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頑な少女は竜の騎士に暴かれる?!  作者:


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37.秘密の特訓1


シルヴェータ王国は大陸の北端に位置し、東西を山岳地帯に、北方を海に、南方を軍事国家に囲まれた国だった。


東西の山岳地帯は険しい上、竜の棲み家となっているため侵入ルートには適さない。それどころか国内から山岳地帯へ入ることも一般人にとっては困難を極める。

海からのルートは正規の手続きを踏んで安全に入国することは可能だが、竜騎士が常に監視しており、空を飛べて夜目の利く竜の目を掻い潜っての侵入は簡単ではない。

南方からのルートは、長年の隣国との軋轢のせいで国境は固く閉ざされている。



説明しながらグレンの長い指が広げられた地図を滑った。

流月の知る世界地図とは全く異なる地図に、今更ながらやっぱり違う世界なんだと頭の隅で理解する。


「あの国じゃなければよっぽど大丈夫だったんだけどな」


グレンが苦い顔で地図上の『あの国』を指先でトントンと叩いた。


「セウシリアはずっと昔からこの国の資源や竜の力を狙ってんだ。過去幾度となく争って、死守して、ここ数代の世では均衡が保たれてある意味平和だったんだ…………今ではこの大陸の七割程の国々を支配下に置いている軍事国家だ。力尽くで支配した国が大半だけど、その思想に賛同した国だってあって、何にせよ大陸の七割がオレ達の敵だ。


そんで多分、均衡が崩れかかっている。」


「国境には砦もあるし、王国騎士団も常駐している。でも先に仕掛けられたら劣勢になる。だから常に向こうの動向を監視してんだが、ちょっと怪しい動きを感知したってわけ」



セルジュとグレンの慌てた理由は、流月にも理解できた。理解はできたけれどイマイチ想像がつかない。流月のいた日常では考えられない『他国と敵対する日常』に流月は何も言うことができず、ただ地図を眺める事しかできないでいた。



「第五って言ってたよね、アニスの町の方か」

黙ったままの流月を放ったまま、ロキが呟く。


「……オマエはよーく知ってんなぁ……『第五』って一般的な呼称じゃねーぞ」

「アニスには得意先があってよく行ってたし、騎士のお兄さん達とも仲良くなってたしね」


ロキ(小)を彷彿とさせる可愛らしい笑顔をグレンへ向けた。

ロキ(小)の強かさと逞しさ、それにあの流月へ向けていたあざとさがあればどんな相手だろうとコイツの手の平で転がされるんだろう、とグレンは想像し身震いする。


「ったく、こっわいガキだな……流月、国境を騎士隊内では便宜上五つの区画に分けてんだ。第一は東側、第三は検問街のある中心部、第五は西側。今回は西部山脈寄りで何やらやってるみたいだな……

今すぐ何かが起こる状態じゃねぇと思うけど警戒はしとくべきだな。なんせ、オマエ達が見つかった後でよかった。少なくとも竜騎士団のこれ以上の弱体化は止めれる」


グレンの口調はいつも通りだった。

でも地図を見つめるグレンの視線はいつもより厳しい。その嫌悪すら感じる視線に、流月はぶるりと背筋を震わせた。





………………





流月とロキの叙任式から三ヶ月が経過していた。



騎士見習いとなって以降基礎訓練は続けているが、国を守るどころか身を守れる程の筋力も、筋力不足を補う技術も獲得には至っていない。流月が身を守れるようになるためには魔力を制御する事が一番の近道であることは誰の目から見ても明白だった。


「……うわ、ぁ…」


今日はみっちり魔法訓練の日だ。グレンが流月のために魔法演習場をまるっと貸し切っていた。

流月とロキが魔法演習所への扉をくぐった途端、流月の口から思わず驚きの声が溢れる。




だだっ広いばかりだった演習場が謎のドームで囲われていた。

建物の二階程の高さのドームはガラスの様に透き通っており、時折キラキラと光を反射していた。ドームに近づくにつれ、僅かに気温が下がる。

遠目からでは分からなかったが、ガラスの様に見えた素材は流れる水が形作っているもので、どうやら魔法でできているらしい、と気付いた流月は目をキラキラさせながらドームに駆け寄った。



「やっと来たか、流月!」

水のドームの側にグレンとロイの姿があった。ロイの存在を確認して、流月は彼の魔法であると確信する。


「グレン隊長!ロイさん!なにこれー!!すごーい!!」

「ふっふっふ、スゲーだろ」

「隊長何もしてないじゃないですか」


ドヤ顔で言うグレンにすかさずロイが呆れ顔で突っ込むが、グレンは全く気にした様子もなく流月への言葉を続けた。


「導入器での訓練である程度の成果は得られたし、これ以上の成果は正直微妙なとこだし……ぶっちゃけ飽きた!今日はロイの補助魔法の基、実戦形式の訓練とする!」


「隊長のくせにぶっちゃけ過ぎだろ…」

ロキが苦笑しながらゆっくりと流月の後を追った。


ロイがドームへ向けて右手を掲げた。その手を中心にドームを形作る水の流れとは独立した渦が発生した。渦は巻く毎に大きくなり、最終的に人がくぐれる程のサイズになったところで、ロイはエスコートするかのように流月へ手の平を上向きに差し出した。流月は照れながらも差し出された手に自分の手を重ね、ゆっくりとドームの中へ入っていく。



ドームの中は外よりもひんやりと涼しかった。

外の景色が淡青に染まり、キラキラと揺らめいている。

流月はドームの目的をすっかり忘れ、その綺麗さを単純に楽しんでくるくると回っていた。



「『ロイの補助魔法』とか言うけど、暴走しても力尽くでロイが鎮火させるってことか……どーせあの隊長さんの強行策なんでしょ」

最後尾でドームに入ってきたロイに向かってロキは呆れたように問いかけた。

「状況把握能力高くて助かるよ」

ロキへ向かって困った笑顔を向けた。


くるくる回る流月を無理矢理止めて、グレンが声を上げた。

「さーって、やるぞ!」



……



訓練開始から四時間程が経過していた。

淡青に染まっていた水の壁は、やや赤味を帯びてきている。


集中せねばと思えば思うほど、流月の手元の火球は不安定に揺らいだ。

こんな練習のために大掛かりなドームを作って貰ったことも、隊長格を長時間拘束することも、今となっては流月のプレッシャーにしかならなかった。


「っと、流月!こんなガチガチになってどーすんの!上手くいくもんも行かないって」

ロキがそう言って流月の両肩に手を置き、力を抜けと言うようにぽんぽんと軽く叩いた。


手元の火球が安定し真円を描く。


そのまま火球は流月の意志通りに直進し、水の壁に消えていった。

二度、三度繰り返しても火球の揺らぎは全く現れなかった。


「いいね、うまいじゃん」


ロキがその結果に満足して手を離す。

途端、火球は大きく揺らぎそのまま消えてしまった。


ロキはくくっと笑いながら流月の頭をワシワシ撫でると再び真円が現れる。


「情緒不安定だなー、ちょっと休む?」


流月は無言で首を振った。


ー どーせ周りに迷惑だとか何だと考え過ぎて焦っているんだろう


見当はついてもロキは口には出さなかった。口にしたら余計に拗らせるだろうし、騎士隊、それも団長としてやっていくつもりであれば疲労も焦りも緊張も、捻じ曲げる必要がある。が、一朝一夕で身につくものでもないな、とロキが苦笑して手を離そうとした瞬間、


「ロキ!手を離すな」

グレンの鋭い声が飛んだ。ロキはビクリと体を揺らしそのまま動きを止めた。

「…………なに?グレン隊長?」

「流月、そのまま放出量上げて」

「え、でもこれ以上は……」

「大丈夫だ」


これ以上放出量を上げると今の流月では制御できないことはグレンも分かりきっている。何度も暴走する導入器の様子を見てきた。

それでも試す価値はある。

仮に暴走してもロイに確実に止めさせる。グレンがロイへちらと視線を送ると、ロイは既に理解済みの顔で頷いた。


流月は困った顔でグレンを見つめるが、力強い瞳で頷かれてしまった。

グレンは普段おちゃらけてはいるが、無責任な発言はしないと分かっている。何か考えがあるのだろう。


流月は深く息を吐き、魔力放出量を上げた。

お読みいただきありがとうございます。

不定期投稿となってしまいごめんなさい。

亀ながら投稿は続けていくつもりです。

お付き合いいただけると嬉しいです!

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