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頑な少女は竜の騎士に暴かれる?!  作者:


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57.緑の思惑


一頭の青竜が国境駐屯地演習場からゆっくりと、力強く飛び上がっていく。空高く、青竜の姿が黒い点の様にしか見えない程の高さまで到達した後、そのまま周囲をくるりと一望する。

青竜に乗った竜騎士ーロイは目視は勿論、魔力探知でも異変がない事を確認すると地上に残る隊員へ呼びかけた。


「周囲異常なし。総員飛翔開始」


呼びかけを合図に地上にいる隊員達も順に飛び上がる。

上昇中の竜は注意力が低下するため、一頭ずつ飛び立ち上空で隊列を組むことが決まりだ。

ロイは隊列が整うまで上空から警戒を続ける。

と、一頭の赤竜がふらつき列から逸れようとしている事に気付いた。

若手の隊員だ。ここまで大きな任務は初めてで、緊張と疲労から今朝方発熱したと他の隊員から聞いていた。

二番隊隊員としては情けない話だが、大きなミスをしなかっだけ上等だろう。あとは帰城のみだと、フォローのために下降を始めたその時。


ぞわり


異質な気配を感じて振り返った。

西側山脈だ。

竜の縄張りのため密入国者は以ての外、シルヴェータ国民すら滅多には近付かない。好奇心だけで入れば命を落とす危険のある秘境だ。

この一週間飽きる程見た景色だ。それなのに違和感は増し、鼓動は速くなる。



中腹に淡く浮かぶ緑の紋章が目に入った。


「…ッ、総員退避ーー!!!」


そう叫びながら素早く水の防壁を張り、若手隊員の初手を確認する。

熱のせいなのか経験なのか他の隊員達と比べ数拍退避行動への移行が遅れた。

横目で紋章を確認する。先程より鮮やかさが増し、攻撃の準備が整ってきた事を知らせているが、あの規模の紋章ならば防壁で防げずとも死ぬような威力ではないはずだ。

隊員を見捨てる様な指揮は教わっていない。


ロイは若手隊員の元へ急いだ。

視界の端に目映い緑が迫ってくる。




ドンッッ!!!




予想外の方向から体に衝撃を受け、助けようとしていた隊員にぶつかった。慌てて衝撃の方向を振り返ると輝く金色の髪の毛がなびいていた。



「たい…「急げ!!!」



風魔法で防壁を作って光線状の攻撃魔法を受け止めるグレンが苦々しく叫ぶ。その珍しく緊迫した様子にロイは水魔法を使い、延長上の隊員達を一斉に退避させた。隊員達の無事を確保しグレンへ加勢しようと向き直ったところ



グレンの腹部を鮮やかな緑の光線が貫いた。



「…ッッ………隊長!!!!!」


貫かれた衝撃で体勢を崩し、竜の背から落下したグレンを受け止める。


「ク……ソッ………しくった………」


直ぐに体勢を立て直そうとするグレンの体を引き止める。応急処置のため力強く押さえた傷口はぬるりと生温かい。傷口を押さえる痛みを飲み込んだ呼吸は荒く、僅かに体が震えていた。

ロイは直ぐに対処魔法をかける。

水属性特異の対処魔法では自然治癒力を活性化させ、痛みを和らげる事が出来る。軽微な怪我であれば回復期間の短縮も可能だが、貫かれた穴を塞ぐ程の効果はない。少なくともロイの魔力では。


周囲の警戒のために待機していた三、四番隊隊員もグレンが負傷した気配を感じ取り、演習場全体の雰囲気が殺気を孕んでピリリと張り詰めてくる。数頭の、恐らく隊長二人を含むであろう騎士が飛び上がろうとする気配を察知したグレンは通信機を通じて制止の声を強めた。



『動くな!!…………飛び立てば、狙われる』

 


『二番隊は限界まで上昇し全速力で王城を目指せ。指揮はロイに任せる。三四番隊はそのまま警戒を怠らず沈黙。演習場の壁で直接は狙えないはずだ』


大怪我を負ったとは思えない覇気のある声に、騎士達は冷静さを取り戻し指示に従う。一方でロイの押さえる傷口からの出血はじわりじわりと増えていた。

誤魔化しでもいいから少しでも楽になるようにと、ロイは何も言わず魔力量を増やす。

と、グレンがロイの腕を掴んだ。



「………これ以上は、温存しとけ……………ロイ、応援要請を」



掴まれた手はいつになく弱々しい。

ロイは対処魔法を続けたまま、王城へ繋がる通信機を受け取った。







………………







「ね、ね!もうすぐグレン隊長達帰ってくるんだよね?」


今日で予定の一週間だ。

二番隊との最終定時報告会も何事もなく終わった。

最初の襲撃以来、新たな問題は発生していないと聞いた。セルジュもグレンも何もない状況を逆に訝しんではいたのだが。

流月にしてみれば怪我もなく二番隊が戻ってきてくれるのだから何を気にすることがあるんだろうと首を傾げるばかりだった。


流月のうきうきした様子にセルジュも苦笑する。

不安や責任が『騎士団長』に重く伸し掛かかる事は理解しているので浮かれた様子にも多少目をつぶることにする。


「そうだな……後は引継ぎだけって言ってたから昼前には出立だろ」

「そしたら皆にコーヒー淹れてあげなくちゃ!リラックスできるようにミルク入れようかな……ブランデーもいいかも」

「…………………飲むなよ」


いつかの夜を思い出し口出しすれば、「飲まないよ!」と言いながら舌をべっと出された。流月の幼い反応に思わず吹き出してしまう。


正直な所、何の問題も解決できていない気はする。

それでも一週間も動きがないのであれば一旦警戒を緩めてもよいだろう。



ー ただの思いつきだったのか……あるいは




『報告!!!!こちら国境二番隊、応答を!!』




突如、通信用魔道具が青く輝き始めた。

途端に団長室の空気が緊迫する。



ー あるいは、明確な別の目的があるのか


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