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頑な少女は竜の騎士に暴かれる?!  作者:


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58.潜む敵


『報告!!!!こちら国境二番隊、応答を!!』




緊迫したロイの声音が、穏やかだった団長室の空気を一変させた。




「こちら団長室。ロイか?何があった?」

『……出立時に西部山脈中腹より魔法攻撃を受けました。中腹には風属性の紋章があり、紋章と威力の相関から四枚羽相当の相手が潜んでいたと推測します』

「山脈に紋章が……?」


「はぁ?なんかの見間違いだろ」

いつの間にかセルジュの背後にいたロキが反応する。


「紋章って事は魔法を使った人間がそこにいるはずだろ。縄張りに入った以上例え対の人間であろうと排除されるよ。(奴等)はそれ程までに他者を拒む。『潜む』なんて不可能な話だ」


セルジュも同感だ。

それでもロイが過剰な報告をしない事も知っていた。


「状況は分かった。他の二番隊と、怪我人の状態は?」


『その他二番隊は既に飛翔後だったので王城へ向かわせました。怪我人は一名、腹部を攻撃魔法が貫通してます。直ぐに手当てをしたいので後方部隊も…『手当ては、戻ってからで充分、だ』


掠れたグレンの声が遮った。

流月の息を飲む音が響き、セルジュですら一瞬応答が遅れてしまった。


『余計に、攻撃を受ける』

「ロイ、対処魔法は?」

『やってます。でもこれだけではどうにも……』


ロイやグレンの様子から決して容態は軽くないようだ。

無理が効かない以上、山脈の制圧が最優先事項だ。このままでは後方部隊が行く事も、グレンを王城へ運ぶ事も難しい。


「まずは俺とロキで山脈に向かう。安全が確保できたらロイは王城て戻ってくれ。ミラに受け入れの手配を頼んでおく。それから……」



……



「ロキは先にオーウェンの所に行って説明を……」

ロイとの通信を終え、セルジュはミラの元へ向かうため振り返る。

流月が立っていた。俯き気味のため表情は読み取れないが、拳をぎゅっと握りしめているのが分かる。


あれだけ二番隊の帰還を楽しみにしていたのだ。ショックは大きいだろう。ゆっくりとフォローをしている時間はないが、それでも彼女の不安を放置する事もできなかった。セルジュは、流月へ向かって一歩踏み出そうとした。


「流月……」

「ミラには私が伝える………直ぐに向かって」


予想していなかった、はっきりとした声だった。

セルジュは驚いたまま、顔を上げた流月の瞳から目が離せないでいた。

涙を浮かべていると思っていた流月は、強い瞳でこちらを見つめていた。その瞳は潤んですらいなかった。


「竜になれる二人にしか状況を変えられないんでしょ?こっちでやるべき事は全部対応する……だから、グレン隊長と、砦の皆をよろしくお願いします」


流月の言葉にセルジュとロキが頷き扉に向かおうとする背中に流月が、声を掛ける。


「二人共…………怪我しないでね、お願い」


「約束する」

「任せとけ」


僅かに揺れる声に気が付かないふりをして、二人は団長室を後にした。




二人の足音が聞こえなくなってから握りしめた拳をゆっくり開く。白くなった指先は小さく震え始め、どんどんと冷たくなってくる。

グレンの声が耳に残る。最悪の想像ばかりが浮かんで流月の足を竦ませた。


ー だめ……まだ、怖さに負けてる場合じゃない


血が滲む爪跡に構うことなく、流月は胸元で再び拳を力強く握った。





……




「……何時来てもいいようにしておくわ。ありがとう、流月」



医務室にいるミラに状況を説明し、直ぐに受け入れ準備を整えてもらった。慌ただしい様子の医務室では流月に手伝える事も無く、ペコリと頭を下げ、静かに団長室へと戻る。

しんと静まり返る団長室でゆっくりと執務席に座る。

動かない通信機を見てグレンの掠れた声音が思い出された。

漸く、じわり、と視界が揺らぐ。



「……っ……………うー……」



握った両手で両目を押さえ、上を向いた。


まだ最悪ではない。最悪にしないためにセルジュもロキも国境へ向かったのだ。それでも心配で、不安で、怖くて。涙を止めることができなかった。




……コンコン……


ノックの音が響き、慌てて涙を拭う。隊員達はセルジュの教育の基、騎士団長の許可が下りるまでは勝手に扉を開けてこない。申し訳ないと思いながらも少しでも平静を装うため時間をかけようとしのだが、



ガチャ……



流月の許可なく扉が開き、悪びれる様子の全く無いレスターが顔を覗かせた。



「あぁ、タカミヤ騎士団長……ようやくお会い出来ましたね…………どうかしましたか?」


流月の表情にレスターは小首をかしげた。

許可なく勝手に開かれた扉に、『ようやく』と言う言い回しに、理解の追いつかない流月は大概間抜けな表情になっていただろうが致し方ない。



「いえ、大丈夫です……えっと、レスター宰相は何の御用で?」

「タカミヤ騎士団長にお会いしたい方が登城されているので呼びに来ました」

「登城?!……そんな急に……」

「何度も予定を伺いに来てたんですけどね、貴女の警備が厳しくて。お忙しい方なのにわざわざ時間を空けていらっしゃってくれましたよ」


さあ、とごく自然なエスコートで団長室から連れ出そうとするレスターに流月は慌てて抗議の声を上げる。


「待ってください!今この部屋を離れるわけにはいかないんです」


レスターは流月の涙の跡に気が付き、抗議の意味を理解した。


「あぁ……国境で揉めてるようですもんね………でもここで貴女に出来ることは何もないでしょう?来訪者のご相手も立派な仕事ですよ」


遠回しな役立たず宣言に、漆黒の瞳が揺れる。



ー 名ばかりの騎士団長に子供じみた感情、ですか


この国では忌まれる事の多い漆黒の瞳にレスターもそれなりに不快感はある。が、一介の騎士に肩入れして涙を流す行為がより一層不快感を強めていた。竜騎士は王族と国民を護るための駒であって、その消費を嘆くものではないとレスターは考える。だからこそ流月の感情が理解できないし、理解したくもないものだった。



ー ……こんな小娘の何がいいのか……



二人の青年の姿が浮かび、ため息をつきたくなった。


レスターはそんな考えを表情に出さず、にこりと微笑む。

暫く考え込んだ流月は、辛抱強く差し出し続けたレスターのエスコートを漸く受入れた。



「案内、お願いします」

「お任せください」



わざとらしくにこりと微笑み、細い指先を軽く掴む。


ー さて、あの人の動機はどこでしょうね


レスターは金髪の青年に疑問を持ったが、さして興味のないことだと結論づけ団長室を後にした。


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