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頑な少女は竜の騎士に暴かれる?!  作者:


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53.団長命令です!!


グレンは夜明け前に現着したいと最低限の準備を素早く行い、出立式を執り行う余裕も無い深夜の旅立ちに流月、セルジュ、ロキの三人だけが立ち合った。


「二番隊、出動っ!!」


体がふらつきそうになる程の強い風を巻き上げてグレンを先頭に、二番隊員が飛び上がった。

真っ暗闇と姿を隠す魔導具のせいですぐに姿が見えなくなったが、流月は暫く夜空を見上げていた。祈るように胸の前で手を握りしめたまま。



「二番隊なんて過剰戦力、すぐに終わらせて帰ってくるよ」


ロキが二人に聞こえるようにわざとらしく呟き、一人自室へと歩き出した。流月もそれに倣おうとし、動こうとしない、もう一つの足音に気付く。

後ろを振り返るとセルジュが未だ空を見ていた。

グレンから聞いた昔話が彼の足を止めているのかと心配になり、一歩踏み出そうとしたところ。

セルジュはゆっくり瞬きをし、こちらへ歩き出した。流月はその姿から目が離せない。




真っ直ぐ前を見据えるアイスブルーの強い瞳が、馬鹿みたいに綺麗だった。





………………




『こちら二番隊。夜明け前に第五区画国境付近を制圧完了。念の為第四まで偵察を飛ばしてるが異常なし。セウシリア側も静観決め込んでるな』



団長室の応接テーブルに見慣れないものが置いてある。

ガラスで作られた開きかけの花のような器があり、その中心には拳大の玉がゆらゆらと浮いていた。計測器の様にも見える玉は綺麗な空色に光っていて、その内部に時折波紋が広がっていた。その見慣れないものからグレン隊長の声が聞こえていて。

そして、ごく当たり前のようにセルジュが会話をしていた。




『ただなんかしっくりこねぇんだわ』

「……………何がだ?」

『制圧した奴らは騎士でも軍人でもない。ただのチンピラだ。動きも攻撃力もお粗末だし、統率なんてあったもんじゃない』

「王国騎士団も、五番隊ですらやられてるのにか?」

『そんなこたぁ分かってる。でも真実だ』

「本命がどこかに隠れている?」

『そう考えるのがやっぱ当然だよな…………んーーー、セウシリア軍はとりあえずいつも通りだし、この辺なんて隠れる場所も無いんだけど。まぁ、1週間程度は滞在するわ』

「頼んだ。警戒は怠るなよ。その後は三、四番隊から隊を編成する。何かあればすぐに連絡を」

『了解。んじゃ「あの!こんな普通に会話できるなんて知らなかったんですけど!!」



グレンとセルジュのやり取りが終わろうとした瞬間、流月は言葉を挟んだ。



『お、流月か。寝坊してないな、偉い偉い』



いつも通りのグレンの声音に力が抜ける。安心して涙腺が緩みそうになり慌てて俯いた。


「…………私のせいで、このまま会えないんじゃないかって、凄く怖かったのに」


小さな小さな呟きは流月と共に団長室へ入ってきたロキの耳にしか届かない。流月はぶんぶんと頭を振った。



「これって話すのに魔力消費する?」

『いんや、完成された魔導具だ。対があれば魔力なんて使わず通信できる』

「じゃあ!なんかあった時だけじゃ駄目。毎朝、状況を報告してください。団長命令です!!」


流月が唇を尖らせてそう宣言すると、堪らずロキが吹き出した。じろりと視線を動かすと、グレンと真面目に話していたはずのセルジュも視線が優しい。


『…ったく………団長命令なら、しゃーねーなぁ』


グレンが仕方無しに答える。が、誰が聞いても分かる程度に声が笑みを含んでいた。








「こんなのあるなら先に教えておいてよー」


流月が、空色に輝いていた玉をツンとつつく。

魔導具はもう光っても浮いてもいなかった。

セルジュは執務机の右側に置かれた補佐席で走らせていたペンを止め、顔を上げた。既に隊の編成を考えていたんだろう。


「……悪い、そんな、大したもんじゃないと思っていた」


セルジュが何気なく流月の顔へ視線を向けた。流月の顔をじっくり見るのは今日、初めてな事に気付く。不貞腐れて突き出た唇は声音から想像していたが、目はうっすら充血しているし僅かにくまも出来ている事に気付いた。

セルジュはペンを置き、静かに立ち上がった。



魔導具を不満げにいじり続ける流月は、ふと自分にかかった影に気付き視線を上げた。すぐ目の前にあったセルジュの姿に思わずドキっとする。


「っ…、何「眠れなかった?」


セルジュがしゃがみ込み、応接用のソファに座った流月と視線を合わせた。躊躇う事なく、ごく自然に目の下のくまをなぞる。

セルジュの無意識なざらつく指先は、いとも簡単に流月の感情を振り切らせた。



「……っ……」


流月の顔が一気に真っ赤に染まった。セルジュの動きがピクリと止まる。


「や、違うの…………えっと、その…………そうだ!声!……が、聞けて、安心しただけ」


しどろもどろに話す流月の瞳はじわりと滲んできている。

ちょっと外行ってくる、と流月は慌てて団長室から出ていった。


鮮やかなあかがいつかの夜と重なった。

唐突に、今までの不可解な反応が理解できてしまった。

そしてその内容に呆然とする。




「……は?…………いや、え?……」



急な出動に、グレンを心配していたのは事実だろう。それでも魔導具でグレンと会話をして落ち着いた様に見えていた。少なくとも今このタイミングで涙を浮かべるほどの不安は取り除けていたはずだ。



真っ赤に染まる流月の顔が思い出される。

じゃあ、あんなに流月の感情を高ぶらせたのは。

あの『恋情』を引き出したのは。



セルジュは自分の手の平を見つめ、言葉を失った。



「ちょっとは自覚した?おっさん、無意識に攻めすぎなんだって」


深い溜め息と共に、呆れたロキの声が響いた。

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