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ネルフラの光弾

 ネルフラはぐーぐー寝ていた。

 皇帝はいなくなった。

 エウロバもいなくなった。


 それではなにを為すべきか。

「ねむーい」

 ゴロゴロしている。


 リグルドとセックスしてからは起き上がるのも面倒になっていた。


「でもー。さすがにそろそろ動かないとー」

 グダグダしながら、ネルフラはゆっくりと起きたがり扉に向かう。


「っっっ!!! ネルフラが起き上がりました!」

 扉から響く声。

 兵士達が窓からネルフラを監視していたのだ。


 いつ暴れ出すか。

 様々な想定をして警戒していたのだが


「よーしー。やるぞー」

 ネルフラはゆっくりと両腕を伸ばす。


 そのまま

「うーん。角度はこうかなー? それじゃあやるぞー」


「なにか構えています! 光弾でしょうか!? ただ、構えは壁に向かっています!」


 遠距離会話装置という、魔法の装置に叫ぶ兵士。

 それはアラニア公国にいる将軍に伝えていたのだが。


「壁? 方角は?」

 将軍の確認。


 その報告を一緒に聞きいているエウロバだったが、突然顔を青ざめさせる。


「……ま、まさか。いや、想定はしていた。山を吹き飛ばすようなビッチだ。なんでもやってくる……」


 兵士からの報告が続く

『………方角は北北西!』


「ミルティア!!!! あのバカは光弾で国ごと打ち抜こうとしている!!!!!」


 エウロバの絶叫と共に


『能力は残ってないって言ってるでしょーーーーーー!!!!!!』

 聖女ミルティアの絶叫。


『光弾が発射されました!!! 壁をぶち抜きました!!!!!』


 北北西の方向。

 アラニア公国に向かって真っ直ぐに貫く光弾。


 その間にある地形、動物、人、建物。全てをなぎ倒して真っ直ぐ進む光弾。


 幸い光弾は小さいため被害は少ない。

 しかしその光弾は真っ直ぐにエウロバの元に目掛けて進んでいく。


「エウロバ様!!! 避難を!!!」

 将軍もすぐに気付くが


「無駄だ。大陸を真っ直ぐなぎ倒してこっちに向かってくるんだぞ? 多少避けた程度では無理だろう」

 魔法かなにかだとすれば、当然追尾能力もあるとエウロバは睨んでいた。


「下手に逃げて周りに損害が広がっても困る。なに、死ぬときは死ぬ。それぐらいの覚悟はしている」


 エウロバは立ち上がり、目の前を睨み付ける。

「あの程度のビッチに殺されるならば、帝国統一など初めから無理だったんだ。それだけの話よ」


 言い終わった瞬間

『ドガッッッ!!!』

 凄まじい音がして、壁を突き破りエウロバ目掛けて光弾が来る。

 しかし、その光弾は


「なっ!?」

 エウロバを守ろうと光弾の前に仁王立ちした将軍。


 その前で光は止まった。

 そしてその光は蠢きだし


『エウロバ、遊びましょうか?』

 光から声が響く。


 そしてその光が膨れ上がっていく。

 それは人型になる。しかし背中には翼が生えている。


「名乗れ。ネルフラかお前は?」

 エウロバの声に


『私の名か? 名前か。お前が付けろ』

 それにエウロバは苦笑いし


「そうか。なら今日からお前の名はサノバビッチだ。来いよ、サノバビッチ。アラニアの王にして、帝国の主にならんとするエウロバが相手になってやる」

 剣を構え、光の塊に斬りつけた。


 ネルフラは光弾を解き放った後にそのまま倒れ込んだ。

 目を見開いたまま、口も半開き。


 見張っていた兵士は慎重にネルフラの部屋に入る。


「……おい、お前……意識は無いのか?」

 兵士は城付きの女性を呼びネルフラをとりあえずベッドに戻そうとする。


 それでもあの光弾を放ったような女。

 警戒をし続けるがピクリともしない。


 瞬きもしないのだ。


「……まさか、死んだのか?」

 遠距離会話装置で、アラニア公国の将軍に伝えようとする。


「神都にいるラウバンドです。ネルフラは倒れ込みました。目が開きっぱなしです。まさかと思いますが、死んだ……」

 報告の途中に、装置から絶叫が響く。


『ネルフラをすぐに殺せ!!! 光弾が暴れている!!!』

 =====================


「下がれ! これは私の戦いだ!」

「エウロバ様! なりませぬ!!! 相手はなにを仕出かすか分からない化け物ですぞ!!!」


 エウロバが剣を抜いて光弾に斬りかかったが、なんの手応えもなくすり抜ける。


 そして人型になった光の塊は、光の矢を放つ。

 すぐに将軍が庇ったが


「殺せ!!! 本体を殺せ!!!」

 遠距離会話装置に絶叫する将軍。


「サノバビッチ。お前の目的が聞きたいな。私を殺してどうなる? なにを変えようとしている?」


 エウロバの問いかけに光の塊はプルプル震える。


『殺す? 殺さない。遊ぶだけ。お前など殺したところでなにも変わらない。遊んでやるだけだ』


「なにも変わらないか。言ってくれるな。私がいなくなれば帝国はもつかもしれんぞ?」

 その問いかけに、今度は大きく震える。


『リグルドはよくやった。もう帝国などなんの意味もない。滅ぼうが続こうが。既に全ては定まった。だから遊んでやる』


 そして光の塊は大きく膨れ上がり


『そう言えば、お前も一応形だけの信徒だったな。有り難くその目に焼き付けろ。特別大サービスだ』


 その言葉にエウロバは大きく目を見開く。

「……ま、まさか」

「エウロバ様!!! ラウバンドがネルフラを斬り殺し、姿はかき消えたと! この化け物も少し待てば消える筈です! 一旦離れて!」


 将軍が叫ぶが、エウロバは反応できず

「……お前が、神か」

 光の塊を見つめていた。



 =====================

 龍姫は乗り気では無かった。

 実際に龍姫は向いていない。


 教祖として新しい宗教を作り出す。

 人外の彼女ならばそれも可能だと思ったのだ。


 しかし実際は難しい。

 そうなれば次の策。


「私が教祖か」

 そうなる。

 しかしそうなればこの身体の取り合い。

 元々の皇帝の意識は完全に消え失せる。


 それにエウロバは納得などしまい。

 それでもそれ以外に方法はない。問題は

「意識を失わなくなる方法か」


 手探りのような話。


 しかしヒントはある。

 エウロバの匂いが濃厚についた服。

 あれはどう考えても抱きついてすりついた。


 意識が成人ならばそんなことはしないだろう。

 したとしたら性行為。だがそんな様子もなかった。


 リグルドの意識を共有していないと思うべき。とすればまだ幼児。


「幼児に性行為は耐えられないだろう。毎日して身体を慣れさせる」

 幸い側室は3人いる。

 日毎に回せば彼女たちの負担にもなるまい。


「リュハを呼んでください。彼女と今日は過ごします」



 =====================

「あーーーーーーーー!!!! もう!!! エウロバさんが!!! 余計なちょっかい出すから大騒ぎじゃーーーーん!!!!」

 聖女のいる宮殿。


 そのど真ん中で、聖女ミルティアは一人で騒いでいた。


「聖女様。うるさいです」

 聖女を世話する後宮の主ルピアが冷静に突っ込む。


「だってーーー!!!! 『神』が降りてきたんですよーーー!!! あいつ! 私が弱体化したのを待ってたでしょ!!!」


『神』が降りてきた。

 それに驚く宮殿の臣下達。


「神、とは。神教の神ですか?」

 臣下の問いかけに


「まあリグルドが新しい宗教作るでしょうから、『神教』と呼んでいいのか知りませんが。エウロバさんに挨拶に来たんでしょうね。帝国簒奪は認めてやる。その代わり従え。新しい統一国家はリグルドの起こす宗教を崇めろと」


 臣下達は絶句しているが


「あーーーー!!!! 力が残ってたら!!! 私も乗り込んで戦ってきたのにーーー!!! エウロバさんがわるいー!!! こんな大事な時に領土奪い返すとか画策すんなよーーー!!!!!」


「……まあ、こんな大事な時に領土奪おうと、うちらもしてましたからね……」

 臣下のマイセクローラの言葉を無視し


「こーなったら!!! リグルドの意識を引き剥がしてやる!!! 結局はリグルドという存在が旗頭になっているんです! あいつの意識を消滅させれば!!! 皆バラバラになる!!! エウロバさんも、リグルドの意識が無くなったエリスなら素直に受け入れるでしょう! 私はこれから全力でリグルドの意識をはがしにかかります! 緊急以外は呼びかけないように!!!」


 ミルティアは叫ぶと奥に消えた。


「……こんな大事な時に……?」

「まあ、これが一番大事という判断なのでしょうね。我々も祈りましょう」

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