53話 望まぬ再会
「ゆーちゃん、大人しくお人形ちゃんになりなさい!!!」
ミツキは目を見開きながら声を荒げ、おぼつかない足取りで近づいてきた。
その姿はどの魔物よりも恐ろしかった。
「……これ以上近づくな。これ以上近づいたらお前を排除する」
そういうとミツキは途端に歩くのを止め、俺をにらみつけきた。
「はぁ? ……ねぇ、また『お前』って呼んだ? 何回も忠告したよね……。……私を、お前呼びすんじゃねええええええぇぇぇぇよぉぉぉおおおおお」
突然ミツキは頭をかきむしりながら発狂しだした。……一体何なんだこいつは? あまりのひょうへんぶりに俺は少し動揺してしまった。
「はぁ……、ゆーちゃんにはお仕置きが必要だね」
「な、何なんだ……。それにお仕置きって……」
「ゆーちゃん、この『お人形ちゃん』と『ゾンビちゃん』に見覚えある?」
ミツキが腕を上げると、天井から2体の魔物が現れた。俺に魔物の知り合いなんか……
「って、親父とカズキ国王じゃないか!?」
なんでこの2人が魔物なんかになってるんだ?
ま、まさかミツキが……
「フフッ、せいかーい! それじゃあ、この2人にゆーちゃんを半殺しにしてもらいたいと思いまーす。さあ、いってらっしゃい」
「ウゥガァァァアアア!!」
雄たけびをあげ、魔物になった2人が襲い掛かってくる。しかも親父にいたっては、魔法まで使おうとしている。
「……これはさすがにやっかいだな」
俺は2人からキョリを保つように後ろに下がる。
「ゆーちゃん、私のこと忘れてない?」
―――シュッ
……おっと、危ない。あと少しであのナイフで刺されてたな。ミツキが背後に回ってきたのをいち早く察知できてよかった。刺されたら今頃俺もお人形ちゃんになってただろうし。
「にしても、ミツキまで攻撃してくるのか……」
このままじゃこっちがずっと後手に回ってしまう。こうなってしまったら流石にまずい。何かいい作戦はないだろうか?
「ゆーちゃん。何か企んでるようだけど、そんなことさせないわよ!!!」
「……お前に考えを読まれるなんて最悪だな」
「なっ!? ま、また、お前って……、なんで、なんで、なんで、なんで……」
突然3人の動きが止まる。
「なんでそんな呼び方するのよおおおおおおおおおおお!!!」
ミツキは発狂しながら、再び襲い掛かってくる。
(さっきより攻撃的になってる。……仕組みはよくわからないが、ミツキが攻撃的になると親父たちも連動して攻撃的になるのか?)
それなら最初に倒すべきは……。
俺は魔法銃の照準をミツキにあわせ、ちょうどいいタイミングで引き金を引いた。
―――ドン
「よし、これは命中……」
「残念♪」
―――バシュッ
「グゥゥアアアアアアアアアアアアアアア」
……カズキ国王を盾にしたか。
ゾンビちゃんになっているとはいえ、ダメージは相当だろう。同じ異世界転生者をこんな扱いにするなんてひどすぎる……
「なんでこいつらをこんな化け物にしたんだ?」
「……えっ? なんでって……、こいつら強いし、計画に役立つかなって……」
「そういうことじゃない。おま……、ミツキもこの2人と同じ異世界転生者なんだろ? なのになんで仲間を化け物なんかにしたんだ?」
「こんな奴ら仲間なんかじゃない!!!」
さきほどとは異なり、ミツキは悲しそうに声を荒げた。
「こいつらは私を裏切ったんだ……」
「裏切ったっていったいどういう……」
「うるさい!!! 私の過去をせんさくするんじゃねーよ!」
再び怒り出し、感情のままに2人を操りながら攻撃をしてくる。
今までの会話で思ったが、ミツキは精神的に相当打たれ弱い。なぜかわからんが俺がミツキをお前呼びするのもやけに嫌がっててるし。
……この戦いを終わらせるには、ミツキの戦意をなくさせた方がいいかもしれない。
優れた盾が2つもある状態だし、いくら俺が魔法を打ったとしても攻撃は通らない。かといって物理的な攻撃もこの状況じゃやりにくい。
覚悟を決め、俺はミツキに再び話しかける。
「……お前はこの2人になにか嫌なことでもされたのか?」
「なっ!? うるさい!! さっさとお人形ちゃんになっちゃえ!!」
「俺はお人形ちゃんなんかにはならないし、お前と2人きりの世界なんか俺は望まない」
「えっ……。そ、それってどういうこと? ねぇ、どうして……」
突然動きを止め、今度はいきなり泣き出してしまった。
「ゆーちゃん、私に優しくしてくれたよね? ……これって、私のことを愛してるってことだよね? ねぇ、そうだよね……」
すがるような目で俺のことを見てくるミツキ。
……正気の沙汰じゃない。彼女の言動や気持ちがまるで理解できない。
「……なんのことを言っているんだ?」
「えっ、なんで、そんな……。覚えていないの? 初めて会った日のこと」
初めて会った日。AICⅡであった時か?
「あのとき、ゆーちゃん。『お姉さんも夜はあまり出歩かないほうがいいですよ』って言ってくれたじゃない。これって私のことを好きになって、愛しているから心配してくれたんだよね?」
なんだそれ……。どうしたらそんな解釈ができるんだ……。
「確かに言ったかもしれないが、お前は少し変な勘違いをしている。……俺はお前を愛していなんかいないぞ」
「えっ……」
部屋の空気が一瞬で凍り付く。
「い、い、いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
そして、その空気はミツキの悲鳴で崩壊した。
※次は明日の18時20分ごろに第54話を投稿します。
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