6話 初クエスト
ここに来るのも久しぶりだな。
ユキ達が冒険者学校に行ってる間は家でゴロゴロしたり、あまねちゃんと買い物や食べ歩きをするなど、ほぼ俺が望んでいた生活をしていたのでギルドに行くことはなかった。
今日から冒険者をしなくてはならないのが残念だが、あの宮殿に戻るよりはよっぽどマシか。
ギルド内でアンリと合流した後、俺たちは5人でパーティーを組んでスライム討伐と薬草採取のクエストを受けることにした。
街の外に出る門をくぐった先には平原があり、少し奥に行くと深い森が見えてくる。
平原にはスライムがいつもより多く出現していた。
ここら辺だけでも200体以上いるだろうか?
こんなにスライムが出てるなんて珍しいな……
何か違和感を覚えたが、気にしていてもしょうがない。今はクエストに集中するか。
「へぇー。今日は結構スライムが多いわね。そうだユキ、どっちがスライムを多く倒せるか勝負しましょう!」
「いいえ、しません。多く倒しても報酬は変わらないですし、疲れるだけです。必要な数だけ討伐すれば十分です」
「ふーん。あ、分かった! そんな言い訳言ってるけど、私より倒せる自信ないだけでしょ。それならそうと先に行ってくれればいいのに……」
「根拠のないこと言うのやめてもらっていいですか?……ムカついたので勝負にのってあげます」
そういって二人は先にスライム討伐へと行ってしまった。
「あーあ、行っちゃった。ユウくん王子、私たちはどうする?」
ミーロンがこれからどうするか俺に指示を求めてきた。
……っていうか『ユウくん王子』って何だ? 俺まで変なあだ名をつけられてしまった。
「まあ、討伐はあの2人に任せて、俺たちは3人で薬草採取をしよう」
「りょーかい!」
「は、はい! 分かりました」
そうして俺たちは薬草採取を開始した。
かれこれ2時間ぐらい集中して薬草採取をしていただろうか。
薬草が大量に生えていそうな場所の候補がいくつかあったが、ほとんど残っていなかった。
なので、いろんなところをあてもなく俺たちは歩き回りつづけた。
そうしてなんとか俺たちは指定された量の薬草を集めることができた。
「うん、薬草採取はこれくらいで十分だと思う。2人ともお疲れ様。少し休んで……」
俺が少し休もうと提案するまえに、2人とも平野に倒れこんだ。
「あーー。もう、すっごく疲れたよ」
「わ、私ももう動けません……」
そんなに疲れていたのか……、少し無理をさせすぎてしまったか?
「2人は休憩してしばらくそこで待っていてくれ。俺はユキ達の様子を確認してくる」
「わかった! いってらっしゃーい」
俺はさっそく2人を探しに行った。
しばらく平原を歩いていて気づいたのだが、2時間前はいたるところにいたスライムが今では1体もいなくなっていた。
あの2人はどんだけスライムを討伐してるんだ? 確か指定された討伐数は50体だったはず。
見たところ1000体以上討伐しているように思えた。……これスライム絶滅したんじゃないか?
そんな風に思っていると、森の近くでユキとアンリの姿があった。どうやら2人ともかなり疲れているようで、武器を置いて座り込んでいた。
「おーい。二人とも。大丈夫か」
「うぅ、、あっ、ユウトだ…… わ、わたし勝ったよ」
「はぁ……、嘘つくのやめてもらっていいですか? 私は630体、あなたは627体。ユウト様、私が勝ちました」
「ハァハァ、、違うし、、あんたが見てないところでスライム4体倒したから私は631体。だから私の勝ち」
「ふぅ、、そういえば私、計算を間違えてました。本当は632体でした。なので私の勝ちです」
息も切れるくらい疲れているにもかかわらず、まだ言い争いをしていた。
アンリはともかく、まさかここまでユキも負けず嫌いな性格をしているとは思わなかった。
……なんだかんだ、いいライバル関係なんだろうな。
「きゃああああああああああ」
そう思った瞬間、森の方で誰かの叫び声が聞こえた。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
ドドドォォ――――
今度は地響きと共に、低いうなり声が爆音で聞こえてきた。
……これは本格的にまずいかもしれないな。
俺の知る限り、今までこの森からこんなうなり声が聞こえてきたことはない。
放っておいたら、多分街にも被害を出すレベルの魔獣な気がする。
今の自由な生活を奪われたくはないし、どうしたものか。
……仕方ない、メンドくさいが行くしかない。
「俺は今からこの森に入る。ユキとアンリは疲れてるだろうし、ここで待っていてくれ」
「いえ、私も行きます。体力はもう十分回復しました」
「私も行く。こんなの見過ごせるわけないじゃん」
「分かった。だが決して無理するな」
俺たち3人は森の奥へと進んだ。
※次は明日の18時20分ごろに第7話を投稿します。
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