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訪れる聖女ミルティア

 聖女ミルティアがエールミケアに遠距離会話装置で押し問答をしていた少し前の時間。


 聖女が龍族の館に行く。

 それは真っ先に身内から止められていた。

「龍族を舐めてはなりません。龍姫一人でも脅威。ましてやその本拠地に乗り込むなど」

「友好的な話し合いならばともかく、そうでないのは奴らなら当然察知しているはずです」


 反対意見が沢山出される。

 それにミルティアは頷き


「あなた方の意見は全て正しい。この件に関しては私の判断が間違っている」

 それに安堵の顔をする臣下。


 だが

「それでもなお、せねばなりません。私の予想では残念ながら交渉は決裂し、龍姫と戦う時がくる。それもすぐそばに。その際、龍族はエウロバ率いるアラニア公国が引き受け、私は龍姫と戦う。ここで問題がある。あの『四神女』を名乗るビッチ共。特にハユリ。彼女は聖女を憎んでいる。どんな事を為しても必ずや私を殺しにくる。今は龍姫の怒りにふれ幽閉されているようですが、戦争となれば解き放つでしょう。そうなると流石に私も厳しい。だから、龍姫がハユリに怒り狂っているこの時期にあいつを殺さねばなりません」


 それに臣下達は黙る。

 いずれ龍姫と戦う。その重み。


「私の中では既に腹は決まっている。龍姫、龍族。彼女達は強力ですが、敵わない相手ではない。龍姫は既に精神が老いてきている。初代聖女もそうでした。元は人間。肉体は若々しかろうと、精神は老いるのです。龍族も、聖龍大戦で名を馳せたカレンバレーもマディアクリアもいない。世代交代は進み、戦争経験のある龍族は少ない。皆も覚悟しなさい。覚悟しなければ、死を覚悟しなければ開けない道はあるのよ」


 聖女ミルティアはゆっくりと立ち上がり

「もしこの身体が殺されれば、次の転生体は決めています。葬儀もなにも要らない。すぐに新体制で動きます。その覚悟と準備だけするように」


 ミルティアは皆を見ながら

「これは戦の始まり。覚悟なさい。我々は今度こそ、この世界を支配する」



 交渉の結果、ミルティアは決められた時間に龍族の館についた。


「ようこそー」

 龍族のリーダー、エールミケアが転移先で待っておりミルティアを案内する。


「リーダー自らがお出迎えとは」

「リーダーと言ってもー、お飾りですしー」

 エールミケアはいつもと変わらないような態度を崩さない。


 目の前には龍族の館。

 指定された転移先は館の内部では無かった。


 相当な警戒はされている。

 ミルティアは如何に龍族を出し抜くかを考えていると


「……だれです? あのヤバそうな人?」

 入口に血塗れの姿で待ち構えている妖艶な女性。


「チャズビリスです」

 チャズビリス。その名前に顔が引きつるミルティア。


「……ルピアの病を癒やしてくれた方ですね」

「ええ。拷問の達人。そして、今ハユリとリライは彼女が氷漬けにしています。ですので彼女が案内するために上がってもらいました」


「ようこそ、聖女。地下牢は私の城。私が案内するわ」

 ミルティアは特になにも言わずに頷いた。



 龍姫も、フェルラインも出てこない。

 館から避難している恐れもあるが

(それはないな)


 龍姫はそんな性格ではないとミルティアは思っていた。

 ミルティアが戦を覚悟しているように、龍姫も当然覚悟していると思っている。


 そうなれば敵の動向は間近で確認をするはず。

 ミルティアはそう予想しながら案内された通りにチャズビリスに着いていく。


「皆殺しのチャズビリス。昔、資料で見かけました。人間の時に100人単位で殺しまわったそうで」


「寒かったの。姫様が熱をくださるまでは寒くてね」

 繋がらない会話。


 後ろから着いてきているエールミケアも、案内が変わってからは口を開かない。


 そして地下牢。

 氷漬けにされた二人。


(……相当怒ってるな)

 龍姫が四神女として降りて来たハユリとリライに怒り狂っているのは把握していた。


 だが、この氷漬けを見るとその怒りが具体的に伝わってくる。


 ハユリもリライも氷漬けで死んでいるわけでも、眠っているわけでもない。

 意識はあるのだ。目はこちらを向いている。


 そして苦痛に顔を歪めている。

 超常の力で氷漬けにされても死なない。

 死なないからこそ、苦痛は受け続ける。


(……これが続くならば確かに放置していても良いけれど)


 だが、戦になればどうなるか?

 ミルティアの予想では五分。


 氷漬けの前で立っているミルティアに


「戦は覚悟しているけれど、このハユリさんを使うことはないわ」

 地下牢に響く声。


 龍姫。


「どうも。お邪魔しています」

「別に殺させてもいいわよ。私の中では思い出を汚した汚物でしかない」


 龍姫の怒り。

 ミルティアはその報告の中で


「どうも龍姫は、ハユリの転生を聞いて喜んで会いに行ったそうです。そこで『お前はもう用無しだ』と言われたらしく」


 四神女として降臨したハユリ。

 彼女は龍姫に

「もうあなたの仕事は終わった。リグルド様は私達が守る」と伝えた。


 ハユリを姉として慕い、死んでからもハユリを常に追悼していた龍姫からみれば、その発言は余りにも受け入れ難いもの。自らの闘争と敬愛を踏みにじられた。


「……意味が分かりませんね。あなたをそこまで怒らせるような存在を、何故『神教』の神様は送り込んだのでしょうか? 普通にあの力を振るう、コントロールしやすい人格のものを選べばいいのに」


 それが分からない。

 その問いかけに


「『神の意志を安易に探るべきではない』リグルド様の口癖よ。だから私には答えられないわね」

 龍姫の台詞に頷く。

 まあ、そう答えるだろうな。

 そんな予想だったが


「あなたは初代聖女の記憶を持っている。その記憶探って思わなかった? 『適当すぎでしょ』とか」

 龍姫の言葉に苦笑いをするミルティア。


 ミルティアが聖女を受け継いだ時に、初代聖女の記憶は全て継承された。

 それを記録に残して読み返したのだが


「気まぐれすぎでしょ」

 だった。


 そのまま龍姫は続け

「でもそれで良かったのよ。十分統治は出来ていた。100年経って限界を迎えたけれど、それでもなお精神は若々しかったわ。あなたへの継承は賭けだった。そんな賭けが出来る程度には若かった」


 突然初代聖女の話を始めた龍姫の話に黙って聞くミルティア。


「多分、『神様』も外から見たらそう見えるんでしょうね」


 そう見える。

 突然会話が飛んだかのような言葉。


 だがミルティアには龍姫の言いたいことが伝わった。


「賭け、ですか」

「従順な超能力使いを送りこむならば、初代聖女の時にやっているはずよ。でもそんな奇跡は起きなかった。リグルド様とハユリさんのような、なんの能力もない人間の努力で防衛に成功した」


 龍姫はゆっくりと姿を表し、氷漬けのハユリのそばに来る。


「四神女として来た四人はいずれも殉教者。ただ、他にも神教で有名な女性の殉教者はいる。この四人の共通点は『リグルド様にお仕えした』一点。私は神様の意志など探らない。ただ、この四神女を見て思ったことは」


 龍姫はミルティアを見て

「よりによってこの四人とか、適当すぎでしょ」

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