第34話 相手に願うしかない
「着いたっス、瑠偉ちゃん姉さん乗って下さいっス」
「ウ”ァァァァァ」
瑠偉ちゃん希唯依は全速力で走りきると愛車までゾンビや人間に出会わず無事到着して乗り込む。瑠偉ちゃんが助手席に座るのを確認するとアクセルを踏み大きな本屋の駐車場まで急いで戻る。
「お嬢ちゃんぁぁぁん、ダメでしょ~お父さんとお母さんを置いて逃げちゃ~、お嬢ちゃんが逃げたから~お父さんとお母さん動かなくなっちゃたよ~、悪いお嬢ちゃんやな~」
「・・・・・えっ!?お父さんとお母さんは無事なんですか?」
「うう~ん、死んじゃったよ~お嬢ちゃんが逃げるから~俺達が殴り殺しちゃったよ~、可哀そうな事をお嬢ちゃんぁぁぁんしちゃったね~」
「・・・・・・・・・・え!!!」
真奈子が慎吾と電話をしていると、部屋のドアを蹴破り若い男が3人返り血を浴びて半笑いで鉄パイプを片手に部屋に入ってくる。
「それでお嬢ちゃんぁぁぁんは誰とお話してたのかな~、もしかしてボーイフレンドかな~お父さんとお母さん置き去りにしてボーイフレンドと電話して悪いお嬢ちゃんやね~だからお父さんとお母さんは死んじゃったんだよ~」
一番手前の赤いバンダナを巻きキャップの鍔を横に向けてダボダボなファッションの若い男が鉄パイプを床に擦らせながら真奈子が手に持つスマホを見て半笑いで馬鹿にした口調で聞いている。後ろの2人もニヤニヤ半笑いで見ている。
「・・・・・・・・・・えっ!??お父さんとお母さんを殺しちゃったんですか?・・・・・」
「ゴラアアアアアアアアアアア、人の質問には答えやんかいっ、ガキガアアアアアアアアア」
若い男は突然キレると鉄パイプを立ち上がって驚愕と失望の表情の真奈子の右足の太腿に叩きつける。
「きゃあああああああああああ痛いいいいいいいいいい」
衝撃と激痛に真奈子は太腿を抑えると叫ぶ。
「お嬢ちゃんさ~俺の質問分かるよね?殺しちゃうよ?」
「・・・・・・・・・・はい・・・」
「それで誰?」
「・・・・・・・・・・お兄ちゃんです・・・」
半笑いの男は激痛に耐えて答える真奈子を見下ろしている。
「ふ~ん、お兄ちゃんか~、おいっどうする?」
半笑い男は後ろを振り返ると他の2人に聞いている。
「知らね~よ、さっさと終わらせてもう行こうぜ」
髪を茶色に染めている男が気怠そうに答える。
「まぁ~待てよ、俺良い事思いついちゃったよ~」
黒色のバンダナを巻いた男が真奈子とスマホを見ながら話す。
「おいっ!?ちょっとスマホ貸せ?」
後ろからニヤニヤ見ていた黒色のバンダナの男が真奈子の前に立つと右手を差し出しながら言う。
「・・・・・・・・・・はい・・・」
恐怖と激痛で震えあがっている真奈子は素直にスマホを手渡す。
「お嬢ちゃん~素直だね~、素直な子は俺嫌いじゃ無いよ~」
黒色のバンダナの男は半笑いでスマホを受け取るとスマホに話し掛けた。。
「もしもし~お兄ちゃんですか~初めまして~食い物が欲しいだけでここのおとんとおかんを殺した者です~あっ!そしてこのお嬢ちゃんのこれからどうなるか握っている人です~ヨロシクね~」
慎吾はスマホを痛い程耳に押し当てて怒りと無力に圧し潰されて本屋の本棚に背中を預けて一部始終を聞いていた。
「・・・・・はい・・・妹を見逃して助けてくれ・・・頼む・・・」
相手の男の声を耳で受け取ると怒りを押し殺して通話を開始する。
「お兄ちゃんかな?~まず話す前に最初に言っとくけど、俺の質問に答えてお兄ちゃんは俺に質問しないOK?」
「・・・・・はい・・・」
「物分かりが良いお兄ちゃんで良かったよ~、もし生意気だったらこのお嬢ちゃんを鉄パイプで殴りまくる所だったから~良かった良かった、妹が痛がる声とかお兄ちゃんは嫌だもんね~、後は俺が質問の答えが嘘と感じたり生意気だな~って感じてもお嬢ちゃん殴っちゃうからね~それもOK?」
「・・・・・はい・・・」
「良いね良いね~話が合いそうなお兄ちゃんで俺も嬉しくなっちゃうよ~それじゃあ~話始めちゃおうかな・・・あっ!?その前に謝らなきゃ~おとんとおかんが俺達に泣きながら許しを請うてるのに無視して撲殺してゴメンね~許してくれるよね~お兄ちゃん?」
「・・・・・・・・・・は・・い・・・・」
相手の男達に両親を殺され舐められて馬鹿にされ気が狂いそうでブチ切れそうになるのを拳を握り締め唇を噛み締めて『今は真奈子の為』だけと強く決心して堪えて対応する事に決める。
「それじゃあ~お兄ちゃんはおとんとおかんを殺した事笑顔で水に流して許してくれた事だし話しようかな~、じゃ~まずは―――――」
通話の男の半笑いの声が怒りを増幅されるが全神経を総動員して我慢する。そこからは氏名、年齢、住所、現在地、家族構成、食料を見た場所、ゾンビを見た場所などを馬鹿にされ失笑され真奈子で脅され質問を繰り返された、慎吾は『住所、瑠偉ちゃん、希唯依』などは嘘の住所、1人で行動しているで上手く丸め込むなどして乗り切る、質問中は相手の男の機嫌を損ねなかったらしく真奈子には危害が及ばなかった。途中で瑠偉ちゃん希唯依が愛車を持って帰って来たが手で制して『運転をして実家に向かっている事が相手に怪しまれたら真奈子が確実に危険』と判断すると本屋の入り口付近で待機して貰っている。
「そろそろ俺の聞きたい事はこれくらいかな~」
通話の男は慎吾の答えに満足したらしく話を終わらせに来るのを感じる。
「・・・・・それでは妹はそこに残しておいて下さい、俺が向かいに行きますので・・・」
「う~ん、分かった~でもね~お兄ちゃん?この今の俺達の生きてる悲惨な現状だけど~99%ぐらいは酷いけど残りの1%ぐらいは楽しいと思わない?」
「はい」
何が言いたいのか理解出来ないし慎吾は相手が話がしたそうな雰囲気を察して促す意味の返事をしておく。
「そうそう、お兄ちゃんもそう思うよね~、だってね~俺達にとって絶対的な存在の警察とか怖い大人とが絶対的じゃ無い事って普通の世界の時では考えれない訳よ~」
「はい」
「簡単に言えば警察には権力~怖い大人には暴力これって俺達みたいな者にしてみたら絶対勝てないわけよ~どっちも怖いし数も多いし強力だし~」
「はい」
「だけど今は何とかなっちゃうんだよね~俺達でも・・・警察と怖い大人達が怖くないし数も減ったし俺達まで手が回らなくなっちゃったからね~、自分や自分の身近の奴を守るので精一杯でゾンビ、病人、怪我人、救助、疲労、恐怖もそれ以外にも考えれば考える程有るからそうなるよね~だから他の俺達みたいな連中も当然相手出来ないよね~」
「はい」
「うんうん、そういう事で俺達は好き勝手出来る訳だ~、止める奴がいないから~リミッターを解除して強盗、強姦、殺人何でも出来る訳よ~好きな時に遠慮なく気分次第で~それがね~お兄ちゃん今な訳よ~分かる?」
「はい」
「お兄ちゃん良いね~聞き上手だね~俺嬉しくなったから特別に問題出すから答えてね~」
「はい」
「じゃ~問題です。ジャージャン♪これからこのお嬢ちゃんはどうなるんでしょうか~1,俺に殺される?2,他の2人に殺される?3,全員に殺される?さあぁ~どれお兄ちゃん答えをどうぞ?」
「・・・・・・・・・・ま、ま、待ってくれ・・・な、な、何でもするから止めてくれ・・・」
楽しそうに自己満足の自分語りをしていた通話の男に突然問題を出された事に少し嫌な予感はしたが3択の内容で慎吾は一瞬頭が真っ白になり動揺する。
「う~ん、お兄ちゃんは何もしなくて良いんだよ~、ただ1つを選ぶだけだよ~後は俺達に任せてね♡」
笑いを堪える通話の男は弱者を弄ぶ吐き気が出そうな声が耳に届く。
「・・・・・ほ、ほ、本当に、や、や、止めてくれ、お、お、お願いしますお願いします、止めて下さい、お願いします・・・・・お願いしますお願いしますお願いします・・・・・」
性別と声しか分からない男に慎吾は、立っていられなくなり膝から崩れ落ちスマホを両手に持ち替えて祈るような姿勢で必死に懇願する。
「う~ん、お兄ちゃんは話が分かるって思ってたんだけど、ふ~ん違うのね・・・う~んどうしようかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・お、お、お願いします、ほ、ほ、本当に妹を、い、い、妹を見逃して下さい・・・お、お、お願いします・・・・・・・」
慎吾は祈るような姿勢から土下座の姿勢になると、許しと懇願を全力で無機質なスマホの向こう側の何回殺しても殺したりない相手に願うしかない。
「後3秒・2・1・0、はいタイムオーバーで~す、それではお兄さんサヨ~ナ~ラ~」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
そう最後に言うと通話が切れる。慎吾は土下座の体勢で両手で持つスマホをただ無言で見つめるだけだった。




