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龍姫との再会

 エウロバと共に龍姫の元に行った。

 そこでの歓迎というか、なんというか。


 既にエウロバが遠距離会話装置で伝えていたのだ。

 皇帝にリグルドの記憶が宿っているようだ。確かめて欲しいと。


 龍姫は館の入口で龍族達と出迎えてくれた。

 基本的にはそんなことはしない。

 私を迎える時にだけそうしてくれていたのだが。


「久しいですね。まずは昔話でもしますか? メイル」

「……私にはもう分かります……リグルドさま……間違いなく、リグルド様です……」

 龍姫は泣いていた。


「……また、お会いできる僥倖……言葉に出来ませぬ。ただ神に感謝しております」


 龍姫はすぐに私を認めた。


 そしてその先の話。

 帝国をどうするか?


「極論から言えば! 別に私が皇帝にならなくてもいい! この公国制度が問題なのだ! 公国廃止をするならば、喜んで従おう!」

 エウロバは机を叩いて興奮していた。


 龍姫は「リグルド様が宿った皇帝ならば、私は全面的に帝国擁護に向かう」と宣言したのだ。


「私としても帝国の瓦解が問題であって、公国廃止は飲める話です。問題なのは、公国がそれに従うか。私としては帝国維持が最重要。皇帝選挙を行い、そこで選んだ王に全権を委ねる。そう言ったことなら飲めます」


「リグルド様、そのような妥協は不要です。リグルド様が正しいのです。帝国は現状を維持すればいい」


「リグルドじゃねぇ!!! こいつはエリスって言ってんだろうが!!!」


 エウロバと龍姫がヒートアップしている。

 身体のエリスはエウロバを応援していて、心のリグルドは龍姫を応援している。


 我ながら混乱する。


「エウロバ、静まりなさい。ここは龍姫様の館。誰であろうと、龍姫様に不敬をすれば滅ぼします」


 側にいる龍族、フェルラインが冷静な声で止めるが


「……正直、私も混乱している状況です。今ここで全てを決めるべきではない。ですがこれだけは伝えておきます。私は神の意思によりまたこの地におりた。だが、私にとって神の意思とは努力そのものの事です。リグルドの時は一度たりとも神の言葉など聞いたことがなかった。今もそうです。これこそが神の意志なのでしょう。エウロバ、龍姫。私は最善の努力をするのみです。それに対して変に擁護する必要はない」


 私の言葉に龍姫は凄い目で見ている。


 尊敬とかそういう感じなんだろうが。


「……つまり、特に迎合するな。ということだな」

 龍姫を見ながらつまらなそうに言うエウロバ。


「ええ。ですが現段階の帝国内の戦争は認めない。これだけは止めてもらいます。この大陸内にある帝国外の国、アディグルやオーディルビスの属国であるグラドニアは認めます。それ以外は認めない」

 このタイミングで無理矢理記憶が呼び起こされた意味。

 それはこの帝国内の戦争だ。


 神教同士の国の争いはマズい。まだ幼帝だ。間違いなく混乱するし、神教の信仰心は失われる。


「……いいだろう。そこは飲める」

 エウロバはあっさりと頷いた。

 アラニアは強国だが、一気に全ての国を滅ぼせるわけでもない。


 順番に攻めればいい。そんな感じなのだろう。



 それが最初の記憶だった。


 それから七年。

 リグルドの記憶は薄まらず、そのまま保持をしていた。


 否、薄まりそうになったらあの夢を見るのだ。

「忘れるな」

 神はそれだけを伝えられる。


 皇帝としての生活は慣れてきた。

 リグルドの時の生活と大して変わらない気もする。


 人と会い、物事の決裁をする。

 皇帝の権限は本来絶対的なものだが、今はエウロバが後ろにいる。


 エウロバとの調整をしながら決めていたのだが、そこの混乱は言うほどはない。

 私とエウロバにはそこまで目指すものに齟齬はなかったのだ。


 エウロバは公国を廃止して帝国を一つにするということを目指している。


 私もそこに異論はない。

 今の帝国の制度は限界で、これ以上の先延ばしは破綻しか産まない。


 公国制度の廃止はいずれはたどり着く話だ。

 問題なのは誰が新しい、統一された帝国の主となるべきか。


 今の帝国本国は領土は小さく、位置も南方の片隅と、立地条件も良くない。


 過去には大陸中央部の『識都』を直轄地としていたが、やはり運用に無理がありそれもなくなっている。


(……当然、アラニアだろうな)

 今帝国でもっとも有力な国はアラニア公国。

 既に半分の公国がアラニアの意向に従っている。


 このままでは帝国はアラニアに乗っ取られる。

 そうなれば神教の勢力は弱まる。

 エウロバは名目上は神教信仰でも、聖女と親しいし、アラニアの国民の殆どは聖女信仰。


 だから私との相違というのは

「帝国は一つになるべき。だが、その盟主が問題」なところ。


 だが、その勢力争いは細かい決裁などでは現れない。表向きは平穏に政治が進んでいた。


「陛下の治世は順調に進んでおります。今は後見人が必要なのも理解しますが、年齢で後見人の有無を決めるべきではないでしょうか?」


 8歳の時に臣下から話をされた。

 エウロバは後見人として私の執務の補佐、実際は監視しているのだ。


 基本的に後見人は10で外れる。


「今の体制が順調ならば敢えて外す理由もないだろう。だが歴代皇帝は10で後見人の有無を決めていた。その時に決めるのは悪くないな」



 そんな10歳になろうとしたとき、大きな問題に直面していた。


「陛下、10になられますからには、まずは側室を集められてください。そしてそこから正妻を決めましょう。先帝の例もあります。とにかく多くの女を集めますので」


 臣下からの言葉。

 まだ10歳になってもない身体。

 未熟な身体だが、皇帝として妾を作り始める年齢ではあるのだ。


 リグルドの時は一度も女を抱かなかった。

 だから女性とするのは初体験となる。


(……興味はあるが)

 また、10の誕生日を前に精通を迎えたのだ。

 これは「はやくやれ」との事だろう。


 この精通には臣下や王族が驚喜していた。

「今度こそ跡継ぎに困らない皇帝ができる!」と


 そんな側室募集なのだが、これが大揉めに揉めた。


「まだ早い!!!!!」

 絶叫して怒るエウロバ。


 エウロバの反対は「皇帝の子が産まれるのは困る」と解釈されていたが、実際はそうではなく


「若すぎる性交は不完全な子に繋がる!!! せめて13まで待て!!! 長子が不具の子だったらどうするつもりだ!? また、陛下への負担も大きすぎる!!! 抱かせるならばまずは一人にしろ!!! 何人も相手にする年齢ではないぞ!!!」


 当たり前の話をしているだけである。


 私としてもいきなり沢山の女に囲まれても困るだけなので。


「先帝に倣うのは良い。だがエウロバの言うとおりだ。いきなり女性を集められても困る。何事にも慣れがあるだろう。せめて3人だ」

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