したのかを突きつけられる気分になっていたのか。


「じゃあお仕置きでーす」

「まあ、別に恨んじゃいませんけど」

「リグルド様もそんなこと気にするんですねー」

「それはともかくセックスでーす!」


 そして4人が抱きつくと

『これでお前は、神の眷属だ』

 突然声が響いた。

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