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ゾンビが蠢く世界  作者: ありがとう君
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第12話 好き嫌いがなくて羨ましいですよ

3匹目の女性ゾンビの最後に残った右の足を食べきって地面に残る血痕と体液を綺麗に舐めると、ゾンビ達が着ていたボロボロの衣服だけが残った近くで瑠偉ちゃんが四つん這いの姿勢で硬直している。


「また固まってるな?」


お食事シーンを何もせずにただ眺めていた慎吾は『コンビニのお食事後でも固まってたな、あの時は成長してたけど』を頭に浮かべながら成り行きを待つ。すると四つん這いの状態で欠損して何も無かった左肩の切断面が揺れ出すと、次に全身が小刻み揺れ出して紫色の体液と赤黒い血を周囲に吐き出し『ブシュブシュ』と破裂音を鳴らし左肩から白い肉の塊が徐々に押し出されてくる。


「・・・・・・・・・・エグッ!!・・・血のシャワーの中から肉が出てきてる・・・」


そのシーンを10秒程、驚愕と衝撃で慎吾も身体を硬直させて口を大きく開けて目が逸らせなくなり経過を見るだけになる。『ブシュブシュ』の音も紫色の体液と赤黒い血も止まり、全身の揺れも止まると起き上がり瑠偉ちゃんが血と体液塗れで生まれたての左腕を不思議そうに一瞬見るが、その後は慎吾を見つめるとユラユラ左右に揺れて歩いて来る。


「・・・おかえり・・・左腕出てきたのね・・・・・」


真横に立った瑠偉ちゃんに振り向き残っている右目を見ながら話しかける。


「・・・・・それ・・・出てくるのは痛くは無いのかな?・・・めっちゃ血とか変な液体大量に出てたし・・・それに腕が体内から出てくるとか・・・俺なら絶対痛いと思うんやけど・・・」


「・・・・・・・」


痛覚が無く痛い痛くないの意味が理解出来なくて、質問の意味も分からないので瑠偉ちゃんは暫く考えて無言で慎吾を見つめ返す。


「そうか・・・よう分からんけど問題無しで大丈夫みたいやな・・・・・」


慎吾も瑠偉ちゃんが痛覚が無い事に気付いていないので、慎吾は『痛かったら流石に何かリアクションするやろ』と頭で処理して自分の質問が悪かったと思い瑠偉ちゃんの無言の返答を聞き流す。


「その左腕は普通に動くの?」


「ウ”ァァァァァ」


瑠偉ちゃんは首を縦に振ると、左腕を胸の高さまで持ってきたり、左手をグーパーグーパーさせて普通に動かせる事を慎吾に見せている。


「おっ!!、完璧やな、これなら問題無く左腕も使えそうやね、それにしても新しく出て来た腕も人間の肌みたいで綺麗やな」


左腕を動かしているのと時間の経過で肌に付着していた血や体液がこぼれ落ち、新しく生まれた左腕の肌が見えたので喜んで話す。


「けどまぁ~、ほんまに瑠偉ちゃんはゾンビ食えば食うほど成長して新しくなるな~、ほんだらこれからもドンドン食べやなあかんな・・・けどグロい成長場面はキツイんですけどな・・・・・」


それから瑠偉ちゃんの新しく生えた左腕質問コーナーを暫く続けて、肯定、否定、無視のリアクションを堪能すると、慎吾はガソリンスタンド周辺を探索することにする。もちろん瑠偉ちゃんは血と体液塗れの金属バットを『ペロペロ』舐めて綺麗にしている。




「それじゃあ~、行きますか」


まずはガソリンスタンド敷地内の洗車場、整備ルームでレンチなど工具を発見するが攻撃範囲が短いのでスルーして他を見て回るが異常は無し、最後に敷地内の従業員や客が待機する建物に向かうと奥の自販機の前で血の溜まりの上に首、腹、足など複数食い散らかされたここのガソリンスタンドの制服を着た『店長・清田』と笑顔の名札付きの写真を胸に付けた中年らしき小太りの人間の死体を発見する。


「うわっ!!・・・・・ヒドッ!・・・けどこの死体首から血が溢れてるからまだ新しいんかな?・・・さっきのゾンビ達に襲われたんやろな・・・・・」


慎吾が少し固まってから異臭に鼻を摘まみながら近づいて良く見る、瑠偉ちゃんはユラユラ左右に揺れて歩いて死体に到着すると血溜まりなど無視して四つん這いになり頭からかぶり付く。


「・・・・・・・・店長さんめっちゃ食われてますけど・・・なるほど人間もいける口なんですな・・・好き嫌いがなくて羨ましいですよ・・・・・やっぱりゾンビですわって・・・・・・・何でも有りやなっっっっっ!!・・・」


慎吾は人間の死体にドン引きで、それに食らい付く瑠偉ちゃんにもドン引きしながら、ガソリンスタンド2度目のお食事タイムを眺める。


「は~い、おかえり。そんなに服汚してもうほぼ赤色のお洋服ですやんかっっっ」


真横に来てユラユラ左右に揺れて慎吾を見つめている姿は、顔面、洋服は勿論髪の毛の抜け落ちた頭皮の間にも重ね重ね血と体液が上塗りされて赤黒くなっている、その瑠偉ちゃんを上から下まで見てから『部屋に瑠偉ちゃんの洋服残ってたかな?』を考えながら話す。


「それじゃあ~、この部屋は特に欲しい物無いから、一応周囲をチェックして給油してから帰って瑠偉ちゃんのお着替えするよ」


この待機室を見渡したが欲しい物も無く、外に出てガソリンスタンドの外壁を一周するがゾンビの気配も瑠偉ちゃんの右腕も反応しないので、車を停車させた場所まで戻り移動させると、ガソリンスタンドのレジの中のお金を拝借してそのお金で給油してから拝借した3個のポリタンクも満タンにして車に積んでおく。


「備えあれば患いなしやな、これで当分安心やね瑠偉ちゃん、それじゃあ~行くね」


瑠偉ちゃんが座席に座るのを確認すると車を発進させる。途中数体のゾンビは発見するが何かをする訳でも無くその場に留まり揺れていて、後は対向車も事故を起こしている車両も無く人間の姿も見当たらない。面倒な事も無く来た道を戻りセダンが突っ込んでいるコンビニの前を通り過ぎて部屋に到着する。


「オッケイ~、無事到着しました。ありがたく拝借した荷物は車に放置してもしパクられたら勿体ないから部屋に運ぶから瑠偉ちゃん着替えるのもうちょっと待っててね~」


車は団地の階段のすぐ横に止めると後部座席に積んでいた段ボール2箱とポリタンク3個を息を切らしながら部屋の中まで運ぶと慎吾は廊下に倒れ込む。


「めっちゃ疲れた~、ちょっと休憩~」


瑠偉ちゃんに見下ろされながら10分間程休むと身体を起こしてリビングを通り過ぎて寝室に行くとクローゼットを開けて瑠偉ちゃんの着替えの洋服を探す。胸にロゴの入った青いTシャツとデニムのハーフパンツが残っていたのでそれに着替え始める。


「瑠偉ちゃん、左腕が新しく生えて回復したけど同時に身体全体も回復してるんやね?すげーな回復力」


最初に見た身体は食われて欠損した跡が至る所に目立ち、正面は胸部、腹部、膝下は骨が見える程で、背後は臀部の肉も無く背中は臓器と背骨が見えて首の骨は折れていた。現在は全ての欠損していた箇所に肉が覆われ勿論臓器や骨類も見えない状態で、肌の色も人間並みのレベルで復活していた。


「首から下はもう完全人間やん、残りは顔と頭の部分やけどこの調子でお食事してたらすぐに綺麗な状態に戻ると思うは、それにしてもすげーよ、瑠偉ちゃん」


慎吾は着替えさせながら感動して何度も腕を止め喜び着替えを完了させる。あいかわらず瑠偉ちゃんはゆっくりユラユラ左右に揺れて慎吾を見つめていた。


「よしっ!!瑠偉ちゃんの着替えも完璧に終わった事やし、俺はちょっと腹ごしらえしよかな」


キッチンに向かいコンロに水をセットするとカップ麵を取り出してテーブルの上に置く。


「あっ・・・・・あ~あ!!その前に待ってる間に実家にでも連絡しとこかな?なんやかんやで俺も目一杯やったし、多分あっちは大丈夫やと思うけどちょっと心配やしな」


そう言うと慎吾はポケットからスマホを取り出す。

































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