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扉の前で歌うクミルティア

 現神皇の信仰心は歴代の信仰者の中でもトップクラスにあると思う。

 常に祈り続けており、その信仰心は揺るぎない。


 だが、以前龍族エールミケアが愚痴をぼやいていた。


「神皇は私をズリネタにしてオナニーしてる」と


 信仰心は強いが性欲も相当強い。

 それはリグルドもそうだった。別に実際にエールミケアに襲いかかったわけでもないし、別に良かろうと思っていたのだが、彼女は嫌悪の顔で「気持ち悪いです」と言っていた。


 その嫌悪感から、神都の諜報は部下のクミルティアに一任しているぐらいの徹底さ。

 近くによりたくもないらしい。


「男の抑圧された性欲というのはそれぐらい強烈なものなのかもしれないが」


 そんな神皇だが、基本的には無口で誰かと連むことはない。


 私が「共に祈りませんか?」と言ったのは、より聞かれてはマズいことを相談しませんか?

 という意図で聞いたのだが、本人は「そういうのは苦手だ」と断った。


 より聞かれてはマズいこと。

 二人は龍族の護衛で一切他の誰も近寄れない。

 逆を言えば龍族には聞かれる。


 味方である龍族にも聞かれたくない相談。

 それは龍姫の処遇について。


 本来は彼女に新たな宗教を託そうとしたが断った。

 自分はそういうものに向いてはいないと。


 とは言え、新しい宗教を行う上で龍姫の存在をそのままなのはマズい。

 どちらにせよ、なにかにはしないといけない。


 眠りについてもらうか。崇めるものの一部になってもらうか。


 新しい宗教の教義はそこが埋まっていない。その相談があったわけなのだが。


「相談する相手がいないな」

 少し息を吐く。


 その瞬間


「ぐっっっ!!!」

 意識が遠のく。

 椅子から転がり落ちた痛みのおかげでなんとか意識は保った。


「……エリスの意識は日に日に増してるな……」

 これを、どうにかするのは性行為。


 実権を手放したが、皇帝としては降りてはいない。

 側室達も引き続き慕ってくれている。


「……サザリィを。サザリィのところに行こう」



 意識が遠のきかけている時はすぐに性行為をすれば、意識を取り戻せる。

 サザリィはそういう点でとても早い。


 理由は

「陛下! いらっしゃいませっ!」

 突然現れてもしっかり準備をしている。


 他二人と違い、サザリィは性行為というものに「オシャレさ」とか「ストーリー」とかそういうものを用意しようとしている。


 そのためにいつも準備をしているらしく、突然訪れても化粧もしっかりしているし、衣装まで着込んでいたりする。


 練習とかをしているらしいが、どんな練習かは分からない。


 とは言え、私にとって助かるのはサザリィは突然訪れてもすぐに戸惑わずしてくれる。

 そして割と積極的。


「今は故郷で流行している演劇のヒロインの衣装をしているところです」

 ヒラヒラの透けるドレス。


 これで演劇をするのか。どんな劇だ? とは思うが

「とても綺麗だよサザリィ。この格好のまま抱きたい」

 早急に抱こうとする私の言葉にも戸惑わず


「はい! もちろんです!」


 そのまま抱き合ってキスをしていると

 突然サザリィが


「なんの用だ!!! 帰れ!!!」

 突然怒鳴る。


 振り向くと後ろにクミルティアがいた。


「いえいえ。終わってからでいいです。どうぞ、お気になさらず」

 お気になさらずって


「終わったら声をかける! 消え失せろ!」

 サザリィの絶叫にクミルティアの姿はかき消えた。


「……なにか急用があったのでしょうが、今はあなたと逢瀬をしていますからね。ゆっくりやりましょう」

「はい! もちろんです! へいか! 徹夜でやりましょう!」


『それはこまりまーす』

 ドアからの声に、手元にあった下着を投げつけるサザリィ。


「貧乳は黙ってろ!!!」

『うるせー。お前も言うほど胸はねー』


「やかましい!」

 そんな喧嘩を見ながら


「サザリィ、気にせず続きを」

「……っ! 失礼しました!」

 そう言って笑顔でキスをした。



『まーだかなー♪ まーだかなー♪』

 扉から響く歌声。

 クミルティアが扉の外で歌っているらしい。


 急用なのは伝わるのだが、とは言え既にサザリィで興奮しているので今更やめる訳にもいかない。

 

『まーだーかーーーなーーー♪』

 やっているうちに扉からの声が大きくなるので


「クミルティア。抱き合っている間だけ語るのを許可します」


「そんな、陛下」

「私は本当に夜を徹してあなたを愛するつもりです。夜は長い。少しは休憩もいれましょう」


「あん♡ 嬉しいです♡」


 ドアは開いていない。

 それなのにクミルティアは目の前に移動していた。


「陛下。いくつかの国がアラニアに反乱を起こしそうです。やはり公国廃止は飲めないようで」

「それはエウロバがなんとかする仕事でしょう。私に言われても」


「そうだー! 貧乳はでてけー!」

 サザリィはクミルティアを罵倒するが


「そうなのですが、陛下を担ぎ上げる動きがあります。出来れば後宮から出ないでください」

 祈りの部屋は元の宮殿にある。


 後宮はそのまま使わせてもらっていたのだが。


「分かりました。また私の体調が悪くなったと伝えてください。実際こうやっているのはそれが原因です」


 失われる意識。

 それとの闘争も辛くなってきた。


 だが、神からの指令によればリグルドの自意識が無いと事を為せない。


 例えなにを犠牲にしてでもやり切る。

 それはリグルドの頃からなにも変わらない。


「……話は終わりました。クミルティア出て行くように。サザリィ。また愛しあいましょう」

「はい♡♡♡ 陛下♡♡♡♡♡」


 また強く抱き合い、女の匂いを鼻いっぱいに嗅ぎながら

(しばらくは毎日するか)


 そう決めていた。

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