第28話 もう大丈夫っス
「ごらぁアアアアアアア、こっちじゃアアアアアアアアアア
慎吾は敢えて大声で気を引く為にアパートの1階の木製の扉を激しく叩くゾンビ2匹に走り詰める、だが慎吾達が大声で叫び走り始めたと同時に木製の扉は2匹の連打の叩く威力の衝撃に耐えられず留め具ごと破壊され外れると内側に倒れてしまう、慎吾達の大声も注意を向けられないままゾンビ2匹が部屋の中に呻き声を上げて突入するのが目に入る。
「真紀姉さぁぁぁぁぁぁんんんんん」
隣で慎吾に倣い大声で叫んでいた希唯依はゾンビが部屋に侵入するのを目撃すると名前を叫ぶ悲鳴に変わる。
「もう少しやゃゃゃ走れぇぇぇぇぇ、希唯依」
「はいっス、真紀姉さぁぁぁぁぁんんん」
慎吾達がアパートの倒された扉の前に必死に走って到着すると、部屋の中からゾンビの呻き声と人間の女の怒鳴り声が同時に聞こえる。
「「ウウウウウァァァァァ」」
「こっちくんなボケェェェェェ、しつこいんじゃゃゃゃゃ」
部屋の中では白のサラシと黒のジャージパンツ姿で木刀をゾンビ達に威嚇で振り回す赤髪の少女が健闘しているがゾンビ達は数発打撃を貰おうが怯む事無く突っ込んで掴みかかっていた。
「ちょい待てやぁぁぁぁぁぁぁ」
「待てっス、今行くっス真紀姉さん!!」
慎吾達はまた大声で叫ぶと倒された扉を踏みつけ部屋の中に飛び込むと赤髪の少女に掴みかかっていたゾンビ達は襲うのを止め上を向くと脱力状態になり一旦部屋の中が静粛に包まれ人間達の荒い息だけが聞こえる。
「真紀姉さん、真紀姉さん、大丈夫っスか?大丈夫っスか?」
希唯依は掴み掛かった状態で脱力状態のゾンビ達の手を木刀で振り払うと大きな呼吸を繰り返しながら座り込んだ赤髪の少女の所に駆け寄る。
「・・・・・おっ!希唯依か?久しぶりだな~お前は大丈夫だったか?」
「はいっス、私は全然大丈夫っス、それで真紀姉さんは怪我とかは大丈夫なんっスか?」
「・・・・・私か私は噛まれちまったよ・・・・・1匹目のゾンビの右手の攻撃を払った時に隙を作っちまって2匹目の奴にこの腕を噛まれちまった・・・・・ハハハハハ!」
赤髪の少女の真紀姉さんは右手に持つ木刀を持ち上げると右腕の赤紫色の歯型の噛み痕を希唯依に見せると自分も噛み痕を見て悲しく笑う。
「真紀姉さん、真紀姉さん、真紀姉さん、真紀姉さん、真紀姉さん」
「おっ!ハハハハハ!!お前あいかわらず元気でうるさいよ・・・・・けど・・・まぁ~こうなったら私はお終いだ・・・お前は本当に怪我は無いんだな?」
「はいっス、私は全然大丈夫、大丈夫大丈夫なんっスけど・・・・・真紀姉さんが・・・・・」
「ハハハ!もう分かったから、ゾンビに噛まれちまったらお終いだからさ私もお前も諦めるしか無いのさ・・・おっ!そこの金髪のお兄さんと可愛い女の子は希唯依の新しい友達かいっ?」
真紀姉さんは慎吾と瑠偉ちゃんの存在に気付くと声を掛ける。
「・・・・・はいっス、慎吾の兄貴と瑠偉ちゃん姉さんっス、一緒にここまで来て貰ったっス」
「慎吾だ・・・こっちは瑠偉ちゃん・・・助けに来るのが遅くて・・・申し訳無いな・・・・・」
慎吾は頭を下げて詫びる。
「ハハハハハ!いいっていいって、そんな私の事より希唯依の事を宜しく頼むよ、こいつアホで常識無いけど可愛い奴なんだよ」
真紀姉さんは悲しく笑って希唯依を見ながら話す。
「・・・分かった、希唯依は仲間だからその約束は必ず守る」
「それはありがたいな希唯依を宜しく頼みます、だけど安心出来る金髪お兄さんの言葉だな・・・・・それと希唯依はそのままで良いからな好きな様に思う存分生きろ!・・・・・・・おっ?!!・・・・・これはそろそろ時間が無さそうだ・・・何か身体が異常に寒くて寒くて私の頭の中で目の前の希唯依を喰いたくて喰いたくて喰いたく喰いたくてでおかしくなって来てる・・・・・この私が・・・・・ハハハハハ・・・ハハ・・これは本格的にヤバイな・・・・・」
「真紀姉さん、真紀姉さん」
希唯依は涙を流しながら真紀姉さんの名前を連呼する。
「・・・・・金髪のお兄さん慎吾さんだっけ?最後の頼みなんだが私がゾンビになったら終わらせてくれ・・・・・今すぐでも良いんだけどもう少し・・・少しでも生きたい・・・最後の願いかな・・・ハハハハハ!それに私の勘だけどお兄さんはそんなの慣れてそうだから頼みたい・・・・・そ、それとき、希唯依にた、頼みたいけどい、色々な感情が邪魔してむ、無理だと思うしなぁぁ・・・お、お兄さんとはし、初対面でいきなりこ、こんな頼みはキ、キツイけどお、お、お願い出来るかなぁぁぁ?」
身体も震え出し視線も怪しく目も充血が始まっている真紀姉さんが泣きじゃくる希唯依を見て慎吾を見ると懇願する。
「分かった、任せろ」
慎吾は視線がすでに動かず天井の1点を見ている真紀姉さんの目を見て頷く。
「・・・す、す、すまん、なぁぁぁ・・・き、き、希唯依・・・な、な、何かで、わ、わ、私を縛ってくれぇぇぇ・・・・・・」
真紀姉さんは身体の揺れも激しくなり口も動か無くなり呂律も聞きずらく、希唯依に手足を縛って拘束してゾンビ後の自分に対処する様に話す。慎吾も希唯依もゾンビになれば真紀姉さんも脱力状態になる事は気付いていたが口には出さず最後の願いを言われた通りにしていた。
「・・・・・真紀姉さん!真紀姉さん・・・・・」
「・・・・・は、は、早くぅぅぅ・・・た、た、頼むよぉぉぉ・・・き、き、希唯依ぃぃぃ・・・」
「・・・・・は、は、はいっス・・・・・」
希唯依は泣きじゃくりながら諦めるとロープが無くガムテープを探し出し真紀姉さんの手足を縛る。
「・・・・・あ、あ、あ、あ、あ、ありがとうなぁぁぁ・・・き、き、き、き、き、希唯依ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・」
希唯依の名前を最後に口から吐き出すと真紀姉さんは大きく激しく揺れて目を瞑って動かなくなるが、数秒後に両目を見開き充血させて拘束していた手首のガムテープを引き千切ろうとするがそこで脱力状態の上を向きその場でユラユラ左右に揺れだす。今は慎吾達の目前には真紀姉さんを含む3匹のゾンビが突っ立っている。
「・・・・・真紀姉さん・・・・・真紀姉さん・・・・・真紀姉さん・・・・・」
目は充血しているが生前の姿形のままの真紀姉さんの腰に抱きつき希唯依は泣きじゃくりながら別れを惜しんでいる。
「・・・・・慎吾の兄貴と瑠偉ちゃん姉さん貴重なお時間ありがとうっス、心の整理出来たっス、もう大丈夫っス」
10分程慎吾は無言で見守っていた。上を向きただ揺れている真紀姉さんに泣きじゃくりながら希唯依は楽しかった話をして大泣きして苦しかった話をして大泣きして、最後に『ずっと尊敬して大好きでした』で締め括ると涙を拭って慎吾と瑠偉ちゃんに頭を下げている。
「うん、全然ええよ、もう別れはええの?」
「はいっス、もう大丈夫っス・・・」
希唯依は頭を上げると慎吾と瑠偉ちゃんに力強く言い切る。慎吾は頷き返し瑠偉ちゃんは無表情で見つめ返している。
「それじゃあ、始末するよ・・・始末したら瑠偉ちゃんお食事するよ?・・・」
「・・・はいっス・・・分かったっス・・・・・」
「よし!・・・始めるわ」
慎吾は1つ頷くと金属バットのグリップを握り締めると頭部に真芯をぶつけて2匹のゾンビを始末する、そして最後に残った真紀姉さんのゾンビを『希唯依は任せて』と強く思うとフルスイング一撃で頭部を粉砕して終わらす。希唯依は後ろを向いて耐える為に拳を握っていた。
「ふぅ~・・・・・・・・・・・終わったな、それじゃあ~瑠偉ちゃんお食事どうぞ・・・・・」
「ウ”ァァァァァ」
慎吾の言葉に瑠偉ちゃんは『分かった』と呻くとまず真紀姉さんの死骸に近付くと左腕を引き裂くと口元に持って行き咀嚼を始める、慎吾はそれを見ながら『瑠偉ちゃんは真紀姉さんの死には何の感情も無いのかな・・・・・それか真紀姉さんの死が分かってるとしても瑠偉ちゃんからしてみたらその他の死骸と一緒で食べる対象の1つでしか無いのかな・・・・・』とぼんやり考えながら瑠偉ちゃんの視線を受け止めている。




