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ゾンビが蠢く世界  作者: ありがとう君
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第2話 ゴメン、ゴメン少し待たせたっポイ?

真横に立つ朽ち果てた女の子の化け物は身動き一つせず疲れ果てた慎吾を見下ろしている。


『1 ここは3階一か八か窓から飛び降りるか?落下した場所がコンクリートか芝生か分からんけどミスったら捻挫悪くて骨折万が一も死ぬ事は無いやろ・・・・・待てよ?無傷以外でも打ち身とか少しのダメージ受けたら同じ速度ぐらいで追いかけて来る化け物から逃げれるか?他にもおるやろし化け物?』


『2 何となくこの朽ち果てた女の子の化け物襲う気が無いと言うか?殺気が無いと言うか?俺は達人でも武闘家でも無いから想像やけど襲うならこの部屋に飛び込んで来た時に襲えた筈やし、今この瞬間でも襲える筈やし俺の確信ゼロの想像を信じて素直に従ってとりあえずネックレス受け取るか?・・・・・待てよ?少しでも体を動かした瞬間とか?ネックレスを取ろうと動いた手を出した瞬間に襲われるのかも?』


『3 それか?この部屋で武器とか使えそうな物探し出して、隙を見てこの朽ち果てた女の子と玄関におる女性の化け物を倒してから他の場所に逃げるか?・・・・・待てよ?まず武器や使えそうな物あったとして、朽ち果てた女の子と女性俺で倒せるんか?頭を狙う?首を狙う?足を狙う?それにもし万が一倒せたとしても何処に逃げる?どうやって逃げるんや?外に出て大丈夫なんか?』


『4 このまま無になってこの倒れた状態を維持して、この部屋で立て籠もるか?そして朽ち果てた女の子が襲わないと信じて?もしかしたら朽ち果てた女の子と玄関の女性も気分が変わって遠くに移動してくれて助かるかも?・・・・・待てよ?この状態を維持する?食事はトイレは?精神が持つか?』


『5 諦めるか?もう無理やろ玲子もおらんし他のツレもどうなってるか分からんし?理解不能な化け物おるし?確実にこの付近はおかしいし何かニュースでも感染、壊滅なんちゃら言うてた気がするし?無理なんかな?・・・・・』


1から5のプラスとマイナスの考えが頭の中で繰り替えされるが今の慎吾には浮かぶ案を絞る事も決断する事も出来る状況では無く、ただ見下ろす朽ち果てた女の子を見上げる。『ドンドンドンドンドン』突然部屋の金属製のドアが肉が飛び散る嫌な音と呻き声と共に叩かれた。


「ひいッッッ!!・・・・・・・・・あっ!?えっ!?」


嫌な音の驚きに反応するとネックレスの事も考えていたので腰を浮かせて無意識に右手で朽ち果てた女の子のネックレスを情けない声と自分の行動が信じられない声を上げて握って固まる。しばらく疲れ果て荒れた呼吸を無理矢理抑え込み意味が無いが気配を抑えて信じられない右手を凝視する。その後数十秒固まりゆっくり見上げて朽ち果てた女の子を探るが右目の視線も右手の前に出された状態も身動き一つ変化もしていない。


「・・・・・大丈夫なんか?このネックレス掴んででも大丈夫なんか?・・・・・大丈夫なんやな?大丈夫やろな?大丈夫やな?大丈夫そうやな?・・・・・うんっ!!大丈夫。ネックレス大丈夫」


あり得ない大きな声の自問自答で自分を納得させると血と肉と異臭が粘着するネックレスを恐ろしく遅くゆっくりな速度で落とさない様に慎重に腰を浮かせた勢いで何故か女の子座り状態の胸まで持ってきて両手で握り直す、朽ち果てた女の子は動かない。


「よしっ、これでネックレスは安全に確保や」


これまたあり得ない大きな声で理解出来るか聞こえてるか全然分からないが朽ち果てた女の子に聞かせる強い気持ちと少しの動きや反応する事に期待を込めて報告すると慎吾は先程頭の中で考えた1から5の2の『襲う気、殺気は無く素直に従ってネックレスを受け取る』考えに決断する。朽ち果てた女の子は動かない。


「まあぁ~ネックレスと言えば首に装着するもんやしな~この可愛いネックレス装着してみたいしな~・・・・・あっ?でも少しだけ汚れてるし少しだけ異臭・・・あっ???・・・違うゥゥ!!に、に、臭うからちょっと立ち上がってそこの台所でササっと軽く流す程度に濡らそうかな~、その方が可愛さがアップすると思うしな~どうしようかな~???、あっ?それに玄関の扉・・・お友達かな?お、お、お友達なら少し悪いけど少しちょっとだけドンドンして近所の方々がビックリすると迷惑やしこの部屋に入って来た時に少し急いでて戸締りするの忘れてたと思うからちょっとササっと行って戸締りだけしたいかな~って少し思うけどどうしようかな~???」


鼻から離れた胸の前で両手で握っているだけで強烈な異臭、素手に直接当たる気持ち悪い感触のネックレスを見る振りをして、外からの恐ろしい扉を叩く音、叫び声、呻き声を必死に耐えながら『扉を叩く音、呻き声が大きく増えてる』事を隠して強張った笑顔で朽ち果てた女の子の動かない右目を恐怖と絶望を抑え込んで無理矢理明るめのトーンを上げた早口と大きな声で自問自答の振りで聞かせる。朽ち果てた女の子は動かない。


「・・・・・よしっ、ササっと行っちゃおかな~ハハハ、まずは玄関から行っちゃおかな~ハハハ」


慎吾はゆっくり恐る恐る立ち上がると乾いた笑顔と不自然な明るいトーンっで朽ち果てた女の子の目を逸らしながらカチカチに緊張してやっと一歩進むと立ち止まり背後に意識を集中させる。数十秒意識を集中させるが朽ち果てた女の子は動かない。すると少し息を吐き安心すると短い通路の先の『ドンドンドンドンドン』狂った音が止まらない金属製のチェーンとロックを恐ろしい遅い速度で音を鳴らさない様に閉めて終わらす、そして金属扉に設置されているドアスコープを覗き込む。


「ひいッッッ!!・・・・・・・・・」


そこには呻き声と血や唾や肉を飛び散らし狂った表情で叩く老若男女の化け物が7匹目に入る。そしてゆっくりドアスコープから目を逸らすと『金属なら大丈夫』と言い聞かせて朽ち果てた女の子の横をまた恐ろしい遅い速度で慎重に通り過ぎるとキッチンの目に辿り着き蛇口から勢い良く水を出す。


「ふうぅ~、何なんやろか?・・・これは一体このネックレスは何なんやろか・・・てかっ!!この状況は一体何なんやろか・・・・・・・クソッ、クソッ、クソッ、糞がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


キッチンの前に立ち冷たい水が手に触れた事と朽ち果てた女の子に襲われない事と金属製の扉で外の化け物からも当面安心を慎吾は確認出来た事で一瞬我を忘れてネックレスを力一杯擦り洗いながら無意識で頭に浮かび我慢していた事を大声で叫ぶ。すると玄関前の化け物が大声に反応して扉を叩く音と呻き声をヒートアップさせ、下の階から何かを叩く音と呻き声が聞こえ始める。朽ち果てた女の子は動かない。


「あっ!!やってもうた・・・あ~あ下の階の部屋にもおるのね・・・という事はやっぱり化け物は大量におる可能性が大やな・・・・・はあぁ~」


大きな溜息を吐いて心を落ち着かせると気を取り直し今とりあえず片づけるネックレス洗いに集中する。しばらくすると血や肉が洗い流されて悪臭も少し治まり真っ黒な皮のネックレスが目に入る。


「まあぁ~見た感じは普通の皮のネックレスやけど・・・この色はどんだけ黒いねんっ・・・ドス黒いやんけっ・・・それじゃあ~女の子の化け物の所でも戻りますかな・・・いつまでここにおっても一つ屋根の下は変わらんしな・・・・・」


「ゴメン、ゴメン少し待たせたっポイ?」


慎吾は今日一番の最悪は乗り越えたと思い込み少しだけ余裕が生まれ自分の気持ちも少しでも戻したいと朽ち果てた女の子の前までに戻るまでに『従順・お待たせしましたお嬢様』『敵意・待ったんか?おいっ!お前待ってたやろ』『クール・お待たせ』『フレンドリー』などなどの挨拶バージョンを考えながら向かい『フレンドリー』に決定して思い切って実行した。朽ち果てた女の子は動かない。













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