急激な身体の成長と戸惑う側室達
「…………」
家臣達もそうなのだが、三人の側室が一番ビックリしている。
「……へ、へいか?」
「……まあ、早く子作りをしろという事だろう……」
三人の側室はまだ混乱していたのだが
(……まずい、興奮するな)
特にリュハ。
ハユリにそっくり。
「今日はリュハだな。夜に来るように」
その夜。待っているのだがリュハが来ない。
「……流石に急ぎすぎか?」
だが興奮するのだ。これは自分でごまかすかな?
ぐらいに思っていたら
『陛下の宵の時間にお邪魔するなど万死に値します。ですがお伝えせねばならぬことがありまして』
そう言って部屋に響く女性の声。
これは
「エールミケアですか」
現在の龍族のリーダー。
世界最高峰の諜報と呼ばれる女性。
『リュハですが、少しお時間をください。今の陛下相手では不敬をしかねません』
「……そうですか」
『姫様も心を痛められています……って、フェルさん!!! 今陛下と話をしていまして!!!』
『あのバカ!!! なんで妾としていってんのにセッ〇スもできんのじゃ!!! ミケア!!! 強制的にレ〇プして濡れさせてから送り込め!!!』
龍族フェルラインの怒りの声。
リュハの性知識不足と、アプローチの未熟さは正直どうかとは思うが
「リュハは私の妾です。手を出さないように。待てというならば待ちましょう」
『……陛下、申し訳ありません』
リュハが無理だった。それが侍女にも伝わったのかすぐに部屋に侍女たちが来たのだが申し訳なさそうな顔をしている。
「本来はリュハ様が無理でしたらラウレス様をと思ったのですが……」
「陛下の身体に戸惑っておりまして……」
困惑顔の侍女達。
まあ急に体が大きくなったから戸惑うのはわかる。
「昨日の今日だからな。気にしなくていい」
今日は興奮した状態で寝ることになった。
「オーディルビス王国から緊急の連絡が来ております。女王タチアナが、ラウレスを一度連れ戻したいと」
ラウレスを連れ戻す。
「遠距離会話装置を繋げ」
『私どもが送り出した女がご迷惑をおかけして申し訳ありません』
タチアナからの丁寧な謝罪。
「それは私の側室としての教育の問題。ラウレスは側室として正式に発表します。ここから先は私が解決する問題です」
『一度ラウレスを教育し直したいのですが』
「あなたからの叱責以降、ラウレスの侍女に対する態度は大きく変わりました。現状では教育して頂くこともないかと」
『しかしですね…………ここから先は陛下のみにお伝えしたいのですが』
遠距離会話装置という魔法の装置は様々な種類がある。これは周りに大きく響くものだ。
「良いでしょう。切り替えます。おい、装置を変えろ」
耳に装着するタイプの遠距離会話装置。
これならば周りに聞こえない。
「変えました。これであなたと私しか聞こえない……」
『妾として送り出したのに身体が大きくなったから怖くなってビビりました。 みたいな間抜け、そちらの侍女達の教育がどうこう以前の問題です。セッ〇スのなんたるかを私が責任もって教え込みます』
セッ〇スのなんたるか。
なにを教えるか気にはなるが
「何度も言いますがラウレスは私の正式な側室になります。この前の叱咤のようなアドバイスは歓迎しますが、この宮殿から出す気はありません」
オーディルビス王国の女王タチアナ。
先帝が亡くなる直前は帝国は大混乱になっていた。
まずオーディルビス王国がグラドニア公国を侵略し征服した。
それに前後して、神教の内部で大混乱が起き各国で内乱などが起こった。
その混乱に乗じてオーディルビスは隣国フルノルゼ公国も攻め二カ国を占拠。
また、こちらの大陸にある聖女信仰の国アディグル王国が、帝国のディマンド公国に侵略。
帝国は一気に三国失ったのだ。
ただ、アディグル王国の方はディマンド公国とその援軍が粘り強い抵抗をしたせいか、支配が固まりきらず、三年後独立戦争が巻き起こった。
その混乱に兵を率いて、ここぞとばかりに反アラニア勢力を潰そうと戦いを起こしたのがエウロバ。
その状況でリグルドとしての意識が目覚めた訳なのだが、私が「帝国内の公国と争うのはやめろ」と言ったおかげで、公国内戦争は避けられた。
そして旧ディマンド公国の独立戦争を支援するべく、帝国内の勢力がアディグル王国に攻めいる後方を、オーディルビス王国が襲いかかってきた。
反アラニア勢力の筆頭だが、オーディルビス王国が占拠している周辺の国々と仲の良いアンジ公国は全勢力を率いてオーディルビスとぶつかり、アラニアも主戦力をオーディルビス征伐に向けた。
要は帝国内の二代勢力の筆頭がオーディルビスと当たったのだが、これにオーディルビスは互角に戦い抜き、戦線を下げることはなかった。
この戦争は、アディグル王国の隣国、ガルド公国からの傭兵軍団が奇襲に成功し旧ディマンド公国の王都を占拠。
ガルド公国に避難していた旧王族が独立を宣言し戦いは終わりオーディルビスとの休戦もすぐに決まった。
だが、その後も断続的に国境線で小競り合いは続いており緊張感は七年経っても未だに存在する。
そんな強力なオーディルビス王国を率いるタチアナ。
(帝国が弱れば、聖女信仰のオーディルビスが先頭に立って攻めてくるのは自明。ならば少しでも今のうちに交渉すべきだ)
サザリィとの問題はいいきっかけになるかもしれない。
だが
「……セッ〇スのなんたるかって、なにをする気だったんだ」
少し気にはなっていた。