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ゾンビが蠢く世界  作者: ありがとう君
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第5話 拝借

「武器は何がええと思う瑠偉ちゃん?」


「・・・・・・・・・・」


真横でユラユラ左右に揺れている瑠偉ちゃんに振り返り話しかけるが当然無表情無反応で残っている右目と目が合うだけだ。


「ま~なパッと思いついたのが金属バットやけど、後は角材とか鎌それに鉄パイプかゴルフのドライバーとかアイアンぐらいかな~、それか逆に俺の黄金の幻の神速の右拳のみって手もあるけどな。」


慎吾は右手をグルグル回してグーパーグーパーと広げて右拳を作ると最後に拳にチュッとキスをするとダメ元、ダメ確定で横を見る。こっちを見ている瑠偉ちゃんはただユラユラ左右に揺れている。


「ふぅ~俺の右拳ギャグはギリセーフってとこやったな。子供には分かりにくかったかもな・・・・・まあぁ~子供ならしゃーない・・・・・ウンウン」


完全敗北と分かっている戦いに挑んで完全敗北している男が右拳を解きながら自分を慰めて何かをほざいて頷いている。


「まあぁ~ギリセーフやった右拳ギャグは少し置いといて後は他の武器は何かあるかな~?う~ん今思い浮かぶのは拳銃とか・・・・・・・まあぁ~無理やな」


一瞬刑事ドラマやゲームや漫画の中で見る拳銃が頭に浮かぶが『実物見た事無いし、扱い方分からんし、手に入ると思わんし、ガンマニアじゃないし、ここ日本やし』このゾンビが蠢く異常事態でも知識も興味も無かった拳銃は現実味が浮かばない、『拳銃はうっかり手に入れた時に考えましょう』『ゾンビも現実味無かったけど見たから対処中』『百聞は一見に如かずじゃい』で現時点で拳銃は却下。


「そうなると」


慎吾はもう一度部屋の中を見回る、部屋にはキッチンに包丁、玄関に傘、木のハンガー、トイレのシュポシュポをとりあえず選ぶ。


「弱っっっ!!・・・・・まあ普通野球やゴルフしてないとバットやクラブとかないわな~ましてや角材、鎌、鉄パイプって・・・俺の家にも無いし、一般家庭に常備してる訳無いわな・・・・・」


包丁、傘、木のハンガー、トイレのシュポシュポをリビングのテーブルに並べて目の前で腕を組んで溜息が出る。


「とりあえず射程距離と威力と耐久考えたら金属バットかな、角材、クラブは耐久の面で折れそうやし鉄パイプも耐久の面で曲がりそうやし鎌は射程距離短そうで血糊とかで切れ味鈍りそうやし、まあぁ~ぜ~んぶ人間はもちろんゾンビに試した事無いから想像なんですけどね・・・・・そう言う事で金属バットGETしにいきましょか瑠偉ちゃん」


ノートパソコンの前に戻り地図検索で近所にスポーツ用品店を見つける。ショッピングセンターやホームセンターも発見したが徒歩では距離が有り16歳で車も免許も無く、それに『そういう場所は人が多数集まるしどうせなんだかんだで修羅場になるんでしょ』っと1回だけ見たゾンビ映画の恐ろしくて印象に残っていた場面と重ね合わせていた。瑠偉ちゃんはゆっくりユラユラ左右に揺れている。








「よしっ!!~めっちゃ怖いけど行きましょか」


玄関で今まで履いていたサンダルを諦めて、少しサイズが合わないがスニーカーを拝借して無いよりはマシで右手に包丁、左手に傘を握り扉のドアスコープを覗く。玄関先には7匹のゾンビ達の姿は完全に消えていて呻き声も足音も聞こえない。


「そういえば、いつの間にか下の部屋のゾンビも静かになってるな・・・・・休憩か?諦めか?・・・分からんけど、まあぁ~その調子で頼むはゾンビ君。それじゃあ瑠偉ちゃんはどうする留守番しとく?」


「・・・・・・・・・・」


「オッケイ!!留守番は寂しいわな、一緒に行こか?、よしっ!!、一緒に行くって約束したしな」


無言で付いて来て真横に立ちユラユラ左右に揺れて慎吾を見つめている瑠偉ちゃんを連れて行く事を決断する。それから静かにチェーンとロックを外し少しづつ扉を開け顔を出し左右を確認する。自分の目で確かめて玄関前視野に入る場所は大丈夫、一応玄関の扉を見てみると血や肉や皮膚や髪がへばり付いていたが扉と留め具の損傷は大丈夫と判断そして静かに中腰の態勢で1階まで降りきる。瑠偉ちゃんは両足を揃えて『ピョンピョン』と飛び降りて着地すると少しふらつきながら一段一段静かに付いて来る。


「団地の1階もゾンビ達は大丈夫っと、てかっ瑠偉ちゃん降り方独特ですな」


慎吾は1階の階段から顔だけ出し周囲の安全を確認して瑠偉ちゃんに話かけてからゆっくり警戒してスポーツ用品店までを進んで行く、移動中は呻き声も聞こえずに数分進むと何事も無くスポーツ用品店が見える。


「タナカスポーツ発見、ここから見るかぎり店の中は照明が付いて店内は荒らされたりゾンビの気配は無い感じはするけどな~、あと人影無い様な感じやけどって店の人はどないしたって事になるけどな・・・・・」


道路に駐車している車に隠れながら店内の様子を探る、タナカスポーツはこじんまりした町の個人経営のスポーツ店でレジが見えるが人の姿は分からない、『こういう店は住居込みで客がいない時は奥にいて、呼ぶか入口のセンサーで店員が出てくる場合はあるからな~』慎吾は考える。


「よしっ!!とりあえずここにおってもしゃーないから行ってくるわ。瑠偉ちゃんはどうする?」


見た感じ異常は無いと判断して屈みながらなるべく物陰を探してタナカスポーツに近づいて入口まで進む。瑠偉ちゃんは慎吾が移動すると当然付いて来る、『はい、瑠偉ちゃんは付いてきます』を脳内にインプット完了。


「失礼します~無料で金属バット貰いにきました~」


一応声を出して反応を伺う、BGMも無く店内は物音も呻き声も聞こえない。


「誰もいませんか~?ゾンビ大量発生の緊急事態なので~それじゃあ金属バット頂きますねぇ~」


次も物音も呻き声も聞こえないのでそのまま金属バットが置いてある所まで進み一番長くて重たい金属バットを『それじゃあ~お言葉に甘えて』と1本拝借して弱すぎる包丁と傘を『つまらない物ですが良ければコレを』の気持ちを込めて空いたスペースに適当に陳列しておく。


「う~ん誰もおらんみたいやな・・・・・」


1分程様子を伺うがやはり物音も呻き声も聞こえない。


「まあぁ~ゾンビがおらん事はええ事なんやけど・・・・・・・店の人がおらんのはめちゃくちゃ怖いんですけどね・・・店の入り口入った時もチャイム的な鳴らんかったし?それか客には聞こえ無いけど奥の店員だけ聞こえるタイプかも分からんけど・・・・・それにしても怖いな・・・・・」


悩みながら店内を見渡しているとレジの上に『店の者は席を外してますので御用の方はボタンを押して下さい』のプレートを見つける。


「なるほど今は何かの理由で離席中でボタンを押して店の人を呼ぶのね・・・・・なるほどなるほど、だが俺はそのボタンを押す前にもう少しお言葉に甘えてサイズが合って無くて少し気持ち悪いジャージとスニーカーも拝借しとこうかな・・・それと他にええのがあれば遠慮しないでお言葉に甘えさせて貰おう、なっ!!瑠偉ちゃん」


「・・・・・・・・・・」


瑠偉ちゃんのゆっくり左右に揺れて残っている右目で無言で見つめているのを確認して。それからサイズピッタリの有名スポーツブランドのお高い黒のジャージとスニーカーを拝借してその場で着替える、もちろん着ていたジャージとスニーカーは空いたスペースに適当に陳列しておく。他には有名スポーツブランドのお高い背負い袋を拝借してその背負い袋に拝借した小物を放り込んでおく。


「よしっ!!、ええのを拝借できたな、そしたらもうこの店には必要な物は無いな」


新しいジャージやスニーカーに満足してレジの上の『店の者は席を外してますので御用の方はボタンを押して下さい』のプレートの前まで移動する、レジのカウンターの向こうは通路が見えて曇りガラスの扉が見えて奥の住居に繋がっていそうな雰囲気を感じる。


「どうするか?」


曇りガラスに気を配り注意を払うが店内同様物音も呻き声も聞こえない『う~ん別にイチイチ調べる必要は無いかな、とりあえずここでの目的は達成したしな』


「よしっ!!瑠偉ちゃんわざわざ危ない橋渡る事も無いから帰ろうかな」


慎吾は瑠偉ちゃんに話しかけるとタナカスポーツの入り口に歩きはじめる。瑠偉ちゃんは真横でユラユラ左右に揺れて並走して付いて来ている。





















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