第14話 『ドンドン』すんじゃね~ぞ
完璧なおんぶスタイルで待ち受ける慎吾に、瑠偉ちゃんが『ピョン』と背中に飛び乗ると両手を後ろに回して太ももを支えると『めっちゃ軽いんですけど』と思うほど6歳?のゾンビの女の子は重さを感じさせずにそのまま慎吾は立ち上がる。金属バットはとりあえず背中にガムテープで固定しておく。
「それじゃあ~、金属バットがちょっと邪魔かも分からんけど我慢してね、降りるからね~、瑠偉ちゃん俺の首『ギュッ』っと両腕回して離したらあかんよ」
首に腕を回したのを確認すると。立ち上がりベランダの柵を超えて外側にぶら下がり足で下の足場を探すが以外に遠く足を『ブラブラ』させる状態が続き両腕も『プルプル』筋肉が悲鳴を叫び始めて慌ててベランダに這い上がり戻る。
「フフフッ・・・目測をミスっちまったぜ・・・全く遠くて全然俺の長い足が届かんとか・・・ふぅ~、こうやって人間は大きくなるんやな、昔の人が失敗は成功の基って言ってたしな・・・・・」
『余裕で下の階のベランダに行けるでしょ』が『そんなに簡単に下の階行けたら防犯ガバガバですよね』を1つ勉強すると自分の短絡的な考えを反省して、次の下の階に降りる方法を考える。
「・・・・・てかっゴメン瑠偉ちゃん・・・ちょっと降りてくれるかな?」
とりあえず無言で背中に張り付いてる女の子ゾンビに屈んでからお願いして降りてもらう。
「ゴメンね・・・余裕で下の階のベランダに行ける思ったけど・・・人生そんなに甘くなかったわ・・・」
瑠偉ちゃんは無表情無言で背中から離れてくれて真横でユラユラ左右に揺れて見つめてくれる。
「よしっ!!、終わった事や失敗した事はあんまり悩んでもしゃーない、次の作戦を考えていくのみ!!・・・・・」
1・団地の外に出て1階のベランダからよじ登って2階のベランダに行く。
2・カーテンなどでロープを作りそれを使って2階に降りる
3・諦める
一瞬で3つの案が浮かぶが即決で2に決定する。そう決めると顔も名前も知らない変態が住んでいた家なので、遠慮無しにベランダのカーテンを2か所力一杯引き抜くと、それを繋ぎ合わせてロープにしてベランダの柵の手摺りに固く結ぶと片側を外側に垂らす。下の部屋のゾンビが少しざわついたが無視をする。
「よしっ!!今度は無事下のベランダに降りれそうやな、カーテンの端っこもちゃんと届いてるしな」
ベランダの柵から覗き込み確認して納得する。
「それじゃあ~、瑠偉ちゃんお待たせ、2度目のおんぶタイムやで・・・何回も金属バット邪魔でゴメンね」
そう言って膝を付き前屈みになると瑠偉ちゃんにゴーサインを出す、すると瑠偉ちゃんはまた『ピョン』と背中に乗り両腕を首に回して準備を完了する。金属バットの位置と粘着具合も良好で、そのまま柵を超えカーテンの強度を確認して両手で掴みゆっくりと降りると2階のベランダの柵の上部に足が到着して静かに2階のベランダに降りる事に成功する。
「無事到着、それじゃあ~瑠偉ちゃんなるべく静かに降りてくれるかな?」
慎吾は囁き声で後ろを少し向くと話しかける。瑠偉ちゃんは無音で背中から降りるとユラユラ左右に揺れて、右腕も上下に『ピクピク』してゾンビに反応している。
「サンキュー、それで部屋の様子は?って別にええかな・・・」
2階の窓ガラスはカーテンは開いた状態で、部屋は照明も消灯しておらず明るく中の様子が分かると背中からガムテープで固定していた金属バットを両手で持つと、そのまま窓ガラスを叩き割って当然土足で踏み込む。
「は~い!!慎吾&瑠偉ちゃんがやっと来ましたよ~~、お前らドンドン煩いねんっっ!!【俺が羞恥&騒音&迷惑罪】で始末しにきましたよ~、それとあの失敗はお前らが悪いんじゃ~~~」
慎吾は先程ベランダから降りるのを失敗した、ぶら下がりからの両足『ブラブラ』両手『プルプル』は慎吾が100%判断ミスで悪いが『あの失敗はお前らがドンドンしたからじゃ~』の逆恨みを隠そうともせず『リベンジじゃ~』の強い気持ちでリビングに突入する。玄関の方から物音と呻き声がして男女2匹のゾンビが振り返ると同時に歩いて殺意全開で襲いかかって来る、目の前まで来るが直前で襲うのを諦めて大人しくなり玄関に戻ろうと逆を向いて後頭部をガラ空きにしたので、金属バットで野球のスイングのフルスイングで始末しようとするが先端が廊下の壁に接触して上手に振りかぶれない。
「マジか・・・お前らはどんだけ失敗させんねんっっ」
逆恨みはまだ続き何でもゾンビが悪いにしてきたが、少し冷静になると慎吾はスペースが有るリビングまで戻ると2匹のゾンビが来るのを待ち、男性の1匹目は慎吾も襲いかかる速度に慣れてきたので、目の前から襲いかかって来る瞬間にタイミング良く振りかぶるとフルスイングで前頭部を叩くと頭部を血と脳漿込みで吹っ飛び、胴体が木製テーブルの上に前のめりに倒れて動きを停止させる。女性の2匹目は廊下方向に戻ろうと背中を見せたので後頭部を野球のスイングで思いっきりブッ叩くと目玉が飛び出て脳みそと頭蓋骨は廊下に転がり胴体も数秒後に廊下に倒れて始末する。『あいかわらずこの飛び散る肉の破片や撒き散ってる血や液体は慣れませんな・・・ゾンビはすぐに受け入れた方やけど・・・・・』リビングの家具や家電と廊下の壁の至る所に存在しているのを見渡しながら感じる。
「これに懲りたら2度と俺の下の部屋で『ドンドン』すんじゃね~ぞ」
意味の良く分からない決めセリフを吐いていると、瑠偉ちゃんは真横からユラユラ左右に揺れてゾンビの残骸が転がる元に向かっている。
「瑠偉ちゃん?瑠偉ちゃん?この部屋はもう他のゾンビはおらんの?」
「ウ”ァァァァァ」
慎吾が背後から声を掛けると、一瞬立ち止まり振り返ると『大丈夫』の低い呻き声と小さく縦に頷き、またユラユラ歩き出すと廊下に横たわるゾンビの首の血と液体が溢れ出ている切断面にかぶり付く。
「はい、それじゃあ~ごゆっくりどうぞ・・・」
『大丈夫』の返事を聞き安心すると慎吾は他の部屋を探索と拝借出来る物を探しに移動を開始する。『間取りは一緒やな』当然家具や家電の配置は全然違うが同じ団地で間取りも同じなので、それ程不安も感じづに寝室、風呂場、キッチンを見終わり和室の扉を開けると部屋の隅の畳の上で全身噛み付かれ穴だらけで死亡している男の子と女の子の2体が目に止まる。
「マジか・・・・・そうなのね・・・」
2体の死体は時間が経過しているのか、体の腐食も進み血も固まって強烈な臭いを発していた。
『あっ!・・・もしかして?この部屋の住人は4人家族かも?さっきの襲ってきた男女ゾンビ2匹が何処か外出先で感染して、そのまま気付かずに家に持ち帰りここで発症してから和室の隅に追い込まれた男の子と女の子を食い殺したとか・・・それも年齢差から考えると・・・・・まさか親子?扉の鍵も閉まってたから外部のゾンビには襲われる事は無いし・・・・・・・それなら親が我が子を襲って殺した事になるんやけど・・・・・』と寝室を調べていた時に見かけた4人家族が写った写真立てと、幼い男の子と女の子の腐乱死体を目の前にして思わず想像してしまった。
「まあぁ~想像やけど・・・俺の自分勝手な想像やけど・・・もし当たってたら・・・最悪やな・・・」
そう呟くと。男の子と女の子の腐乱死体から目を逸らすと『これに似た様な悲惨な事は今じゃ当たり前になってるんやろな』も想像してテンションを下げるが暫くして気を持ち直すと家の中の調べを再開する。