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『神』の名

「メンタル雑魚女、コネだけの無能女、顔以外全部赤点、最後は単なるバカ。あの四人にかけられた陰口よ。神教の女信徒は口の悪いのが多くてね」


 龍姫は少し口を歪めながら喋る。

「……メンタル雑魚はハユリ、コネだけの無能はネルフラ。単なるバカはリライ。そうなると、顔以外全部赤点はアンリですか」


 ハユリはプレッシャーで何度も狂乱した。

 ネルフラは王族のコネだけで最高幹部になった。

 リライは何度も試験に落ちた。

 アンリは顔と立ち振る舞いだけで幹部になった。


 それが陰口の理由だが


「私はハユリさんを心から敬愛しているわ。だから贔屓目で話すけれど。そもそも神教の神女というのは、相当な役職なの。身体を壊すぐらい思い悩むのは相当な美徳よ。それをメンタルが雑魚とか言うなら、あんたがやれ」

 龍姫は吐き捨てた後に


「……まあ、そんな彼女をギリギリのこの状況で送り込むのはやっぱり変だわね。現にメンタルで動けなくなっていたのだから。残りはバカと無能よ。どうすればいいのよ、そんなの」


 ミルティアは龍姫の言葉と仕草に

「……先代に似ていますね、その口調と仕草」


「そうね。私達は似た者同士だった。敵ではあったけれど、シンパシーも感じていた。だから共闘もした。リグルド様とハユリさんに会っていなかったら、私は聖女と一緒に暴れまわっていたかもね」


 ミルティアは少し笑い

「なんか、仲良くしたかったらしいですよ。先代は」

「そうかもね。だって向こうからみたら私が勝手に怒っていただけで、元はなんの恨みもないでしょうし」


 龍姫は切なげな目をして

「リグルド様はなんというか分からない。でもなんとなく思うことはあるわ」

 それを聖女は引き継ぎ


「宗教の交代ですね」

「そうね。歴史書をひっくり返したわ。神教の前は女神信仰が主流だった。そして神教はその女神信仰の分派に近い」

 龍姫の解説にミルティアが引き継ぐ。


「その女神信仰は、妖精信仰からの分派。女神信仰はまだ娼婦などに信仰されていますが、妖精信仰はもはや何人いることやら」


「先代の聖女。彼女は多分だけれど『面倒くさい』という理由で、信仰の教えの殆どを神教の教義から引っ張ってきた。違うのは崇める対象と、同性愛の解釈ね。崇めるものが変わって『分派』と呼ぶのはおかしいけれど、それを言うならば女神信仰と神教も崇めるものが違う」


 それにミルティアは頷き

「そうですね。先代は仰るように『一から教義なんて作ってられない』と殆どを神教から引っ張ってきました。だからこそ、神教教徒は大量に鞍替えできたのです。これで教えが色々変わっていたら、いくら『祝福』という名前の奇跡があろうとも、一代で大陸全てが信仰をひっくり返るなんて出来るはずもありません」


 横で聞いているエールミケアが顔をひきつらせる。話の結論が見えてきたのだ。


「一つの宗教は300年が限界。だから神教も限界を迎え、もはや崩壊を無理矢理止めているような状況。その上で神様からリグルド様へ送られたメッセージ。そしてこの四神女。これらを総合的に考えれば」


「新しい宗教を起こして、今の神様を崇めさせろと?」

「分派でいいんじゃないかしらね? 崇める神様は変わらない」


 龍姫はミルティアに

「さて、問題。『神教』の『神』様のお名前はなんでしょうか?」

 突然のクイズ。


 それに戸惑うミルティア。


「一応言っておくけど、先代の聖女の記憶探っても、あいつ知らないと思うわよ」


「……そうですね。記憶にないです。私の知識では『神』という名前だと聞いていますが」


「違うわ。名前は『神』ではない。ちゃんとあるの。でも一般教義にはないわ。教説書にも載っていない。名を触れるのは禁忌だから載せていない」


 神の名はなにか? その問いに戸惑うミルティア。だが、その答えが重大な意味があるであろう事は伝わっている。


「昔、私の友人が大妖精に殺されたわ。大妖精、初代聖女も戦ったのよね。大妖精の一人サンドマンを撃退したと聞いたわ」


「……はい。そうですね。先代はドラゴンと戦い、大妖精とも戦いすべてに勝ちました……」


「今大妖精は7ついると聞く。伝承を探っていくと、突然その大妖精から名前が削られたものがいる」


 妖精。

「……ま、まさか。その『神』の名は?」


「『ヤンスィ』。大妖精を束ねる妖精神の恋人と呼ばれた大妖精の名前は『リャナンシー』名を伏せたのは、名前を連呼されると類似性に気付く人間が出るからじゃないかしらね」


「……前から不思議でした。神教はドラゴンを忌み嫌う。それは分かる。人を害する敵ですからね。なのに、妖精、大妖精に関しては殆どなんの記述もない。妖精、大妖精の方が明確に人の敵でしょう。それがない。つまり」


「そう言うことでしょうね。まあリグルド様なら気付いてそうだけれど。それで、リャナンシー信仰を続けさせればそれでいい。そういう話だと思うわ。そうなると色々繋がる」


 龍姫は口を曲げ

「まあ、気紛れで浮気性な妖精だったらしいわよ。最後は痴話喧嘩で妖精神と別れてるからね」

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