寝床の規模と墓守
『クミルティアが陛下に抱かれましたー。なんかめっちゃ興奮して、馬乗りになって滅茶苦茶に犯してましたねー。途中から媚薬ぶち込んだのでクミルティアも喘いでましたが』
「そう。お疲れ様。クミルティアによろしく伝えておいてね」
龍姫は微笑む。
龍族の殆どは眠りにつく。だが、全員ではない。墓を守る龍族も必要ならば、男と子を望む龍族もいるだろう。
龍姫はそれを皆に聞いたら
「クミルティアは世界に残した方がいいのでは?」
と皆から意見が出た。
龍族が眠りにつく理由は闘争本能の暴走。
クミルティアは極端に闘争本能がなく理性的。
また墓守に関しては満場一致で
「カリスナダならば聖女が手出しをしません。彼女が相応しいかと」
闘争本能が少ない龍族が推薦されるのだが、カリスナダが墓守ならば、クミルティアは龍族の子を残す役割がいいのでは? となった。
では誰と?
になったときに
「そら陛下以外いないのでは?」
エールミケアからの推薦。
龍姫もそれに異論はなかった。皇帝と龍族の子は以前の皇帝からも望まれたことはあったが、龍姫は一度それを断った。
その後、皇帝一族は深刻な後継不足に陥り混乱を招いた。
龍族が側室に入れば解決したのかどうかは当然分からない。
だが後悔の一つではあった。
龍姫としては乗り気な提案だったが
「あの色気のないクミルティアだけど大丈夫かしら?」
龍姫はクミルティアを抱いている。
その新鮮さが好きではあったのだが
「むしろバッチこいかと。ああ言うのをメスにするの好きな男多いですし」
エールミケアはそう返答したのだが、その通りに物事は進んだ。
クミルティアは抱かれ、皇帝のお気に入りになった。
帝国の支配を手放した皇帝。
やることは大幅になくなり、ひたすら子作りに集中し何人も孕ませている。
子が多ければ後継争いの問題にもなるが、歴代皇帝は何度も「後継不足」で混乱してきていた。
多すぎて揉めた事は一度も無かったのだ。
そのためこの「とにかく子を多く残す」事は好意的に受け止められていた。
あたらしい側室達も侍女達と共に訓練を始め、寵愛を貰う準備をしていた。
その中の一人に龍族を送り込む。そのこと自体は特に問題にはならなかったが、皇帝が想定よりもクミルティアに夢中になっていた。
「クミルティアが諜報しなくなってエールミケアが全部見ることになったけど大丈夫?」
「はい! 神皇に付かなくていいなら余裕です!」
エールミケアは元気よく宣言する。
「そう。もうあの人はいいわ。好きにさせなさい。それと新しい寝室の進捗はどう?」
「はい。そちらはフェルさんが張り切ってやってくれていますが、時間は相当かかると思います。なにしろ規模がハチャメチャでして。歴代皇帝の墓とかのレベルじゃないですよ。街作る気か? ぐらいの」
町外れに作られ始めた建造物。
最初は墓だと思われていた。
だが、それの規模が分かると墓ではないのでは? と思われるようになった。
なにしろ広さは今の街の半分ぐらいの規模。
常識を覆すような広さの建物。
フェルラインが指揮をとって建物を作り始めていたが、その拘りは常軌を逸していた。
街ぐらいの大きさの建物。
単に百人ぐらいが眠りにつく建物なのだが、如何に快適に眠れるか。
それは盗掘を防ぐための罠も含まれる。
知能も含め人を超えた能力のある龍族だが、その能力を使っても何十年はかかると言われている程の規模。
「楽しみにしているからあまり聞かないようにするわね。ふふふ。眠る時にも楽しみが無いとね」
眠り。その言葉に少し表情が陰るエールミケア。
彼女はどうするか。まだ決めていなかった。
と言うのはフェルラインが
「クミルティアが陛下の側室なら! エールミケアは神皇のお嫁さんでしょ!!!」
と大はしゃぎして話が進まなかったからなのだが。
(私はどうしよーかなー?)
神皇のお嫁さんは有り得ない。だが眠りに付くほど暴力衝動は前に出ていない。
とは言え残ってなにかをしたいわけでもない。
「元盗賊が墓守っていうのも楽しそうではあるけど」
エールミケアは人間だった頃は窃盗を生業としていた盗賊だった。物を盗むだけでなく、情報も盗む諜報のようなこともしていた。
所属していた組織から龍族の館を探れと命令され「それは無理」となり龍姫に投降した。
そこから龍族として生活していたのだが
「フェルさん、きっと常識外れの豪華な宝物運び込むだろうし、やっぱり墓守かなー。カリスナダはドジで心配だしねー」




