アンリの視点
【アンリ視点】
リグルド様。
初めてお会いした時の事はよく憶えている。
なんか周りに担ぎ上げられたのは理解していた。
それは周りの都合とか、そういうもので私には関係ない。
昔から私は人に担ぎ上げられやすかった。
今回もそうだろう。
そんな冷めた目で見ていたし、自分がなにになったのかも知ろうともしなかった。
だから初めてお会いしたリグルド様が言われた
「若くしてアル・セネリ・コールビアに就任とは素晴らしいですね」
ニコニコしながら語りかけた内容に
「なんですか? それ?」
と返した時の顔。
戸惑いとかではなかった。
多分あれだけで私の本質を見抜かれたのだと思う。
その後にリグルド様に引き取られたのはすぐだった。
アル・セネリ・コールビアという幹部の地位。
それに見合う振る舞いや教義解説など出来るわけもない。
そんなの推薦したやつの責任だろう。
そんなつもりで適当にやっていたら、ボロが出る前に引き取られた。
そんなリグルド様は
「あなたを戦場に送り込みます」
最初、こいつなに言ってんだ。ぐらいの感想だった。
現在内乱があり、治安悪化により幹部が誰もいなくなった国。
そこに私を送り込む。
流石に顔が青ざめた。
こいつ、私を殺す気かと。
ところが、その地域にリグルド様も一緒に来たのだ。
周りは一斉に止めた。
あなたが死んだらどうするんだ? と。
それにリグルド様は堂々と
「そこに信徒がいるのです。生き死にの問題ではありません。行かねばならないのです」
そして、私と二人きりで馬車に乗り徹底的に神教の教えを伝えてきた。
マトモに教義なんて見たことはない。
適当にしていれば周りが勝手に勘違いしてくれていた。
ところがリグルド様は私がなにも知らないという前提で、一から丁寧に教えてくれた。
そして徹底して
「信徒がそこにいる。であれば死の危険があっても激励しないといけない。それが幹部の使命だ」
それを伝えられた。
なぜ私みたいなのが幹部になったのか?
それは、この戦場で人を救うため。
その事を教えられた時の衝撃はすごかった。
泣いていた。
ああ、私の生きている意味がようやく分かった。
この人に教えられた。
そしてそんなリグルド様なのだが、問題があった。
基本的には貫禄のあるデブなおっさんなのだ。
御礼代わりにセッ〇スしてもいいかなー?
ぐらいに思っていたのだが、初めての純潔を、汗だくのデブとするのは如何なものか
そんな風に考えていたら
「そもそも神教の幹部は男女問わず性行為はダメです」
と言われた。
まあ、そんなお堅いことを言わずに。どうせみんな隠れてやってますよ。
そんな気分だった。
リグルド様だって、若い女に誘われて揺れない訳がない。
この任務が終わったらセッ〇スしよう。
そう思って任務地に行った。
戦場に三年いたと言われた。
そんなにいたかな?
というのが正直な感想。
リグルド様とご一緒だった日の方がはるかに長く感じていた。
色んな事があった。
だが、戦争を終わらせてリグルド様のところに帰りセックスする。
それ以外はなんの興味もなかった。
ひたすら笑顔で励まし、言い寄る兵士達をあしらっていた。
幸い私を護衛してくれている兵士達が強かったから、純潔を守れていた。
そして、死んだ日のこと。
よく憶えていない。
眩しかったことは憶えている。
血が跳ね返って眩しかった。
なにも見えていない。
そして、強烈な衝撃と共に記憶を失った。
死んだと知ったのは『天』に来てからだ。
不思議な空間だった。
地面は白くフワフワしている。
壁もなにもない。だだっ広い空間。
モコモコしている地面に寝転んだりしていたら
「……あら、新しい方が。あなたのお名前は?」
奥から来た女。
全く知らない顔。まあ私はリグルド様以外の神教関係者の顔を憶えていなかったからな。
「アンリ」
「……アンリ……アンリ……ああ!!! ハルバルトの奇跡! 殉教者アンリ!!! やはり大物ですね!」
私の事は知っているらしい。
「名乗れ」
「はい。私はあなたよりも後の時代。神教女性幹部のトップの地位、『ザレン・アグラ・ルミエイラ』におりました、ネルフラ・カルミディア・サヌ・ディルドレです。血筋はディルドレ公国の国王……」
「は?」
なげえよ。なに言ってんだ。名前を名乗れと言ってるのに
「……ネルフラです」
「知らん」
「ですから、あなたの後の時代の人間ですから!」
後の時代?
なにを言ってるんだ、こいつ。
そんな気分だったが、話をしているうちにここが教典にあった『天』で、それに呼ばれるのに相応しい女性達が招かれたのではないか?
そんな話をしていた。
とは言え私にとってはなんの興味もない。
モフモフの地面で弾んでいると、他にも二人女が来た。
その中のハユリと言う人間が
「リグルド様はいらっしゃらないのですか?」
その言葉で、この4人全員にリグルド様との縁があることを知った。
そしてその直後
『リグルドを助けろ』
声が響き、私以外の3人がすぐに跪いた。
『リグルドは再び地に落ちる。おまえ等はそれを助けろ』
そして、目の前に神殿が現れた。
その神殿では様々な超常の力が使えるようになっていた。
リグルド様のお助けをする。
それに他3人は懸命に修業していたのだが
(……私は別に。お助けをすると言っても)
他3人がやればいい。そんな気分だった。それよりも
「リグルド様としたいなー」
そのために生きていたのだ。
それを支えに生きていたのだ。
だから、それを果たしたい。それしかなかった。
大地にまた降り立って、リグルド様にそれを伝えた。
他の有象無象には理解出来ない話。
だが、リグルド様はあっさりと
「アンリだけは後宮に入りなさい」
「子を為すことは手伝いに繋がる」
ああ、リグルド様だけはいつも私を理解してくださっている。
そして、当時の私を心から褒め称えたい。
目の前の生まれ変わったリグルド様は、滅茶苦茶に格好いいイケメンになっていた。
しかも皇帝。
そう、私は本能で
「この人はセックスに値する凄い男ですよ」と感じていたのだ。
私偉い。
そんなリグルド様。
「分かりました。アンリ、これ以上待たせるのは失礼。今日はこのまま抱きましょう」
本当に優しくて、全部見透かしている。
私が昔からずっと待っていた。
その事を理解してくれている。
「はい! しましょう!」
そう言って、そのまま抱きつく。
すると
「アンリ、途中で止めたは無しですよ?」
耳を舐めながら囁かれる。
あん♡ 情熱的で素敵♡
そんなの
「ふふふ♡♡♡ もちろんです♡♡♡ 私はずっと待っていたんです♡♡♡ さあ、味わってください♡♡♡」
ふふふ♡♡♡ どんな風に抱いてもらえるのかなー?
とワクワクしていたら
『ふざけんなー』
『なんでその日にやろうとしてんだー』
部屋に響く声。
ハユリとネルフラか。
「邪魔すんなよー。私の仕事はリグルド様とセックスだ」
『そんな訳あるかー!』
『私達は四神女なんだぞー! なんで仕事がセックスなんだー!』
なんで?
そんなもの
私が答えようとするが
「ハユリ、ネルフラ。ここは私の寝室です。声を響かせるような無礼はミルティアですらしない。何故あなた達がそれをするのか」
リグルド様の叱責。
それに黙る二人。
「それにアンリの生涯を考えれば、性行為に専念する生き方というのもそれほどおかしいわけではない。神は細かい指示はしない。己が正しいと思ったことをするべきです」
そうです! さすがリグルド様!
「えへへ♡♡♡ リグルド様、格好いい!♡♡♡」
そのまま、その口に唇を押し付けて、舌を絡める。
その間にリグルド様は私の服を脱がしてくれていく。
ああん♡♡♡ 嬉しい♡♡♡
しかし、そこで突然気付いた。
自分の臭い。
「……え?」
服を脱いだ途端に鼻についた異臭。
あれ? いや、確かに……あれ? でも……
リグルド様も気付いたみたいで微妙な顔をする。
「……ま、待ってください! いや! だって私神様みたいなもんなのかなーって思ってて!!! というか、『天』の時からそうで! てっきりそういうもんだと!!!」
臭い。
全然臭いに気付かなかった。
しかし、発情して汗をかいた服を脱ごうとしたら凄い汗くさかったのだ。
それも発酵した臭い。
なにしろ私達、こっちきてから水浴びしてないし。服も変えてないし。
やばい。まずい。どー考えても身なりをちゃんとしないだらしない女じゃん。
ただでさえ適当な女扱いされてるのに。
「……いや、私のこの顔は臭いの事じゃなくて、またこういう理由でお預けされるのか、という方なのですが」
臭いのことじゃない。
いや、じゃあ臭いって気付いてますよね???
「男女のセックスが汗だくになるのは当たり前でしょう。肉と肉のぶつかり合いに、綺麗も汚いもない」
そう言って近づいてくるのだが
「まって!!! 水浴び!!! 水浴びさせてください!!! したら戻ってきますから!!!」
「この時間に水浴びと言われても。あまり侍女達に気付かれたくないので」
リグルド様は、私を押さえ込んで、そのまま首筋を舐めた。




