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頑な少女は竜の騎士に暴かれる?!  作者:


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短編1.とある隊員と噂の医務室2


「キース、処置が終わったらこっちに運んでくれるそうですよ。軽い怪我たけですんでよかった」


リアムが急患ではないと理解した流月によってリアムは休養室へ案内された。そう言いながら流月は何やら慌てていた様子のリアムへお茶を差し出した。


「キースの事知ってるんだ?」


流月の出してくれたお茶に口をつけながらリアムは疑問を口にする。

見ると、流月は安心したように微笑んでいた。


「最近、毎日医務室に遊びに来てくれるので仲良くなったんです」



ー 噂になっていた子はやっぱりこの子だったか



確かに可愛らしい顔付きをしている。この国ではなかなか見かけない黒髪黒瞳は目を引くものがあった。が、それ以上に流月が動く度に香る瑞々しい香りが気になって仕方がない。香りを嗅ぐ度、病気を疑うくらいに動悸が早くなる。まだ幼さを残す流月に対しそう思うことに、少なからず罪悪感があった。




「私は流月って言います。あなたは、リアム、さん?」


気まずい思いを飲み下すようにお茶をガブ飲みしていたリアムは、驚きで吹き出しそうになった。ところを必死に、気付かれないように留める。


「んんっ…!!!………なん、で、名前を?」


「ふふ、やっぱり。キースがいつも話してましたよ。『どんな時でも負けない凄く努力家の大切な幼馴染がいる』って」



その言葉にふと表情が固まる。



「リアムさん?」



「俺は違う………努力家でも何でもない。夢を叶えたキースの方が努力家で、騎士団をずっと思ってる。俺は何もなくて、ここまで流されてきただけだ。そんなキースを差し置いて俺なんかが竜騎士だなんて……」



こんな、初対面の少女に何を愚痴っているんだろう。情けない。

カップを握る手に力が入った。空になったカップがギシリと悲鳴をあげる。




「キース言ってましたよ?『ただ夢を追いかけてきただけのボンボンがリアムに並んでいいのか』、って」



ふわりと花の香が動いた。

白く細い指が力の入った指に重なる。



「流されてきただけの人が、夢を追ってきただけの人が、続けられる程簡単なお仕事じゃないですよね?努力しない人がこんな手にならないです」


正面を向くとにこりと微笑む流月の姿があった。


「『俺なんか』って言うのは、それだけキースを大事に思ってるからですよ」



リアムは大きく目を見開いた。


全てを捨てて騎士団にかけるキースより、運だけでここにいる自分が竜騎士になっている事が申し訳無かった。その罪悪感のせいでキースの昇格を素直に喜べないと思っていた。そんな自分が嫌になった。

そう思うのはキースが大切で、その努力を知っているから。


それでもキースの明日の生活を心配しなくていい恵まれた環境だとか、騎士団のために全てを捨てる程の真っ直ぐさだとか。

嫉妬や羨望の気持ちが素直になることの足を引っ張る。

じゃあその気持ちに負けて、自分の実力じゃないと腐るのは果たして最善か。


ー キースに負けないくらいの努力はしてきたはずだ

  俺だって認められたい


ふとオーウェンの背中がよぎった。

目指す背中は決まっている。



「リアム、さん…?」

「………親友にも自分にも最悪の対応をするところだった。ありがとう、流月」


影を帯びていた瞳に強い意志が灯った。



流月はそれに答えるように笑顔を返すと、ガシッとリアムの腕を捕まえた。


「さて、じゃあ次はこっちですよ!!!」



…………






「なんでこんなになるまで医務室来なかったんです??」




最初に気になったのは隊服に滲む血の跡だった。

古い色ではなく、新しい血の色。それなのにリアムを医務室で見かけた記憶はなかった。

急に腕を掴まれたことに驚き固まるリアムから隊服を素早く剥ぎ取ると、案の定左腕に真新しい裂傷があった。

それどころか手当のされていない傷が全身に散らばっていた事には流石に流月も驚きの声を上げた。


せっせと手当をしながら、自分の怪我を蔑ろにするリアムに流月は問いかけた。手当さえしていればもう治っていたであろう傷が多い。



「あーー………最近医務室が人気だって聞いてて、それならまぁいっかなって思ってて……」



日頃から無茶な訓練を繰り返すリアムは怪我をする事が多かったのだが、『かわいい女の子』目当てで医務室に通っていると思われるのが嫌で、多少の怪我は放置していた。更にキースが毎日通っていることも知っていたため、拗らせた罪悪感のせいで何となく避けてしまっていた。

そんなくだらない理由を言えるわけもなく、適当に話を濁そうとしたが、



「………………でも、もっと早く来てればよかった。もっと早く、流月と話せたらよかった」


リアムは流月を見つめ、そう呟いた。

前を向かせてくれたのは間違いなくこの少女だ。




「ホントですよ。私、早くリアムさんに会ってみたかったのに」


「……なんで?」


「キースから聞いてたんです。『リアムは流月に似た藍色の瞳をしてる』って、すごく綺麗だから早く見せてやりたいって……ふふ、キースってばリアムさんのこと大好きですよね」



再びリアムの鼓動が大きく跳ねる。

一通り手当を終え、片付けのため立ち上がった流月の手を引いた。

鼓動が跳ねるのが花の香のせいだけではないことにうっすら気がついている。



「リアムでいい……


今度は怪我したら………怪我してなくても、会いに来る」



やや照れたように呟くリアムに、流月は花のように微笑んだ。





………………




「リアム、アレはやめとけ…………馬に蹴られるだけだと思う」

「………………」


しばらくして、生活に追われた生活ばかりしていて恋愛方面に疎いリアムを見兼ねたキースがそっと助言を与える。

すぐにはその助言を素直に受け止められなかったリアムだが、その後幾度となくセルジュとのやり取りを見かけてしまい、手を出してはいけない相手だと悟ることになる。

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