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予算の使い方

「届けにきたよー」

「まあ! 本当に素敵!」

「わっ! なにそれっ!?」

「サザリィ!? なんであなたが独り占めしてるの!?」

 後宮が大騒ぎになっていた。


 龍族エールミケアが大量の宝石を持ってきたのだ。

 それをサザリィが真っ先に駆けつけ見ていたら、後ろから皆が殺到し大混乱。


「皆、落ち着いて。エールミケア、まだ宝石はありますか?」

 掴み合いの喧嘩になりかけていたので止める。


「あー。これ龍姫様への奉納品を選ぶための品物でしてね。技術者選んだらそんなにありませんよ? まあ陛下の側室向けに採用とかならするなら話は代わりますが」


 こういう宝石職人を囲うのか。随分金はかかりそうだ。

 実際帝国本国は予算削減の為にそう言った職人を無くしていた。


「まあそこは即答できません。とりあえず混乱が起きない程度に用意頂ければ。もちろん買取りますので」



 宝石を買い取ると言っても予算の問題がある。

 なにぶん帝国本国はもう実質もうない。


 今後の運用などをどうしようか?

 というのは重要な話なのだが、そのあたりをつつくと、各国の予算問題にもなり、あまりエウロバも触れたくないらしい。


 だが、どこかで決めないといけないので相談しようとしたのだが。


『財政の問題に手をつけたら大変な事になる。しばらくは各国独立予算は認めざるを得ない。そうなると当然帝国本国もそうなる』


 エウロバと遠距離会話装置で会話するが、なにか騒がしい。


「帝国本国の範囲は実質2つの街しかない。今は金を大量に溜め込んでいますから問題ありませんが、住民の数と城の規模があってません」


『……あまりこういうことは言いたくはないが、今そちらの金庫にため込んでる金で100年は遊んで暮らせるだろ?』


 100年。それは無理だが

「しばらくは自分達の金で過ごせ、というのは理解しました。ある意味当然の話ですからね」



 一応財政は確認はしていた。

 だが改めて自分達で生きていくために、無駄な出費を抑え、売れる資産はどれぐらいあるのか?


 そう言った整理を改めてすることにした。


 王族の宝は値段がつかないものが多い。

 目の前の物などその極みだ。


「なんだこれ?」

 よくわからない似顔絵。

 皇帝の絵でも無い。落書きのようにしか見えないが


「子の似顔絵を大切にしたとかか? 目録は半分も網羅してないしな」

 宝物庫には由来が分からないものが沢山ある。


 鑑定士を招いて一個一個見てもらっている。


 こんな事をすれば金を用意しているとみなされ「戦争の準備か?」となり公には出来なかった。

 今なら「国家予算を設定する確認の為にやる」と名目はたつ。


 とりあえず売れそうな物を積み上げていこうとしたが、想定よりも売れるものがない。


 代わりに金貨の数が凄い。

 既に金目のものは換金されていたと考えるべきだろう。

 戦争に耐えられるように、かなりため込んでいた。


 また、各国に公開している財産表とは全然違う。

 いざと言うときに隠していたんだろう。

 保管場所から別だったからな。


 そしてそんな財産を確認した結果

「帝国本国の支出金額ですが、神教への寄付金額を大幅に減らす見込みでおりますので、年間の支出は30万金貨(300億円)程度です。それに対して換金可能な金額は2000万金貨(2兆円)程度です」


 ……

「……正直、溜め込んだ金額はそんなものな気がしますが、支出金額はそんなに少ないんですか?」

「実質この後宮と宮殿の維持だけですし……規模が小さな国なので、支出も少ないのです」


 これで支出金額を絞れば本当に百年暮らせそうな金額だった。


「せっかく歴代皇帝が溜め込んだ金を無駄に使うのも気がひけますが」

 とは言え、この金をどこまでも持っていても。という気もする。そのうちエウロバが没収してもおかしくない。


「使わない金貨はただの飾り物ですから。使いましょう」



 帝国の体制変更なのだが、穏やかに進んでいた。

 問題となった国家予算の件に関しては、帝国本国は自力で運用をすることになり、アラニアも「基本的には各国の独立予算は守られる」とした。


 今まで帝国本国に収めていた税金に関しては今までと同じように徴収するのだが、それの受け取り手はアラニアになる。その代わりその税金は半額にした。


 半額にした理由は各国の反発を抑えるためだが、実際にそれで反発は収まった。


 各国に金が貯まれば、兵力の充実も図れる。

 アラニアに入る金が少なければが一気に力をつけることも避けられる。


 ただ各国が気にしていたのは「帝国本国にある財産は誰が取るんだ」


 公開されていた帝国本国の金額だけでもかなりな金額。

 それの答えが

「帝国本国は収入が少ない。このままでは一国としての運営は不可能。だから小国に相応しい予算になってもらうが、それまでは今までの財産を切り崩してやってもらう」


 つまり帝国本国が使うことになった。

 その使い道なのだが

「後宮関連で予算の半分……」


 実際後宮は金がかかる。

 それでも人数は少ない方。他の公王は100人単位で囲んだりしている。


 帝国本国も同程度だったが、今は人数を広げても10人程度。


 侍女の数もそこまでは多くない。

 これは単純に、帝国本国の支出が極端に少なくなったから。


 そのため割合が膨れ上がった。

 これに関しては「帝国本国の金で運用するのだから文句など誰も言えん」

 とエウロバから承認。


 また、帝国本国が実質的に独立国家になったために生じたものがある。

 それが借入金。


 公国は予算が厳しくなると帝国本国から借金をしたりしていたのだ。

 その借金は特に請求することもなく、放置されていたものもある。

 あまり急に借金の返済を求めると反乱を起こされるかも知れないと慎重だったのと、帝国全体の金なので、別に無理に一国から返してもらわなくとも。という感じらしかった。


 その借金の返済はあくまでも「帝国本国」が貸し付けた金である。そうエウロバが宣言したので、その利子だけ支払われることになった。


 その利子だけで30万金貨(300億円)

 年間支出も30万金貨。つまり、この利子を受け取るだけで暮らしていけるのである。


 そうなれば金庫にある金貨を使っても特に大きな問題にはならない。


 そのため新しい側室や、今までの側室のために多額の予算をかけて衣装、化粧、小物、宝石の買取をすることになった。



 側室は元々3人だったが、既に侍女が3人孕んだので6人。それに新しく7人入るので13人。


 それにかかる金額が13万金貨(130億円)にまでのぼった。


「これだけ見ると完全に暴君ですね」

「皇帝にとって子を作るほど大事な事はないですし。変ではないですよ」

 クミルティアと相談。


 後宮の為に大事な金貨を使い込む。

 正直これはかなり葛藤してはいたのだが、最近抑えが効かなくなった性欲の前に耐えることが出来なかった。


(……エリスがいた時は多分本能が抑えていたんだろう)

 なにしろ心の中に3歳の幼子がいたのだ。

 その幼子を表に出さないために性行為をしすぎた。


 身体だけなら15ぐらいだろうか。性に夢中になっても仕方がない年齢。


(どちらにせよ少し時間はかかる。ここまで一気にやりすぎた。クミルティアの言うとおり、子を為すのは重要な仕事だろう。それに……)


 それに。存在が消えかかった事から性欲が増した気もする。

 エリスが去ったことで、よりその性欲が健在化した。


 自分を残したい。世の中に残したい。


 しかし新しい側室達はまだ来ていない。

 今の側室達は全員孕んでいて、侍女達は新しい側室を迎える準備で忙しい。


「……セックスしたいのですが、皆忙しくてですね」

 思ってたことがそのまま口に出てしまう。


 目の前にいるのは龍族とは言え女性である。流石に恥ずかしくなる。


「すみません。忘れてください」

「あ、いえいえ。実際そうですよね。ちょーどいいのが一匹いるんですが」

 一匹。


「……一匹?」

「ああ、人です。人。タチアナを殺そうとしている女がいるんですけど、今やられると色々困るので捕らえているんですよ。こいつがお母さん大好きで、タチアナからはレイプされたりと、女としかやってないのです。陛下、最近乱暴なセックスしているじゃないですか? アルバラって言うんですが、顔は美人なのでセックスしませんか?」


 タチアナを殺そうとしている。

「そんな危ない女性と無事出来るんでしょうか……?」

 レイプって、返り討ちで殺されると思うが。


「いや、実はですね。オーディルビス王国ってこのままだと滅亡しちゃうんですよ。なにしろタチアナに子がいないし、子供作る気ないし。じゃあ他の王族は? と言うとラウレスともう一人の女しかいない。タチアナは女ですから、別に女でも良いんですけど、ラウレスもそうですし、あまり政治に関心無いのです。んで、ラウレスの子は帝国本国の跡継ぎ候補じゃないですか。なので、一応オーディルビス王国の血を引いているアルバラにも子が欲しいなーと」


 オーディルビス王国。

「なぜ龍姫、龍族がオーディルビス王国の心配を……?」

 敵対関係にまではいかないが、似たような緊張感のある関係のはずだ。それにオーディルビス王国には龍族はいない。あまり関わらないと思うのだが。


「私達は眠りにつきます。その上で世界が混乱する要素は取り除きたい。その中で一番危険なのがオーディルビス王国なのです。あそこはタチアナというカリスマで支えている。あの国は代々率いる王が有能だからまとまっていました。何度か王が途中で亡くなったことがあるのですが、そのたびに凄惨な虐殺が行われています。タチアナが子を残さず死ねば、後継者争いで血で血を洗う戦争になるでしょう。それでは困るのです」


 その懸念は私もしていたが

「……しかし、代わりがアルバラの娘では、より後継者争いは混迷するのでは?」

「タチアナは兄を敬愛していました。兄の孫が出来たとあれば、喜んで後継指名するでしょう。ただ、アルバラは子育て出来るような性格ではない。そういう点で陛下の後宮で匿われた方が助かるのです」


「……アルバラが後宮に入るのではなく、子を後宮で預かると」

「そのうちタチアナが引き取りにくるとは思いますが」


 まあ納得はしないが

「安全を確保できるのならば」

「お任せくださーい」

 その瞬間、クミルティアは目の前から消え失せた。

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