逃げ延びた皇帝
龍姫と合流した私達は龍族の館に匿われる事になった。
「陛下を迎えられるに相応しい部屋はなく申し訳無い限りです。また陛下以外の男性の方はご遠慮ください。この館に男性が長くいると闘争本能が増してしまいます」
龍族フェルラインが説明してくれる。
だから私もそんなに長居できない事にはなる。
だがとりあえずは龍族の館にいることにした。
理由は様々あるが、リグルドの意識が消え失せかけていることに対する策の一つ。
この龍族の館に満ちる「闘争本能強化」に賭けることにしたのだ。
最近になり一気に身体からリグルドの意識が抜ける事が増えてきたらしい。
恐らく理由は神の気まぐれというよりも、気概とかそっちな気がする。
ある程度道筋が出来て、安堵した途端にこれだ。
そう言った気概を取り戻すには闘争本能を強化した方がいい。
それも含めてすべて龍姫に相談して納得してもらった。
龍族の館には男性が泊まることは殆どない。
男性に取って龍族の館に満ちるエネルギーは強過ぎる。龍姫も最初は近くの別荘に多数の護衛を付けるという話をしていたのだ。
それが龍族の館に、側室達と住むことになった。
「旅をさせてしまい申し訳なかったですね」
「いえ! 楽しかったです!」
「はい! 陛下も大丈夫ですか? まずは水浴びを」
「私達も御一緒します」
3人の側室。
彼女達と、それを世話する侍女と教育係り。
エウロバが送り込んだサザリィとその教育係り。
聖女が送り込んだラウレスと教育係りも一緒に付いて来ている。
(スパイ行為も覚悟しなければな)
側室本人はともかく、教育係りはなんかしらの手段で主君と連絡を取ろうとするだろう。
それでも彼女達を連れてきた。
「ええ。まずは汗を流しますか」
3人の側室達と一緒に水浴び。
少しは仲良くなったと思ったのだが
「ラウレス、泥が酷いからちゃんと洗いなよ。みっともない」
リュハ。
「そんな汚ったない顔で言われてもねー。あんたもその顔ナイフで削って作り返れば?」
ラウレス。
「あ、すみません。田舎臭いんで口開かないでもらえませんかー???」
サザリィ。
全く仲良くなってなかった。
因みにラウレスに泥なんて付いていない。褐色肌のラウレスを侮辱しているのである。
「常に仲良くしろ、とは言わないが。なにも水浴び場で喧嘩しなくてもよかろう……」
私が呟くと
「そうですよねー♪ とりあえず陛下を綺麗にさせて頂きます!」
そう言ってサザリィが全裸で背中から抱きつく。
胸の感触にドキリとするが
「あーーー!!! ずるい! 私も!」
「陛下! 私達もします!」
3人の美少女に囲まれて、触られるのが嫌な訳がない。
されるがままにしていた。
その間に様々考える。
(神都に残してきたネルフラがなにをするかだ)
彼女の動向は私にも予想が付かない。
ただ、以前のネルフラであれば
「そろそろ暴れていると報が出ても良い頃だが」
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皇帝達が脱出した神都に残されたネルフラ。
しかしそれにも気付かずグーグー寝ていた。
「どうしましょうか?」
念の為ネルフラの部屋の入口で警戒する兵士達だったが
「ほっておけ。山を吹き飛ばす連中だ。近付いて殺されても困る。エリスが去った以上、私もここにいればなにをされるかも読めない。速やかにアラニアに戻る」
エウロバは部下たちをまとめて
「神都から去る。アラニアに戻る」
と宣言をした。
そして即日部下たちを引き連れ移動。
「エウロバ様。急すぎませんか?」
部下たちの進言に
「タチアナへの襲撃でミルティアはそちらにかかりきりだ。ミルティアの保護が見込めない以上、四神女からの攻撃に備えて本国に帰る話は納得されるだろう」
エウロバは薄く笑い
「神都は吹き飛ばしてもらう」




