8話 ユキの内なる思い
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「いま楽にしてやる。――――インテンスルミエール!」
ユウト様が詠唱を唱えた瞬間、ケルベロスの胴体に白い魔法陣が現れ、そこにめがけて白い光がケルベロスを包み込んでいた。
「……やっぱりすごい方ですね。ユウト様は」
これだけの威力の光魔法であれば、間違いなくあのケルベロスは終わりです。
少しホッとした瞬間、体中から力が抜けたように感じて膝から崩れ落ちてしまった。
「……はぁ、今日は少しはしゃぎすぎてしまったようですね」
アンリとの勝負にムキになって挑んでしまったり、ユウト様の役に立てるように一生懸命になってしまったり……
「私ってこんなに感情的でしたっけ?」
感情的になってしまった自分に呆れて、少し笑ってしまった。
しばらくすると降り注ぐ光が弱まり、周りが見えるようになってきた。
……どうやらケルベロスは死んでいるようですね。
ケルベロスが死んだことを確認して、少しだけホッとした。
「それにしても、まだ体が言うことを聞きませんね」
この後どうやってお屋敷まで帰ったらいいのでしょうか? ユウト様に運んでもらうわけにはいきませんし……
ふとあたりを見回すと、ユウト様の姿が見えた。ユウト様は落ち着いた様子で私の方に近づいてくださっている。
「ユウトさ……」
私が声をかけようとした瞬間、大きな爆発音が横から聞こえてきた。
いったい何が?
ふと横を見ると、ケルベロスの死体が私の方に倒れていることに気が付いた。
あ、これは……
私は目を閉じて気を失ってしまった。もう目覚めることはないと確信しながら。
「……キ、……きろ、……返事をしろ!」
――――
「……キ、起きろ、頼むから返事をしろ!」
――――ッン
「ユキ!!!」
ハッ
誰かが私を呼んでいる?
意識を取り戻して目を開けると、目の前にユウト様の顔が見えた。
「ユキ!良かった、目が覚めてくれて……」
そういってユウト様は、今にも泣きそうだけどどこか安心したような、とても愛しい表情をしていた。
「えーと、これはいったい?」
「覚えてないか?ユキがケルベロスに潰されそうになって、それでおれがナンとかまにあって、それで……」
事情を説明してくださっているユウト様の声がやけに震えていた。声以外にも手や足まで……
Sランクのモンスター相手には一切動揺していなかったのに。
どうしてそんなに震えているのか理解できなかった。
「……とにかくユキを助けられて本当に良かった」
そう言って、ユウト様は一筋の涙を流しながら私に微笑みかけてくれた。
その笑顔を見た瞬間、心臓の鼓動が早くなった。
(もしかして私の心配をして……、いえ、まさかそんなはずは)
そう思った瞬間、私は自分の体温が急激に上昇していくのを感じた。
そして私は、なぜかユウト様の顔を見ることが出来なくなってしまった。
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※次は明日の18時20分ごろに第9話を投稿します。
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