表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
頑な少女は竜の騎士に暴かれる?!  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/64

17.騎士隊長の夜


コンコン……


リズが再び第3謁見室の扉をノックし、そのまま扉を開けた。

「お嬢さん返しに来たわよ。…流月、隊服は1週間もあれば完成すると思うわ」

「楽しみ!ありがとうございます」

リズは流月を送り届けると、そのまま手を振って出ていった。

リズとの会話が楽しかったのか流月がにこにこと部屋に入ってくる。


「楽しかったみたいだな、流月?」

グレンがにやにやと話しかける。流月の笑顔を見てホッとしたことは少しも出さない。

「楽しかったよー!!…ね!セルジュもグレン隊長も入隊したての頃、リズさんが面倒見てたんだって??二人共全然言う事聞かなかったって教えてくれたよ」


「んぐっ!!…」

「うわー…口止めしときゃよかった……あの人あれでオレ達より年上だからな」

「二人共よくケンカしてたんだってねーしょっちゅう罰則食らわせたって言ってたよ!あとはー…」

二人の反応にんふふと楽しそうに笑いながら話を続けようとする。

「もうやめてくれー恥ずか死ぬ…」

グレンが両手を上げ、お手上げだと主張する。セルジュは突っ伏したまま動かなかった。

「あとねあとねー……あれ?でもリズさん騎士じゃなくて調達部って言ってたような……」


「流月!!!」

突然セルジュが声を上げた。一瞬で部屋が静まり返る。



「……な、に?何か駄目なこと言っちゃった?」

何時もより硬い声だった。その声に驚いた、と言うより萎縮した流月が、セルジュの異様な反応に問いかける。


「………ビビらせてどーすんだ、下手くそか!!」

いつも通りの口調で話し始めたのはグレンだった。

「リズさん、昔の事故で左手を失ってる。義手なんだ…だから騎士を辞めて後方支援に回っている。」


リズは採寸している時一つも不自由さを感じさせなかった。そのため流月が気付かなくて当たり前なのだが。

「そ、だったんだ……ごめんなさい、私何も気づかなくて」

「お前が謝る必要ねえって。あの人が完璧に使いこなし過ぎなの。それとこの真面目隊長のフォローが下手くそなだけ」

「すまん、悪かった…下手くそだった」

「なんだそりゃ」

セルジュの誤り方にグレンが吹き出し、つられて流月も笑う。

リズの怪我だけであそこまで声を荒らげたセルジュに、流月には違和感が残ったが突っ込まないことにした。



「さて、本題本題!ほれ、真面目隊長!」

グレンが無理矢理話題を変える。

煩いと言いながらも、グレンに感謝しているセルジュは強く嗜めない。


「流月、手を…」

そう言ってセルジュは流月の前へ計測器を差し出した。

「?なんで?私、魔力ないんでしょ?」


「お前単品にはな。だけど『長の印』が出現したことで竜の魔力がお前にも繋がったんだ」

「だから、色々確認しておきたい」

また聞く『繫がり』という言葉がイマイチ理解は出来ていない流月だったが、素直に計測器を受け取った。

途端、セルジュの手の中で黒く輝いていた計測器が中心から塗り替えられるように一気に色味を変える。



鮮やかなあかが、眩い光を放っていた。



流月は計測機器から見開いた目を逸らせないでいた。

風属性が緑、水属性が青であるならば、赤は……

計測器の赤が炎と被りそうになり、流月は顔を背けキツく目を閉じる。

セルジュが静かに計測器を取り上げた。


「……炎属性、か」

ミラを助けるために炎を退けた事実を目の当たりにしているセルジュは、この結果を予想はしていた。が、流月が炎に恐怖心を抱いていることも十分に理解している。

「こっちで把握しておきたかっただけだ。無理に使わせるつもりはない」

セルジュはそう言い残し部屋を出ようと扉に向かった。



「待って…」

流月の声にセルジュが足を止め振り返る。流月の真っ直ぐな瞳とぶつかる。セルジュはひっそりと零れそうになる溜息を留めた。

「助けてもらってる事に気が付かないまま、助けられるのは嫌。全部知りたい、全部知った上で…」



ー全く知らない私を助けてくれた皆を助けたい。

それは本心。でも『ここに居る理由』が欲しいだけなのかはよく分からない。心配してくれる人達を放おってここに居たいと思ってしまった。そんな自分勝手な気持ちは知られたくない…



「私の意志で皆を助けたい。お願いします、私をちゃんと騎士にして」





…………





「で、何の用なんだ?」



いつもならどんなくだらない内容であっても用があれば団長室に入り浸るグレンが姿を現さなかった。

忘れたのか?と、グレンを待つ口実に手を付けた明日の仕事を手早く片付け、いつもより遅めの時間に自室へ戻った。

それを監視していたかのように、隊服の上着を脱いだところでグレンがやって来た。酒瓶を持って。


グレンは慣れた様子でセルジュの部屋の棚からグラスを2つ取り出し、持ってきた酒を注ぎ入れる。


「んーーーー情報共有しておきたくて…?」

そう言いながらグラスをセルジュに渡し、ベッドへ座った。セルジュはグラスに口をつけ、椅子に座る。


「流月が『ここでも何もできない』って言ってた」

「………?…あぁ、第三で言ってた…」

セルジュは第三謁見室での疲れた様子のグレンを思い出した。

グレンはゴクリと酒を呷った。

「そもそも長の印が見つかったことの重大さをアイツは分かってない!どんっだけオレ達が谷中探し回ったことか…」


いつものグレンらしくない言い方が気になった。

「…それにアイツが居てどんだけ隊員達が楽しそうにやってるか、お前が緩みきってるか分かってない!!」

「それは関係ないだろ!!…酔ってるのか?」

「酔ってねぇよ!!!そもそも……ホントに何もできなくたっていいじゃねーか、そんなんで文句言うやつなんているか!こんな、何も、誰も知らないとこに来て、何もできなくて当たり前だろ」

激しく同意見のセルジュは今回は余計なことを言わずグラスに口をつけた。グレンは空になったグラスに再び酒を注いでいた。

「それ流月に言ったか?」

「言ってねー…妹と同い年の流月にあんな顔でそんなこと言われたら、こんな落ち着いて話なんか出来るわけねぇだろ」

「くくっ、お前案外シスコンだもんな」

「うるせー!!」

団長室での会話を避けたことがなんとなく分かった。こんな気の抜けた姿を万が一にでも他の隊員に見られる訳にはいかなかったんだろう。そう思うとこの状況が笑えてくる。



「だから、琉月が『騎士になりたい』って言ってくれて、オレはよかったと思ってる」

急に真面目なトーンになるグレンに、一番共有したかったのはここかと理解する。グラスを握る手に力が入った。グレンの言うことも勿論理解はできる。だけど。


「俺は……俺個人としてはやっぱり危険な目には合わせたくない。正式に騎士になって力を使えば、アリアナ姫が何と言おうと元老院に団長にされるだろう。そうなれば危険を避けるなんて限界がある」


「だけど流月が、あの子が望んでいる以上、俺にはどうする事も出来ない事も分かってる。それこそ独房にでも入れておかない限りはな」

ぶはっとグレンが吹き出した。あいつは突っ走るからなと笑いながら呟いている。


「それでも俺は…たぶんどうにかして辞めさせたくなる。正直お前が居てくれて助かる。更に丁度いい事に明日から長の捜索で俺も出ることになったしな。………流月を頼んだぞ」


「へいへい。こっちは任せて必死に探してこい」




「それはそうと……なんで流月を泣かせたんだ?つか最近流月、お前に懐いてない??」

話が纏まった、と安心してグラスに口をつけたセルジュが、思わず吹き出す。

「ばか、汚ねぇな!!」

「ゲホゲホっ!!……………お前が変なこと言うからだろ!!」


「いやーーー、だってあの感じはなんかあったんだろ?さっさと吐けよ」そう言いながらセルジュのグラスになみなみと酒を注ぐ。こんな量で酔う事はない。酒の力を借りられない事は分かっている。

が、流月への対応に関して自分でも正常な判断ができている自信のないセルジュはグラスの酒を飲み干し、たっぷり10分ほど羞恥心と戦った後グレンに全てを話した。


……


「お前…天然タラシどころが王族婚約者が未成年少女を口説いてどうすんだ、このバカ!!」

深夜の騎士棟にグレンの怒鳴り声が響いたのはここだけの話。

お付き合いありがとうございます。

諸事情により次の更新は11/14の月曜日とさせて頂きます。


流月は油断するとがんがん前向きになるか、自分に酔いきっちゃうかのどちらかでした。塩梅が難しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ