3~「ハットトリックを決めたら付き合ってくれ!」と言われた女の子の高校三年間~
リハビリ作品八作目。
「第3回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品の為、1000文字以内の超短編です。
高校一年初日。
「俺がハットトリックを決めたら付き合ってくれ!」
告白された。
私は容姿に優れているらしく、告白もよくされた。
そのせいで嫉妬や逆恨みによって私の中学三年間は散々だった。
だから、高校三年間も何も期待してなかったが、初日からこれか。
「……じゃあ、全国の決勝? とかで出来たら」
流石にハットトリックくらいは知っている。
一人で三点決めるアレだ。
念には念を入れて全国決勝にした。
男子は「わかった!」と笑って答えた。
不安になって女子マネをやってる唯一の友達に聞いた。
「え? 普通に無理。全国決勝ででしょ? こんな無名校で」
男子が私より馬鹿なだけだった。
「あー、でも、」
あの男子は、有名なサッカー選手らしい。
何故かこの高校に来たそうだ。
相棒のキーパーの人と。
人込みが苦手な私は図書室で勉強をしてから帰っていた。
帰り道グラウンドではあの男子が大声をあげながらみんなを鼓舞していた。
もしかしたらという不安もあり、帰りにサッカー部の練習を見るのが恒例になった。
その年度の冬、冬の県大会決勝で全国常連と戦い七対一で負けたらしい。一点はその男子だったそうだ。
二年目。
その夏の大会で、県大会決勝で彼は二点を決め全国大会出場となった。
が、怪我をしてしまい、全国一回戦敗退。
彼は別メニューでトレーニングルームに毎日いた。
冬の大会、彼は出場出来なかった。
三年目。
「そんなに見てるんなら」と親友にマネージャーに誘われた。暇な時という条件で引き受けた。達成できるかどうか不安だったから。
ある時何故私に告白をしたのか聞いてみた。
中一の時、親友が関わっているからと私はサッカー部の試合を見に行ったことがあった。
負けて悔しがる姿に私もつられて泣いた。
それを彼が見てたらしい。
「まあ、一目ぼれだよ」
それから三年ずっと私の事を想っていたらしい。
この人は、馬鹿だ。
色んな運命の悪戯もあったのだろう。
その年の冬、全国大会決勝に。
後半ロスタイム、二対二。
彼は既に二点取っており厳しいマーク。
彼にボールが回ってくる。
囲まれてはいるが打ってもいい場面。
けれど、彼はパスをした。
パスを受けた一年生のシュートがネットに突き刺さった。
見事、全国優勝。
「ハットトリック、ダメだったね」
「うん……」
「ねえ、達成した時の約束は決めてたけど、できなかった時は決めてなかったよね。だから私と……」
彼の笑顔が私の胸に突き刺さり、私に彼氏が出来た。そんな、三年間。
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