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ゾンビが蠢く世界  作者: ありがとう君
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第1話 おっ!!!エグイですやんっ

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・疲れた~」


疲れ果て必死に辿り着いた3階建ての3階の団地の一室で倒れこみ天井に吊るされた照明を見ながら大きく呼吸を繰り返し慎吾は諦めた半笑いで呟く。


「はあ・・・はあ・・・はあ・・・しかしもう動けん無理」





数日前からニュースやSNSで『異常感染』『各地暴動』『死者多数』『海外壊滅』『日本も感染』

などの情報は耳にしていたが慎吾は『あらあら大変やん』ぐらいの気持ちで悪友と遊び悪友の家に溜まりまったく気にせず普通の日常を過ごしていた。その日は学校をサボり一人暮らしの4つ上の彼女の家に泊まり普段通りの手作り料理を食べたりDVDやゲームや愛の営みまったりお家デートを自由を満喫、3日目の昼に彼女がコンビニに出かけると言い残し出かけて行った。そして彼女は帰って来なかった。


「何やってるんや玲子は?」


慎吾は夕方になり彼女が帰って来ない異常に電話メールをするが繋がらない。慎吾のスマホのメールは大きな音の『緊急速報』が何度も鳴り、外からは遠くから衝撃音や悲鳴逃げ惑う足音が微かに聞こえる。


「何かヤバイな、玲子はどないしたんや?」


慎吾はそう呟くとパンツ一丁の姿からジャージ姿に着替えて外に出ると一番近いコンビニに向かって歩きだす。彼女の家は静かな場所に建っており人通りや車の交通は普段から少ないが、今は違和感を感じる静けさであいかわらず遠くからは衝撃音や悲鳴は止まらない。


「んっ?めっちゃ溜まってるけど・・・んっ!?」」


角を曲がるとコンビニの駐車場と入口が見える場所まで歩くとエプロンをした主婦らしき女性や背広姿の年配男性や制服姿の少年と少女の集団が目に入る、深夜ならヤンキーや同年代の奴らが溜まる事は良く目にするが、今の時間は夕方で珍しく溜まってる集団はヤンキー座りでは無く一心不乱に地面に横たわる何かに群がっている。


「何かキモイな・・・」


慎吾は異様な光景に足を止めると角に戻り頭だけ出す覗く姿勢で観察する。すると集団は横たわる何かに群がり奪い合うかの様に取り合い口に運んでいる。


「マジか・・・・・何や?・・・食ってるやん??・・・・・・・・・・・・えっ玲子???」


慎吾が観察していると普段から良くコンビニなど近場に出かける時の軽装と良く見る彼女の顔が視界に入る、服装はズタボロで血塗れで髪は乱れ目は開いたままで動かなく倒れたマネキンが大きくバウンドしているみたいな状態で無抵抗で揺れている。


「おいっ、ゴラアアアアアアア何やっとんねんボケがアアアアアア」


慎吾は一瞬思考が止まるが頭が真っ白になり気付くと沸点オーバーで拳を固めると小走りで集団に向かって行く。その声を聞いた集団は動きを止めるとゆっくりと慎吾に振り向く。


「・・・・・・・・・・えっ嘘やろ???」


振り返った集団の顔を見た慎吾は沸点も急速に治まり小走りも止まる、一番手前の主婦らしき女性は口が咀嚼すると血塗れの指が飛び出し真っ赤な血が滴り落ちて目は血走り、その他の奴も咀嚼は止めずに口から血だらけの脂肪らしき白い物体が口から溢れ出て目玉は動かず全員が一点集中で向かって来た慎吾を見つめる。


「・・・・・・・・・・」


慎吾が驚きと恐怖で完全に固まるのは関係無く、動かない腕や頬や横腹や体中食い散らかされ大きな穴が開き血が溢れ止まらない玲子の奪い合いを終わらすと集団は呻き声を上げてゆっくり立ち上がる。すると突然近くからスリップ音や壁やガードレールに擦る嫌な金属音を響かせながら一台のセダンが猛スピードで慎吾と集団目掛けて突っ込んで来た。


「・・・・・うおっっっ」


慎吾は嫌な金属音で我に返ると瞬間的に何も考えないまま横に飛び転び逃げると間一髪セダンを躱す、そのセダンは勢いを殺さず立ち上がった目が血走る主婦や背広姿の中年男性やその他の集団に衝突して動かない玲子を轢きそのままの勢いでコンビニの窓ガラスを粉砕して突き破ると動きを止める。


「玲子?玲子?」


数秒の間何が起きたか分からなかったが慎吾は何とか膝立ちなるとよろめきながら這って混乱した頭で玲子に近づく。だが玲子は体のパーツは至る所が無くなり頭部はセダンのタイヤに踏み潰されグチャグチャで原型も分からず誰が見ても完全に死亡していた。


「玲子?・・・・・なんやねんこれはぁぁぁぁぁ玲子?玲子?・・・マジか嘘やろぉぉぉ・・・あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


膝立ちで玲子の酷い姿を確認する。初めて見る目の前の人の死、向かって来る車の暴走、コンビニ衝突の事故、異常な町の雰囲気、人間を食う集団など色々な出来事が慎吾は頭の中で処理出来ずその場で大声で喉が枯れるまで叫び終わると数分何も考えられず呆然と膝立ちで固まる。


「・・・・・あっ??せやっ・・・あいつらと車の人は大丈夫なんか?」


原型を残さない玲子をもう一度確認して頭はまだ混乱しているが何とか立ち上がると周囲を見渡す。主婦は駐車場の車止めのコンクリートに頭を半分陥没させて白とピンク色が混ざる脳味噌と割れた頭蓋骨が見える、制服姿の男女は仲良く同じガードレールに胴体を半分切断されて折れた骨が飛び出している、背広姿は少し離れた駐車場でうつ伏せで倒れて両足が膝から逆を向いて動いていない悲惨な姿をそれぞれ確認する。コンビニに衝突したセダンは店の中に車体が半分以上突入していて見にくいが運転席と助手席の間に2人寄り添うような男女の様な後ろ姿が見える、一応確認の為に慎吾はフラフラした足取りだが何とか運転席側から近づく。


「大丈夫ですか?怪我は?」


窓ガラスが割れた運転席側の屋根に手を置いて覗き込む様に話しかける、シートベルトをしていたので運転手の若い男性は座席に背中を付けていて小刻みに揺れていて助手席の女性はシートベルトは見当たらず覆いかぶさる様に運転席の男性の首を正面から血塗れの口で必死に噛り付いた状態で目が合う。


「うげぇっ!!・・・・・」


喉から出る変な小さな声を出すと慌てて口を手で抑えて悲鳴と吐瀉物を閉じ込めると慎吾は全力でコンビニの駐車場から走って逃げ出す。後ろのセダンからは窓から抜け出る気配と地面に落ちるドスンの音を聞いて両足の膝から下が逆方向に曲がった背広姿がズルズル地面を腹這いで追いかけて来るのも目の片隅で確認してしまう。しばらく走って振り返ると腹這いの背広姿は見えなくなるが助手席の女性は髪を振り乱し両手を上げて上半身を左右に揺らしながら男性の慎吾と同じぐらいの速度で低い声で叫びながら追いかけて来る。玲子の家で遊ぶのも3回目で土地勘も無く先程のコンビニと大きなショッピングモールやパチンコ屋などの徒歩では行かないし彼女運転の車移動がメインで無我夢中で走るとすぐに道に迷う。


「クソッ分からんここは何処や・・・・・えっ!!そこにも似た様な奴おるやんけ!?」


住宅街の路地を迷いながら走っていると一軒家の門に両手でしがみ付き揺らしながら呻き声を上げる母と男の子の親子が走り去る慎吾を目で追いかけるとさらに力強く揺らしはじめ呻き声の声量を上げる、追いかけて来る助手席の女性も変わらず同じ姿勢同じ速度で付いてくる。


「はあ・・・はあ・・・もうあかん・・・もう走れん・・・」


ニコチン愛用者が原因なのか持久力が原因なのかしばらく全力で走ると限界が近い事が分かる、慎吾は周囲を見渡しながら走っているが隠れそうな場所も高い場所に届く逃げれそうな都合の良い梯子も助けてくれそうな人物など発見も出来ず、さらに存在が理解できない者に追いかけられるプレッシャーで追い込まれるのも加わり焦りと疲労で徐々に走るペースが落ちるのを感じる。


「クソッ、クソッ、クソッ、クソがぁぁぁぁぁ、俺も化け物に首ガッツリ食われて終わってまうんかぁぁぁぁ」


声にならない絶叫で顔を上げた時走るすぐ横の3回建ての団地の3階の一室の扉が開いているのを確認すると最後の力を振り絞り階段を駆け上がり無我夢中で鉄製の扉を閉めると靴のまま部屋の中にそのままの勢いで倒れ込む。







「はあ・・・はあ・・・はあ・・・疲れた~」


疲れ果て必死に辿り着いた3階建ての3階の団地の一室で倒れこみ天井に吊るされた照明を見ながら大きく呼吸を繰り返し慎吾は諦めた半笑いで呟く。


「はあ・・・はあ・・・はあ・・・しかしもう動けんもう無理」


『ズズズズズ~~~』気配と腹這いの音が耳に入る。


「ハハハ・・・でしょうね!そりゃ部屋の中にも化け物おるかもやんな、ハハハ~」


動かない体を動かす事を諦めて乾いた半笑いで天井の照明を見続ける。化け物が立ち上がって歩いて来るのも理解する。


「はあ・・・はあ・・・ギブ、ギブやで俺は動けん・・・・何で食われるか知らんけど、とりあえずギブで優しく痛くしないでね♡で頼むわ」


『人間って追い込まれて何も出来ないと悟ると本当に何も出来ないな~』と思うのは俺だけなのかなと『人生最後の言葉が優しく痛くしないで♡』って歴史上初でしょ流石俺って場違いな考えをしながら短い16年の人生を諦めて照明を見ている。


「・・・・・・・・・・んっ???」


数秒照明を見ていたが真横で立つ化け物の視線と存在ははっきり感じるが何も起こらない。慎吾は諦めの延長で思い切って真横の化け物を見る。


「おっ!!!エグイですやんっ」


真横には小さな女の子で本来の髪は肩あたりまで伸びているが大部分が抜け落ち顔全体青白く頭蓋骨が見え皮膚は崩れ落ち左目、鼻、左腕も消失して下半身は膝から下は骨が見えて腐っており胸部腹部も骨が見え肉が削げてポッカリ出来た大きな穴から向こうの景色が見えており強烈な異臭を放ち衣服は着ていない、残っている右目の視線はしっかり慎吾の両目を捉えて右手には血と肉で異臭を放つネックレスを突き出した状態で右手首に絡める様に立っている。慎吾は思わず見たままの感想が口から出ている。


「・・・・・女の子やな・・・でもエグイぐらいグチャグチャですやんめっちゃ臭いし・・・それで右手のネックレスは何なんや???最初から持ってた?よう分からんけど受け取れ的な感じなんかな???どうなんどっちなん???どっちなんや???・・・・・」


女の子の外れない視線の右目と気持ちが悪いネックレスを交互に見ながら混乱と不安と恐怖で小さな声を出していた。

































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