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ハユリとリメイの解放

 側室3人と水浴び。

 基本的にこういう時は性行為もするものなのだが、この3人が掴み合いの喧嘩を始めたのでそのままあがった。


「陛下、姫様からお話が」

 身体を拭いているとすぐに龍族エールミケアが来る。


「ええ。すぐに向かいます」



 龍姫のいる部屋。

 彼女は憂鬱そうな顔をしている。


「陛下。リグルド様。ご報告とご相談があります」

「聞きましょう」

 内容は分かってはいる。


「先にご報告ですが、エウロバが兵士を引き連れ神都から出ました。恐らくネルフラ対策でしょう。陛下と重臣はこちらに逃げのび、エウロバが神都を放棄したことで、現状政治が止まっています」


「特に他の国の動きは無いのですね」

「ええ。反アラニア公国派のアンジ公国は、大将軍のヘレンモールを捕らえられたことで全く動けなくなりました。ヘレンモールはアンジ公国の後継者の父親。無事に帰ってくるまではなにも出来ません」


「そうでしょうね。とは言えすぐに帰る訳にもいかないのですが」


「それともう一つ。ネルフラです。彼女はまだ動かないようです」

 ネルフラの動きは本当に読めない。

 彼女の動きを見守るしかない。


「わかりました。報告は以上ですか?」

「ええ。ここからは相談です。信仰の話は既に聞いてはおります。ですが私は全く納得が言っていません」


 それはそうだろう。

 いきなり宗教の教祖になれと押し付けられて納得のいく人間などいない。


「これが最善です」

「陛下を、リグルド様を崇める形ではダメなのですか?」


 リグルドを崇める。それも考えてはいたのだが

「説得力が無いでしょう。100年前にいた、単なる幹部の一人です」


「私がどれだけリグルド様を慕っていたかは皆知っていることです」

 しかしそれだと

「いいですか、崇めるのは『神』であって、『龍姫』でも『リグルド』でもありません。あくまで必要なのは『教祖』です」


 それに龍姫は頬を膨らませ

「私はそんな柄ではありません」

 まあ、それは思う。


 龍姫はそういうタイプではない。

「不安なのは理解しますが」

「であればリグルド様にお願いしたいです」


 平行線。


「……すぐ決断してほしい話ではありません。また相談しましょう」

 それに頷く龍姫。


 それと

「私からも相談があります。ハユリとリメイを解き放ってください」


 それにまた龍姫の眉間の皺がよる。

「嫌です」


「怒っているのは分かりますし、匿ってくださった感謝はしますがやり過ぎです」


 龍姫が二人を凍り漬けにしたという話は聞いていた。

 二人が暴れたからとは聞いていたが、そもそも龍姫はこの『ハユリ』にキレていたのだ。


「責任が持てません」

「私ごと吹き飛ばす真似は流石にしないはずです」


 それでも不満そうな龍姫。


「リグルド様のお願いでも聞けることとそうでない事があります。あの連中の手を借りるのは無しです。私と龍族達がいれば問題ない筈です」


「……」

 龍姫と揉める。

 いや、無茶なお願いばかりしているから仕方ないのだが


「……そうですね。こちらから無茶なお願いばかりしていますからね。よく考えてからまたお願いします。ただ、少なくとも苦痛からは解き放って頂きたい」


「……畏まりました」




 龍姫の案内で地下牢に向かう。

 二人はここに閉じ込められているらしいが

「姫様」

 地下牢に響く声。


「チャズビリス、陛下の前よ」

 目の前にいる妖艶な女性。


「皆殺しのチャズビリス」と人間の時に恐れられた殺人鬼。


「姫様、陛下。いかようにも罰は受けます。しかし、姫様の想い出を汚した大罪は簡単に赦されて良いものではありません。これは龍族の誇りの問題です」

 チャズビリスは堂々と答える。


 誇りの問題か。

「それでも、私のために来た女性達に苦痛を味わいさせ続けることは認められません。氷漬けだけは解除頂きたい」

 姫様は頷き。


「チャズビリス、気持ちは伝わったわ。解除しなさい」

 途端に


『バリンッ!!!』

 音がして、奥から叫び声が響く


「身体がいたーーーーい!!!!」

「ふざけんなーーーーー!!!!」


 叫び声の方に向かう。ハユリとリメイがキレていたのだが

「館を破壊したそうですね。その罰だと思って我慢しなさい。それとこれからは絶対に勝手に暴れないように」


「あーーーーー!!! リグルドさまーーーー!!!!」

「ひどいめにあったんですよーーーーー!!!」


「話はゆっくり聞きます。ただ絶対に暴れないように」



 二人を連れて部屋に戻る。

「リグルドさまーーー!!! メイルの性格が悪くなっています!!! あんなに妹みたいに可愛かったのに!!!」

 ハユリの絶叫。


 やはりハユリの記憶はあるらしい。

 性格は別な気はするが、記憶は持っている。そんな解釈をしているのだが。

「リグルドさまーーー!!! こんな野蛮な館から脱出しましょう!!! なにされるか分からないですよーーー!!!」

 二人は私に抱きついて、上目遣いで訴えくる。

 その直後

『ガスッッッ!!!!!』

 凄まじい音と共に扉が飛んでくる。

 後ろを振り向くと、顔を真っ赤にした龍姫。


「やかましい!!! このゲロ娼婦共!!! 私の性格が悪くなったんじゃなくて!!! お前らの性格が悪いんじゃあああああああっっっ!!!!」

 龍姫の絶叫。


 龍姫にとって最高の侮辱が「娼婦」

 彼女は実際に娼婦に売り飛ばされそうになり、それから逃れるためにドラゴン狩りなどという、常識外れのキャラバンを率いる事になった。


 彼女にとっては「娼婦」とは「自分が敗れたらなった未来」であり、忌避すべき存在。

 だから怒りだすと、相手に「娼婦」と怒鳴る。


「うるさーーーーい!!! あんなに懐いて可愛かったのにーーー!!! あんたなんかもう要らない!!! でていきなさーーーい!!!」


「お前が出ていけ!!! ここは私の館だ!!!」

そのまま龍姫はハユリと掴み合う。


 龍姫はドラゴン。

 ドラゴンによって、身体を変えられた存在。その腕力は人間離れをしているのだが、ハユリはその龍姫と組み合っている。


「この腐れ娼婦!!! 思い出をこれ以上汚すな!!! わたしはな!!! 心からハユリさんを敬愛していたんだぞ!!! お前は偽物だ!!! ハユリさんはこんな事言わない!!!」


 まるで駄々っ子のように首を振り暴れる龍姫。


「うるさい! うるさい!!! あんたになにがわかるのよ!!! あんたはなんでも出来るんでしょ!!! 私はなにもできなかったのよ!!! やっとなんでも出来るようになったの!!! だからもう要らないの!!! それだけ!!!」


 ハユリの絶叫に龍姫の動きが止まる。

「あんたはなんでも出来る。私はなにもできない」

その言葉は、確かにハユリが思っていたような言葉。


 自身の無力さを嘆き、それでも立ち向かったハユリならそう思ってもおかしくない。


「……………」

 龍姫は少し深呼吸し

「もう要らないのじゃねーんじゃ!!!! わたしはお前の駒じゃねーーーー!!!!!」

 そのまま押し倒し顔面殴打。


 だが、ハユリもそのまま龍姫の顔を拳でぶん殴り

「やかましい!!! 姉として慕っていたなら!!! 姉にしたがえ!!!」

「したがえるか!!! ど阿呆!!! もう一回死ね!!!!!」


 また殴り合い。


龍族達も止めに来ない。

 人間の私が下手に手をだせば間違いなく吹き飛ぶであろう人外の喧嘩。


 それをただ見守っていた。

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