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『神』の演説

 どこもかしこも後継不足。

 帝国が崩壊に向かった原因も後継不足だった。

 後継は多い方がいい。


 基本的にはそういう風潮がある。

 その中で大量に孕んだ側室達。


 入ったばかりのネストリアという妾と、龍族クミルティアがいきなり孕んだ事により、オーディルビス王国から話が来た。


「男性ならばそちらでいいのですが、女性でしたらオーディルビス王国で引き取りたいのですが」


 こういう申し出は皇帝一族の中でも過去にもあった。

 基本的に女性の血筋で後継は考えられないが、子が女性だとそもそも基本的には王にはならない。では何故もらい受けるのか。


 それは嫁入りの為の外交の道具として。

 皇帝の血筋を引いた娘というのはそれだけで価値のあるもの。

 それの嫁入りは基本的には歓迎される。

 そのため、各国は「女の子が生まれたら我が国で引き取らせてください」という事がある。


 だからそこまで変な話ではない。なにしろオーディルビス王国は王族が少ないのだ。


「分かりました。その時にご相談しましょう」



 子を為すと言う仕事は上手くいっている。であれば、残るは新しい教えを広げること。


 すでに教義は完成している。

 また側室にクミルティアが入ったので様々相談できるようになったのが大きい。


 なにしろ基本的には一人で考え動いていたのだ。

 相談に値する存在がいるだけで気分が全く違う。


「いよいよ動こうかと思います」

「あのー。陛下。絶対忘れてると思いますけど私妊娠していましてね?」


 クミルティアの突っ込み。

「もちろん憶えていますが」

「でも秘書みたいな仕事増やす気ですよね???」

 大量の書類を持ち上げるクミルティアに

「そうですね。あなたしか頼めません」

「出産まで待ちましょうよ」


 出産まで

「いえ、出産したらまたすぐ孕ませますから一緒ですよ」

「鬼畜ですか!?」


 クミルティアはかなり気に入っておりなにかあれば抱いたりしている。とは言え挿入は出来ないが。

 これで出産したら当たり前のようにしそう。


「性欲に制御が効きませんね。これは急な成長と無理な性交の副作用かとは思っているのですが」

「身体がもちませーん」

 それはそうだろう。申し訳ないとは思う。

 思うのだが


 クミルティアのその身体。

 抱けば抱くほど色気が上がっていく気がする。

 今見ていても欲情を抑えるのが難しい。


 だがこれからは様々動いて貰わないといけない。

 自重しないと。

「出来る限り配慮しますから」



 夜。

 今日は一人で眠る日。

 性交のしすぎは身体に不調をもたらす。

 休養日を必ず設けるようにしていたのだ。


「……ムラムラするな」

 休養日は昼にクミルティアと一緒に仕事しちゃダメだな。

 それを抑えこんで眠りについた。



 眠ったのかどうなのか。

 目の前には『神』がいた。


『さあ! 最後の仕上げをやるぞー!』

 張り切っている『神』リャナンシー。


「……最後の仕上げ、ですか?」

『そうだー! ちんたら布教なんかやってたら分派作られて大変になるだけだー! 私はこういう宗教作るプロだぞー! まかせろー! こういうのは初手が全てだー! 聖女もそうやって成功したー! 新しい教えも一気にやるからなー!』


 初手が大事。分派を作られたら大変。

 どれも頷く内容ではある。


 しかしだとしたら具体的になにをするつもりなのか。


「なにをされるおつもりで?」

 正直『神』がここまで具体的に現れてなにかを語るとは思わなかった。

 今までのように『適当に頑張れ』程度だと思っていたのだ。


『お前の準備は整った。クミルティアならばお前の良き助言役になるだろう。龍族だから不老だ。守り手としては最適。また龍族の子は有能が産まれやすい。暫く子には困るまい。ならばやろう』


 私の準備を待っていた?

 その言葉に戸惑っていると、突然『神』はなにか円筒形の筒のような物を口に当てる。

 口を当てるところは小さいが、その先は大きい。


 よく軍隊で使う拡声器に似ているが


 そして私に背を向け


『我を崇める信徒に告ぐ!!!!!』

 地を響かせるようなあまりの大音響に思わずひっくり返る。


 ここは『天』で地ではないのだが、その雲のような下面は柔らかく暖かい。


『我を崇める組織は腐りきった!!! 我が心は遮られ!!! 皆に伝わることも無くなった!!! この百年!!! さらにその前からだ!!!』


 まさか、これは信徒に呼びかけているのだろうか?

 しかしどうやって? これは直接地上に響いているのか。


『だが、100年前のリグルド! そして今の教皇の捨て身の祈りにより!!! またこうやって我の声を届けられるようになった!!! 彼らにつき祈る信徒に祝福を!!!』


 大きく腕を掲げる『神』

『しかしそれも限界だ!!! 今の神教の教義、組織は我の意思を伝えるに値しない!!! そのために我が直接、敬虔なる信徒!!! 皇帝に祝福を与えた!!! 彼に従え!!! 彼と共に歩め!!! 我を崇める信徒よ!!! 新しい教えに戸惑うな!!! 我が保証しよう!!!』


 そしてその円筒形の筒を放り投げ

『まあそういうことだ。後は頼んだぞー。おやすみー』

 言い終わると同時に、前と同じように、地に向けて蹴り出された。

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