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側室に選んだ3人

 側室に選ぶのは3人。

 これに凄い人数が殺到した。


「陛下の側室だが、最初は3人しか選ばれないそうだ」

「その3人に選ばれれば確実に寵愛頂けるではないか」

 と帝国内の公国の王女が大量に申し込んできた。


 更には「うちから選んでも良いじゃないですか。別に敵ではないですし」

 と聖女からも申し込みが来た。


 そして「龍族というわけにはいきませんが、我が屋敷で育てた人間の女がおります。この娘は陛下と年も近くボディーガードとしても優秀です」


 と龍姫からも一人届けられた。


 その中から3人。

 まずは龍姫から届けられた一人を見てひっくり返りそうになった。


 ハユリ。

 まだリグルドだった頃に可愛がっていた少女。

 聖女と対抗するために「神女」として就任させたが、心労のため若くして亡くなった。


 龍姫を神教に導いたのはハユリ。そして私はハユリに性的な欲求を持っていたが我慢をしていた。と龍姫には伝えていた。


 だからだろうか、ハユリそっくりな容姿の少女。七年かけて育てたのだろうか?


 年齢は13歳。

 若干は年上だが子を産むことを考えると若いぐらいだ。


 名はリュハ。ハユリをひっくり返しただけの名。露骨すぎる。



 だがここまでされて断る理由もない。

 リュハを最初に選んだ。


 次に聖女の大陸からの一人。


「七年前の戦争で、グラドニアを支配しているオーディルビスとの仲は未だに深刻だ。向こうから側室を、と求めるならば関係改善としても、人質としても有効だろう」

 となり、聖女を信仰しているオーディルビス本国から一人選ぶことになった。


 女王タチアナには子はおらず、直系の王族もいない。

 だが、王家の血を引く遠縁の親戚ならおり王族として認められている。


 その一人娘を、という話になった。


 そして最後の一人は

「エウロバに選んで欲しいです」

「……そうか。そう言ってくれるならば助かる」


 今の帝国はエウロバが引っ張っている。

 私とは基本的には対立関係となる。


 私は帝国の皇帝。

 エウロバはそれを乗っ取ろうとするアラニアの公王。


 既に帝国の半分以上はアラニアに従っている。

 皇帝の立場は弱い。


 そんな皇帝を懸命に支えようとする勢力と、エウロバは対立関係にある。


 だが、私とエウロバの関係は悪くない。

 そもそもエウロバは、産まれたばかりの赤子の時から私を可愛がっていたのだ。


「私の目的は、この歪な公国制度だ。それを解決して、真の平和をもたらすことが目的だ」

 エウロバは常にそう言っている。


 私もそれに特に反対するものではない。

 問題なのは『神』の意思。


(……エウロバとアラニア公国は神教信仰がおざなりだ。エウロバは聖女と仲がいいし、アラニア国の国民は殆どが聖女信仰。アラニアが支配すれば、神教は一気に廃れる)


 このままではそうなる。

 現状ではアラニアが帝国を支配するのは規定事項に近い。


 それをひっくり返すために私が遣わされた。

 そこまでは分かるのだが。

(……帝国は瓦解してもいい。信仰を守れ、というのが『神』の声だ)


 定期的に雪崩れ込むあの夢。


 記憶が蘇ってからの七年で心の底から思い知ったこと。

 もうこの帝国は限界だ。


 例え私が立て直しても、次か、その次で瓦解する。特に「帝国は公国の連合体で、帝国本国は辺境の小国に過ぎない」のはデタラメにも程がある。


 よくここまでもったものだという感想しかない。


 だから私としては帝国の乗っ取りや崩壊はやむを得ないと思っている。

 その中で如何にこの信仰を守りきるかだ。


 帝国の庇護を無くした神教がどうなるか?

 恐らく帝国建国前の、一地方宗教に成り下がる。


「子の問題は理解している。急ぐことはしないが、しっかり事は為そう」



 そして集められた3人。

 これがもう、なんというか酷かった。


「バーーーーーカ。早く死ねよ、お前ら」

「はあ? 肌黒。ブス。田舎の島にとっとと帰れや」

「アハハハハハハ。ほんとーーーに、蛮族っていやですねーーー。陛下、はやく遷都して、都会にいきましょーよーーー。南なんて暑くて、臭くてだめですよーーー」


 まず最初にバカと言った女。

 オーディルビス王国の王族。ラウレス。


 オーディルビス王国は、地域柄浅黒い肌をしている。

 初めて会ったときは、健康的な美少女だと思った。のだが、口を開けば罵倒ばかり。


 オーディルビス王国は帝国全体と戦って互角の戦をしていたのだ。


 だからなのかラウレスも相当誇り高く、私に媚びたりはしない。

 まあ別にそれはそれでいいのだが、その口の悪さで私をなじると、他二人がたたみかけるようにラウレスを罵倒する。



 肌黒、ブスと罵倒していたのはリュハ。

 ハユリそっくりの見た目だが、あの貞淑で天然な感じは全くない。


 とにかく自分の美貌と知能を誇りとしており、家柄を誇るラウレスとの相性は最悪。



 そして「はやく遷都しましょうよ」と言っているのは、エウロバが選んだ女。


 彼女は親アラニア公国の中でもっとも私に相応しいという女を選んできた。


 それが、ハリネス王国の王女サザリィ。

 リュハは、龍姫が引き取って育てたがあくまで人間なのに対して、サザリィは龍族の血を引いている。


 曽祖母は龍族のレインメル。

 そんな彼女なのだが、とにかくお洒落。


 帝国本国のある南方は基本的には文化が遅れており、ファッションセンスや食べ物も北方が優れていた。


 そんなサザリィは、こっちに来るなり

「田舎ですねーーー。遷都しませんか? 私、こんな臭い土地に住みたくないです」

 というとんでもない問題発言をして、エウロバがブチ切れていた。


 とにかくこっちを田舎だとバカにする。

 幸いなのかは知らないが、私にはそれなりに敬意を払ってくれていて

「こんな田舎から引っ越しましょーよー」と誘ってくるぐらいである。



 そんな個性の強すぎる3人。

 とにかく連日会う度に喧嘩をしていた。


 あまりにもやかましいし、普通に殴り合ったりもするので、もう部屋を離して、侍女達に世話をさせることにした。


 なのだが、この3人を側室に入れて30日。

 僅か30日で


『お暇願い』

 側室の3人の世話をお願いした侍女15人が一斉にこれを出してきた。


 エウロバは口をパクパクさせながら呆然としている。

 侍女というのは立場が弱い。


 基本的にはなにをされようが、自分から辞めるなんてしないし出来ない。

 それが、こんなものを出してくるなど前代未聞。


 なのだが、その侍女達は顔が腫れているわ、色んな場所を怪我しているわで、とてもまともな状態には見えない。


「……あの3人は、そんなに酷いか」

 私の言葉に

『はい』

 全員が一斉に答える。


「……その、暴力を振るうのか……?」

 エウロバは恐る恐る聞く。

 見た目で痣があるのだからそうだと思うのだが


「主に暴力を振るうのはラウレス様です。気に入らないことがあると『馬鹿にしているのか?』とすぐに殴ったり蹴ったりします」

「それでも、ラウレス様のような方は他の貴族でもいます。問題なのは残り二人なのです」


 暴力を振るうのはラウレス。

 だが、それはマシだと言う。


「リュハ様は、嫌みがキツいです。『そんなことも出来ないの?』『陛下の正妻候補にこんなことしていいと思っているの?』と。とにかく知能が高く、ありとあらゆる事を憶えていて、常に嫌みを言ってくるのです。聞き流そうとすると怒鳴ります。マトモに答えられないと泣くまで許しません」

 聞いてて胸が痛い。


「最後のサザリィ様は、徹底的にこの南方を馬鹿にしてきます。住んでいる我々の事も完全に見下しています。もちろん、王族や貴族の方が我々を見下すのは自然なことです。それはいいのです。ですが、この街で育った我々の祖先含めて全てバカにしているのです。そして服装や動作全てにダメ出しをしてきます。こちらも無視をすると怒鳴ります。そして『こんなド田舎で申し訳ありません』と言うまでゆるしません」


 酷すぎる。

 エウロバも頭を抱えていた。


「……サザリィは、私が教育するが。残り二人はどうしたら……」

 エウロバの独り言に


「現状はよく分かった。あまりにも酷すぎる。明日からだが、料理は個別に持って行かなくていい。大広間で私と共に食べる。清掃はその間にしてもらう。要は一切会わなくていい」


 侍女達はホッとした顔をする。


「すれ違っても無視していい。彼女達にもそう伝える。なにか言われたら皇帝命令だと言え」

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