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頑な少女は竜の騎士に暴かれる?!  作者:


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11.覚醒

「っ………きゃーーーーーー!!!」


セルジュの背中にしがみつきながら、歓声をあげた。

すぐ横にある漆黒の翼が羽ばたくたび、ぐんっと加速する。既に流月の視線の高さには空しかない。

下方を覗き込むと、夕陽に染められた城下町が輝いて見えた。行きに馬車で通ったであろう街道もあっという間に超えてしまいそうだ。街道を囲む森のずっと向こうには海も見える。


「大丈夫か?乗具がないから乗りにくいだろ」

セルジュが後ろを振返って確認する。

「大丈夫!とっても気持ちいいよ!直接触れれて嬉しい」

セルジュの背中から片手を離し、座っている場所、黒竜の背を優しく撫でる。艶々の鱗は思っていたより柔らかく、体全体がビロードの様な触り心地だ。


セルジュはそんな流月の様子を確認して体勢を戻した。思わず微笑んでしまう顔を隠して。


………



「………悪いが、竜の姿は見せられない。あれは魔力を凄い使うんだ」

額を嫌な汗が伝う。流月のキラキラ攻撃によく耐えたと、セルジュは内心自分を褒めていた。が、途端に、明らかにしょんぼりする流月に簡単に気持ちが揺らぎそうになる。


「…………買い物は、終わり?せめてあっちなら…」と、城下町を出て、街道から外れたところでセルジュはおもむろに指笛を鳴らした。

状況を把握できないままセルジュに連れられた流月は、自分が何かの影に入っている事に気付き、空を見上げる。

真上に竜がいた。

驚いて言葉の出ない流月をよそに、竜はゆっくり降下しセルジュの隣に降り立った。


………



「ねえ!セルジュ!何で指笛なんかでこの子呼べたの?」

相変わらずセルジュにしがみつきながら流月は質問する。景色も黒竜も綺麗だが、空を飛ぶと言う行為に慣れていない流月は恐怖心もゼロではない。

「黒竜の特性だな。竜属性のコイツは対になる者との繫がりが強いんだ。だからどんなに遠くにいても呼べば来てくれる。」

そう説明しながら、黒竜の首を優しく撫でる。黒竜を見つめる瞳がとても優しい。

思わず心臓が跳ねる。流月は誤魔化すように言葉を重ねた。


「…そんな大事な事、私なんかに話していいの?監視対象なんでしょ?」

「あー……もう騎士団内でキミを監視対象だって本気で思ってる奴なんて一人もいないし。アリアナ姫も含めて」

しがみつく手の力が無意識に強くなる。セルジュは気づかないまま言葉を続けた。

「迷子?…程大人しくないな。……迷い猫?みたいな感じか?くくっ……好きなだけ飼われてればいいんじゃない?」


何も気負う必要のない居場所が出来たようでじわりと涙が溢れそうになる。が、猫扱いされた事が引っかかって素直になれずセルジュの背中を軽く抓る。

「私、今年成人なんですけど…」


夕陽に輝く王城が目前に迫っていた。





黒竜は騎士団演習場の一角に降り立った。

「ありがとう、セルジュ。」

セルジュに手を引かれ、流月は黒竜の背から降りた。

セルジュは黒竜を労う様に撫でたあと、腰に付けたポーチから紅い実を黒竜に食べさせた。流月の視線に気付き、一粒流月に渡しながら説明を加える。

「これは『プレナ』って言う木の実で竜の好物。ちょっとしたご褒美になる」

そう言ってもう一粒プレナの実を黒竜に食べさせる。

「私からもありがとう、黒竜」

手の上の綺麗な紅い実を黒竜の口元に運ぶ。黒竜は流月の手を噛まないように器用に小さな実だけを口に入れた。

「ふふ、くすぐったい…」



「ね!さっきの実って人も食べれるの?」

黒竜を返した後、揃ってミラの元へ向かう。

「…想定内の質問だな。毒はないから食べてみれば…」

そう言いながらポーチの中を探る。

紅い実が出てくるのを待っていると、少し先を歩くミラの姿を見つけた。


「ミー……っ!!!」

声をかけようとしたその時。


魔法演習場ではないこの場で。

魔法の訓練をしていたであろう騎士達の手元が狂ったのか、炎の塊がミラの背後に向かって勢い良く弾けた。


――暴走っ!!!


流月は迷わずミラの背に向かって走り出した。


炎の勢いは弱まる様子がない。

騎士達の騒ぐ様子に、瞬時に状況を把握したセルジュも舌打ちをしながら走り出す。



だめだ、間に合わない…!



それでも走ろうとする流月を、追いついたセルジュが制止する。このままでは炎に構わずミラに突っ込んで行くだろう。

「水魔法が使える者をすぐに集めろ!!医務官と、グレンも呼んで来い!!」

流月を羽交い締めにしながらも、周囲の騎士へ指示を飛ばす。流月は必死にセルジュの手から抜けようともがいているが、騎士隊長であるセルジュの腕はびくともしない。



流月が炎の先に見えるミラの背中へ手を伸ばす。

轟々と渦巻く炎に、7年前がフラッシュバックする。

体を張って流月を助けてくれた両親の顔が浮かんだ。


「ぃや―――――――――っ!!!」

…キイイイイイイイイイイイイイイ!!!!

「なっ!?」

特大の共鳴が流月とセルジュの体を襲った。体の自由が全く効かず、指一本すら動かせない。




「流月?」

流月の叫び声に驚いたミラが後ろを振り返ると、炎が熱を感じられる程間近に迫っていた。駄目だ、と思う距離に目をつぶること以外何もできなかった。


「っ……?」

が、いくら待っても炎がぶつかることはなかった。先程感じた熱も何故か消えている。

恐る恐る目を開けると、球体の壁に沿うように炎が止まっていた。

「え…何、これ?」

球体の壁は触れることも出来たが、炎は熱もなく壁の向こうで蠢いている。


燃え続けているのに、熱くないなんて…

呆然としていると炎が小さく消えていった。球体の壁も存在していない。


消えた炎の向こうに、こちらへ手を伸ばす流月が見え、そのまま気を失ってしまった。

力の抜けた体は背後に居たセルジュが支えるが、そのセルジュも強過ぎる共鳴により膝を着いた。


「流月っ!!!セルジュ隊長!!!」

ミラは慌てて二人の元へ駆け寄り、流月の体を一緒に支えた。セルジュの額には脂汗が浮かんでいる。呼吸も荒い。

「何があったんです?流月は…?」

セルジュはお手上げだと言うように首を振る。

「ミラ、無事で良かった。流月を医務室へ運ぶ。一緒に来てくれ」


「もちろんです」

流月を抱えたまま二人は医務室へ向かった。

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