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頑な少女は竜の騎士に暴かれる?!  作者:


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55.流月の憂鬱


日課となって六日目のグレンとの定時連絡を終え、国境地帯の状況をノートにまとめる途中。何気なく顔を上げたらセルジュと目が合った。にこりと微笑む前に、そのままセルジュは何事もなく手元の資料に視線を戻した。


ー ………………なんか、変…?


たまたま視線が合っただけなら極ありきたりな反応だ。

でも流月にとっては確実に引っかかる反応だった。


ー 避けられてる?何かしたかな………ってばっちりしちゃったか


流月はガクリと項垂れ、数日前の失態を思い出す。

誤魔化すこともできず、感情を出してしまった。


ー 顔、真っ赤だったろうなぁ……だって、急に色々あって混乱しちゃったんだもん。それに、


それに、セルジュの指先は何やら変なスイッチを押してくる。

流月の抑えたい感情をこれでもかと振り回す。それがようやく分かった。


ー じゃあ全部セルジュのせいじゃん……


少なくとも自分でこの感情をどうにかするつもりは微塵も無かった。小さくなって消えていくのを待つつもりだったのに。

どことなく余所余所しい態度は、この感情に気付いて迷惑に思っているからだと流月は思う。そう思って震えそうになる唇にぐっと力を込めた。


ー 迷惑だから、無かったことにされるのかな。この恋に未来なんかないんだから、これを機に距離を置いて無かったことにした方がいいのかも……


どんどん重くなる気分を支えきれず、額が机にぶつかった。

机のひんやりした温度が心地良い。



ー 寂しい



目があった時僅かに、流月にだけ分かるくらいに緩む視線に逢えない事が寂しい。あの優しい瞳は、何度も流月を救ってくれた。



ー この感情(コレ)を無かったことにされるより、ずっと辛いかも



コンコンッ


直ぐ側で音がして慌てて顔を上げた。


「大丈夫か?調子悪い?」


目の前にセルジュが立っていた。心配そうに眉毛を下げ、あの優しい瞳を流月へ向けている。


「大、丈夫。ありがと」


ー やだな、こんな事で嬉しくなりたくないのに。



重たく伸し掛かっていた暗い気持ちは、いとも簡単に消えてしまった。



「あの、セルジュ?こないだはごめんね、その」


無かったことになるよりも距離を置くことが辛いらしいと気が付いた流月は、何とか良い関係に収まらないか修正を図る。


「こないだって?」

「グレン隊長と初めて話せた時の……」

「ああ、安心して感情が高ぶったんだろ?気にしてないよ」


何でもないように答えるセルジュに流月は目を真ん丸くする。


ー 嘘でしょ?あんなボロボロの言い訳信じてる?


「セルジュって、鈍感、なの?」


思わず口を衝いた言葉にはぁ?!っとセルジュは眉間のシワを深くした。なんだか面白くて流月は笑ってしまった。

その様子にセルジュは安堵の息をひっそりと漏らした。



『流月の意図が分かったこと、絶対バレるなよ。アイツは余計なとこまで気にしてまた閉じ籠もる、多分……絶対』


ロキの言う通りだったのは癪だが、流月には笑っていてほしいとセルジュだって思う。


「鈍感はどっちだ」


流月に聞こえない程に独りごちた。





…………





…コンコン……ガチャ



「…はぁ………また、ご不在ですか?」


ノックの後、返事を待つこと無く扉を開ける来訪者はあの日から毎日のように団長室へやってくる。就業前に来るのは宰相という立場があるからなのだろうか。


「……………………レスター宰相こそ、またすか」


団長室で一人寛いでいたロキが姿勢を正すこと無く対応し、溜め息つきたいのはこっちだ、と言う文句は心の中に留めておく。


「今朝は朝一からアリアナ陛下との会合があるんで、王城へ行きましたよ」


就業前に流月を連れ出すよう調整はしたが、嘘ではない。

最初の訪問以来、徹底的に流月には会わせないようにしているし、流月に何も知らせていない。

危機感皆無の小娘は会うくらい何でもないと、軽く了承してしまうだろうと言うセルジュとロキの共通認識による作戦だ。


「言付かっときましょうか?」


そうすれば流月に会わせないまま丁重に断れるのに。

ロキは下心まみれの親切心を出した。レスターはじっとロキを見つめた。いつもよりやや皮肉めいた笑みを浮かべる。


「貴方もセルジュ隊長と同類の様ですね……過度な執着は誰のためにもなりませんよ。心遣いありがとうございます」


そう言い残していつも通り優雅に団長室を後にした。

残されたロキは見透かされ馬鹿にされた事をきっちり理解した上で、団長室に舌打ちをの音を響かせた。

竜の寿命は人のそれとは比にならない程に長い。

いくら見た目が二十歳前程のロキでも既にレスターより長い時間、『対』を探し求めていた。レスターの忠告など聞くほどの価値もない戯言のようなものだ。


「若造が何わかった気になってんだ。『対』の執着をあんなぽっと出と一緒にすんじゃねぇよ、クソが……全部おっさんのとばっちりじゃねぇか」


それでも湧き上がる苛立ちを心の中に留めておくことは出来ず、静かに吐き出すことにした。セルジュへの特大の八つ当たりと共に。

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