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帝国の行く末の相談

「率直に言えば、もう戦乱は近い」

 神都に戻ってきて、まず最初に言われた言葉。


 エウロバは淡々と話す。

「……限界ですか」

「腹芸をする気もない。私の部下はいつでもやる気だ。そちらの部下も限界だろう。このままの状態ならば戦になる。私の拘束か、私が兵を率いて戦争を起こすか。そうなる前に話し合いをしよう」


 話し合い。

「そうですね。後見人の問題がありますからね」


 私が10の誕生日にエウロバを後見人から外すのか、どうなのか。

 下手をすれば戦争となる。


 しかし、ここを無理矢理話し合いで回避したところで、いつまた戦争になるかは分からない。


 いや、もう限界なんだろう。


「重臣を全員集めろ。この帝国の行く末を決める会議をする」



 10の誕生日まで残り20日。

 アラニア派を除いた帝国本国の重臣達が勢揃いしていた。

「帝国の前例に乗っ取れば、後見人は10で降りる。だが、アラニアの後見が無くなった状態で帝国本国は立ちゆかないのが現状だろう。率直に言えば、大陸を割った戦争になるのは不可避だ」


 私がここまで言うことに皆が驚く。

「しかし、ここで後見人を降ろさなかったとしても、いつかは当然降りる。同じことだ。そうなれば選択肢は2つしかない。アラニアと別れ大陸を割る戦争をするか、アラニアの支援の元帝国を続けるか。その場合はアラニアから推薦されたサザリィを10の誕生日に婚約者にたてる。そして、エウロバは丞相だ。サザリィの子は実質的なアラニアの子となろう。首都も変わるであろう。それぐらいの事が起きると思え」


 それに皆は沈鬱な顔をする。

「それではならぬ。我らはアラニアに屈せぬ! とするならば、帝国を割る戦争だ。エウロバを追放しアラニアと戦争を行う。その結果、民は大勢死に、大陸は二つに別れよう」


「……陛下、率直なご意見。この身に染みております。アラニアに降るか、争うか。本来は臣下が陛下に伝えるべきことです。我らの怠惰は万死に値します」

 現丞相のアヴァライドが喋る。


「ハッキリ言うが、今アラニアと戦えば大陸の半分も守ることは出来ないと思う。下手をすれば帝国本国は滅ぶ。その覚悟をもって戦え、と決意しているならば従おう。いや、それは無理だ。というならば、屈辱を承知でアラニアに従おう。ただ、そうなれば公国の殆どは無くなると思え。どちらにせよなにかは失う。このままでいればどうにかなるとは思うな」


 私の言葉に皆は俯く。


「決断出来ぬのならば、一旦サザリィを正妻に立てる。そしてエウロバを丞相に次ぐ地位の高相に上げる。その上で今までと変わらぬ体制で政治を行う。そうすれば戦争も服従も避けられる。だがな、それは一時しのぎに過ぎない。ある意味一番の愚策だな」


 私は皆を見る。

「もう秘密もなにもあるまい。ここに至ってはどのような発言をしようと全て私が責任を負う。例えエウロバに知られたところで、それに対する責任は絶対に問われぬようにする。率直な意見を述べろ」


 それに真っ先に手を上げたのが、以前に「エウロバを拘束せよ」と言ってきたザンダガベル。


「陛下! 陛下の神的な威光は帝国全てに輝いております! エウロバの才覚は確かに認めますが! この神的な威光を持つ陛下が敢えて服従する必要がありましょうか!!! ありとあらゆる手段を使い、我らはアラニアと対抗すべきです!!!」

 ザンダガベルの叫び。

 私は皆の顔を見るが


「ザンガベルの決意はよく分かった。皆はどうだ?」


 だが、皆はすぐに続こうとしない。

 かなり悩んでいる。


「……ザンガベル。これが現状だ」

「……へいか……」

 ザンガベルは憤怒の表情を浮かべている。

 自身の叫びに同調者がいない。


「ここで、いっそアラニアに服従することを勧めてくるぐらいならば話は早いのだが」

 皆「このままでいたらどうにかならないか?」という甘さが伝わってくる。


 今の皇帝はまだ10になる前。

 それなのにここまでの政治を行っている。

 これが続けば帝国は立ち直れる。


 そんな甘い見込み。


「ザンガベルのような死を覚悟するような提案がなければ、この帝国は持たない。現状このままでは帝国は瓦解する。その覚悟と決意を持て。ザンガベル。アヴァライドに代わって丞相に付け。そしてサザリィを正妻候補の婚約者にたて、エウロバを高相。そして軍権も与えろ」


 軍権。それに皆は驚き顔を上げるが

「それぐらいやらぬと収まらんのだ。今の状況をよく認識しろ」



 エウロバとの話し合い。

「サザリィを正妻としての婚約者に立てます。そしてエウロバは高相として、また軍権も与えますからその役職も自身で決めてください」


 それに驚くエウロバ。

「……あいつら、それで納得したのか?」

「代わりに丞相はザンガベルです」


「……そうか、ギリギリの折衷案か」

「後見人からは降りますから身の安全の問題があった。軍権を与えますから、その解決をしてください」


「……しかし、お主なら分かるはずだ。それで一時しのぎをしたところで……」

 そう。そんなことをしたところでいずれは……


「15で状況が変わらなければ、公国を全て解散させます」


「……ほ、本気か!? 出来るのか!?」

 出来るのか、か。

「帝国本国は無くなるでしょうね。ですが、このまま帝国が続くわけもない。どこかで、誰かが決断せねばならない」


「……そこまで話をしてくれるならば、軍は責任を持って止めよう」

「しかしエウロバ。この五年が平穏に進むとは夢にも思いません。いつ、どうなるか分からない五年。緊張感はお互い常に持っていましょう」


「ああ、分かった。とりあえずサザリィを頼んだ」



 重臣達との話し合い、エウロバとの話し合い。

「結局、先延ばししかなかったな」

 まだ三勢力のどこにつくと決断していない。


 だがこのままでは帝国本国か、アラニアが暴発する恐れがあった。

 それを一旦留める。


 その上で、決断をしたら一気に動く。


「リュハを呼べ。今日はリュハと過ごす」

 一旦サザリィを婚約者にするが、まだ正式な正妻にはしない。

 正妻は15の時に決めるものだ。その時までに婚約者が変わる事があるのは普通。


 まだ私の中では龍姫について突破するという選択肢が一番乗りやすい。


 侍女達が呼びに行くと

「へいかーーー!!! 今日こそ大丈夫ですから!!!」

 騒ぎながらリュハが走ってきた。

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