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龍族達の眠り

「神教の神というのは、元大妖精のリャナンシーという化け物。その点の認識に相違は無い訳ですよね?」

「ええ。そうね」

 聖女ミルティアと龍姫が直接対話。


 ミルティア側から対話を持ちかけ、龍族の館で話し合いをしていた。


「特になにをするわけでもない化け物を崇める意味ってなんですか?」

 ミルティアの問いかけに龍姫は苦笑いし


「私にとっては『リグルド様とハユリさんが崇めてたから』以上でも以下でも無いわね。あの二人には救われた。その二人が信仰しなさいと勧めてきた。それだけね」


 ミルティアは不機嫌そうに

「あのリグルドとハユリを見てもですか?」

 それに手を振る龍姫。


「今の二人は関係無い。思い出の話よ」

「私は未来の話をしています」

「若いっていいわね」


 突然はぐらかすような答えをする龍姫。

「ある程度精神が成熟したら、思い出に縋るしかなくなるの。今までを投げ捨てて、突然新しい事をしましょう。とは中々ならないわね。私はもう新しい事をする気力もない」


「あなたはそれで良いかもしれない。でも新たな歩みを始めた帝国に、またそんな無駄な事を背負わせる必要は無いでしょう?」


 無駄な事。

 それに微笑む龍姫。

「世の中に無駄な事なんてないわ。願いを叶えないから無駄? 今までの世界にあった信仰も殆どが直接叶えて無いでしょう。でも彼らは必死に信仰していた。それはその教義が正しいと思っていたから。そして自らの努力で困難を突破する。そして、神に感謝する。あなたのお陰で解決出来ました、と」


「そいつは騙されているだけでしょう?」

 ミルティアは少しいらつきながら答える。

 そんな反応にも特に気をせず龍姫は話を続ける。


「人はそんなに強くはない。自ら以外に縋るものがなくして生きてはいけない。人はそんなに弱くはない。超常的な存在が助けなくとも生きていける」

 龍姫は少し茶目っ気に笑い

「まあ、私はもう人間じゃないんだけどね」



 ミルティアとの対話はすぐに終わりミルティアは引き上げた。


「姫様、ミルティアはいざとなればなんでもやってきます。求められたからと言ってそう頻繁に会うべきでは……」

 龍族フェルラインの言葉に

「フェルライン、龍族を全員集めなさい。眠りの準備をします」


 眠りの準備。それに絶句するフェルライン。


「最後にリグルド様とハユリさんに会えて良かったわ。もうこれ以上私がやることもない。皆と静かに眠りにつきましょう」


「……姫様。畏まりました。ただ眠りを守るための整備にお時間を頂きます」

「ええ。何年、何十年かけてもいいわよ。せっかくの眠りを無理矢理起されるとか最悪だからね。時間と予算は無限にあげる。素敵な寝床を作りましょうね」


 それにフェルラインは微笑み

「畏まりました。最高の寝室を作ります!」



 龍族は基本的にある程度年数を生きると活動停止と称して何年も眠りにつく。

 一度眠りにつくと目覚めたという記録は殆どない。


 数少ない例外はアラニア公国のソレイユと、エネビット公国のヘイルカリ。

 この二人は各公国の特別室でずっと眠っていたのだが。


「この度龍族の館で全てを管理することになりました。ソレイユ様をお返し頂たく」

 フェルラインは各国に龍族を返すよう伝えに来た。

 エネビットはすぐに応じたが、アラニアのエウロバは抵抗した。


「なぜお祖母様を連れ出す必要がある。お祖母様は自ら望んでこちらに眠られているのだ」

 エウロバは身内に対する愛情に飢えている。


 そのため身内が連れ出されることに抵抗していたのだが


「龍姫様の願いです。ソレイユ様もそれには従うかと。起こして聞いてみます?」

 というフェルラインの前に黙った。



 龍族が大金を払い資材を集めた。

 新たに建物を作る。だが、その組立には人間を入れず龍族だけで造り始めていた。


 最初は不思議そうに思っていた人々だが、その集めた資材で少しずつ知られていくようになった。


 侵入防止の罠、飛び出す刃物。そういった仕掛け罠を作るための物が大量に運びこまれていた。

 この世界で仕掛け罠を作る施設と言えば「墓」。龍姫の墓を作り始めたという噂になった。


 そうなると墓に収めるものが注目される。

 今までも女の王族の墓には宝石などが収められている。ましてや宝石などを愛する龍姫。

 そうなれば相当な代物が求められる。


 大陸中から宝石職人などが来てその腕前を売り込み始めるようになったのだが。


「すごーい。こんな技術があるんですねー」

「こういうのをなんで普段売り込みに来ないんだ」

「あ、これかおーっと。みんなに買って帰らないとねー」

 3人の女性がその売り込み会場を楽しそうに歩く。


 その3人を呆れたように見る龍族エールミケア。

「みなさん、とっとと帰ってもらえません?」


「お買い物なので気にせず」聖女ミルティア

「買い物ぐらい好きにさせろ」エウロバ

「こういうのやるなら呼んでよー」タチアナ


「買い物じゃなくてですね。この人達は龍姫様の献上の品を作る技術の売り込みに来てるんですから」


 宝石職人が集まったのを確認した龍姫は、宝石の買取と、契約の金額を発表していた。


 もし献上品を作る技術者として認定すれば、年間に1万金貨(10億円)。材料費は別で提供。

 技術料だけで1万金貨は国が雇っている技術者の50倍以上。

 

 また、選ばれなくても献上品候補として提出した宝石は洩れなく買いとり、その作る材料は無料で配布される。


 そうなると、普段は使えない高価な素材を作った宝石などにも挑戦する宝石職人が増えてくる。


 見たこともない最先端の技術を使った宝石。

 それ目当てで3人はバラバラに来ていたのだが、すぐにお互いに気付き3人連んで買い物。


「技術者の囲い込みはともかく試作品の宝石は普通に売らせろ」

「そうですよー。あ、これ買いますから」

「もう引き取ったやつも見せてよ」


 わちゃわちゃと騒ぐ3人とエールミケア。


「陛下の側室の皆さん用のやつも選ぶんですから。そんなに分けるもの無いです」

 エールミケアの言葉に3人は顔を見合わせ

『あんな小娘共に宝石の良さなんて分かんないでしょ』

 自分達が送り込んだ側室達にも関わらず、3人はハモった。

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