ネルフラの幻視
「セッ〇スしたいです!」
ネルフラは笑顔で叫ぶ。
「……アンリが取り憑いているんですか?」
口調といい、ネルフラの言う台詞ではない。
ネルフラは誇りを持って「生涯未婚。純潔」を誓っていた。
王族であるが故にそういうものにはうるさかったのだ。
ネルフラが孤立した理由の一つが
「潔癖」だ。
神教幹部は潔癖であるべき。
それなのに幹部の腐敗は目を覆うのような状態だった。
私が実質No.2になったときには、神教は崩壊寸前。
そのための引き締めとして秩序の徹底を何度も申し入れ段階的に良くはなっていた。
そんな中、ネルフラは形式主義で
「あれも違反。これも違反」としっかり教義を守ろうとしている人達にも文句をつける。
特に性に関しては厳密で、男女の接触すら目くじらをたてた。
リグルドもネルフラと話をするときには必ず距離を空けて話をしていた。
そんな女が「セッ〇スしたい」
「あんなセッ〇スしか脳がないバカ女と一緒にしないでください。私は生前とても苦悩していたのです。生涯未婚で性行為もしない。でも一度は子を授かる喜びも味わってみたい。そういう葛藤は当然ありました」
まあ、それは分かるが
「リグルド様があんなデブでおっさんで無ければ多分迫ってたと思うんですよ。今の美形ならきっちりばっちりオッケー」
やっぱりアンリが取り憑いている気もする。
「……そんな性格ではなかったと思いますが」
「念のため言っておきますが、私の無念の話をしただけで、私はアンリみたいに『セッ〇スできたのでさようならー』みたいなことをするつもりはありません。私はリグルド様のお手伝いをしたいのです。あの時病に倒れたことは無念でした。今度こそは、しっかり役目を果たしたいと思っています」
役目。
「お手伝いと言いますが、なにをするつもりですか?」
なにをするつもりか。
恐らくなにも考えていない気もするが
「そうですねー」
ネルフラは少し悩んだ後に
「とりあえず敵は皆殺し?」
まあ、そこはネルフラらしいが。
考えが極端だったからな。
「そんな簡単に殺せませんし、殺したところで物事は簡単にいきません」
「でも殺した方がいい相手もいるのでは???」
殺した方がいい相手。
「話し合いで解決するなら良いのですが、最後は当然そういうことになりますね」
生き死にをかけた戦い。
それも覚悟はしている。
ただ、問題は
「そこまで思っているならば耐えなさい。恐らく出番はかなり後です」
「わかりましたー。待ってますからセックスしましょー!」
嬉しそうにするネルフラ。
そのまま私の腕を掴む。
その瞬間
『……リグルド様、近いです……』
かつてのネルフラの姿。
また幻視。
それも晩年。死ぬ直前でやつれた時のネルフラ。
「このままでは役目は果たせない。あなたはここにいるべきではない」
リグルドの姿。
冷徹に、突き放すように話をしている。
『……申し訳ありません。病が治れば……』
そのままリグルドは肌を掴む。
それに
『きゃっ!!!』
悲鳴をあげるネルフラ。
「病が治る見込みはない。あなたには別の任務を与えます」
『……別の、にんむ?』
「ええ。あなたの家柄に相応しい任務です」
幻視だからか、場所がすぐに変わる。
地下牢。
そこに鎖で繋がれ、王族のドレスの着せられたネルフラが喘いでいた。
時間はどれぐらいたったのか。
幻視は終わった。
目の前には股間を広げ、倒れているネルフラ。
いつの間にこれをやったのか。
幻視の内容とあってもいないと思う。
「……き♡ きもちいい♡♡♡」
ネルフラは幸せそうに微笑んでいた。
アンリと違いネルフラは消え去らなかった。
「またしてください!」
そうハシャいではいるが
「……アンリは分かりやすかったが、ネルフラはなにがしたいんだ」




