42話 エルフの村
屋敷に戻ると、みんな一言もしゃべらずジッとイスに座って俺を待っていた。
それに、なぜかみんな険悪な表情をしている。
どう声をかけようかしばらく迷っていると、ミーロンと目が合った。
彼女はそのあと、みんなにバレないようにゆっくりと俺に近づいき、小声でしゃべりかけてきた。
「もぉー、ユウくん遅いよ! この空気なんとかしてよ! ずぅっと気まずかったんだよ!」
「わるかった。それで、いったい俺がいない間に何があったんだ?」
「えっと、実はね……」
話を聞いて、俺はあぜんとしてしまった。
どうやら俺がいない間にランディアたちは再びケンカをしてしまったようだ。
ケンカの原因はランディアのお見合いについて。
どうやら両親は、まだランディアにお見合いをさせることをあきらめていないそうだ。
「ランディア一家が怒っている理由は分かった。だけど、なんでユキとあまねちゃんまであんなに怒ってるんだ?」
「それなんだけど、実はランちゃんがユウくんと結婚するとか言い出しちゃって……」
「なんだって!?」
思わず大声を上げてしまった。
「ちょ、ちょっと、ユウくん! そんな声出したらみんなにばれちゃう……」
あっ、しまった。
気づいた時にはもう遅く、すでにみんなの視線が俺に集まっていた。
「ユウトさん、ランディアと結婚するっていうのは本当なんですか?」
……どう答えようか迷っていると、ランディアが代わりに答えてくれた。
「そ、そうです! ユウトさん私に恋しちゃったみたいで。ね? ユウトさん? そ、それに私も、ユウトさんとなら結婚してもいいかなって思って」
「おい、なに勝手なこと……」
俺が否定しようとすると、ランディアが俺の口をふさいできた。
「……お願いします。ちょっとだけ話を合わせてください」
俺にしか聞こえないくらい小さい声量でお願いしてきた。
「なんでだ? こんなことしたっていずれバレるぞ」
「お願いします! 今だけしのげれば後はどうにかしますので」
あまりやりたくはなかった。
だがここまでランディアが必死になるということは、よっぽど他のだれかと結婚するのが嫌なんだろう。
「……今だけだぞ」
そうして、俺はしょもない小芝居に付き合うことにした。
その後話を進めていくと、意外にもご両親は納得しているようだった。
(もう少し怒られると思っていたんだがな……)
俺の予想に反して話はどんどん膨れ上がっていき、ついにとんでもない展開になってしまった。
「いやぁ、実にめでたい。明日にでもエルフの村に戻ってみんなに報告しなくては! ユウトさん、ぜひ一緒に行きましょう!」
「えっ……」
「そうですね! ぜひ私たちの村でお祝いさせてください!!」
最悪な展開だ。
俺は両親にばれないよう、ゆっくりランディアに耳打ちする。
「おい、なんかとんでもないことになってきたぞ……」
「えっーと、そうですね……。こうなったらもう両親を止められそうにないので、一緒に行ってもらってもいいですか?」
……さすがにそれはまずい。
次に俺はユキとあまねちゃんに助けを求めた。
「なぁ、2人とも何とか協力してくれ! このままじゃ俺結婚されられてしまう……」
なぜか二人はにっこりと笑ったあと、2人が俺の両腕にしがみついてきた。
「えっ? 二人とも何して……」
「ランディアのお父さんお母さん、実は私たちもユウトさんと結婚しています!」
「ゆ、ユウト国王はすっごく甘えん坊で、いろんな女の子とイチャイチャしてるひどい人なんですよ!」
そう言い放った後、2人は俺にむかってニヤッと笑いかけてきた。
2人ともなんてことしてくれたんだ。
いや待て、これは俺の評価を下げて結婚させないようにする作戦……
って、こんなことしたら俺がサイテーな男だと思われるだけで、一切問題が解決しないような気がするんだが!
「ああ、それは別にかまいません。うちの村では重婚は許されていますので」
「婚約者の皆様も遠慮せず、ぜひいらしてください!」
俺たちの抵抗もむなしく、エルフの村に行くことが確定した。
翌朝、俺たちはそろって出発し、昼過ぎごろにエルフの村に到着した。
エルフの村は小さい村ではあったが、自然豊かですごく心地よかった。
建物もほとんど木材でできている一軒家がほとんどで、どこか懐かしさを感じた。
AICⅡでの暮らしになれていた俺にとっては新鮮だった。
「ユウトさん、さっそくで悪いんですが、まずは村長に会いに行きましょう!」
「はい、分かりました」
そう言われ俺は、村長の家に案内された。
「いらっしゃい。遠いところからわざわざありがとね」
「あっ、いえ、とんでもない……」
村長は長く白いヒゲを蓄えており、落ち着いた雰囲気のある高齢のエルフだった。
エルフは長寿だとは知っているが、いったい何歳なんだろうか?
いや、そんなことを気にしている場合ではない。思いついた疑問を払いのけ、俺たちは今まであったことを村長に説明した。
「フォッフォッフォ。つまり、わしの孫にもついに良い縁があったということじゃな」
「えっ? ランディアは村長のお孫さんなんですか?」
「そうじゃ。わしに似てなくて非常にかわいいじゃろ。フォッフォッフォ」
これは本格的にまずいことになった。
これ以上進んだら本当にもう後戻りすることが出来ない。
俺が冷や汗をかいて動揺していると、村長と目が合った。
そしてなぜか、俺に優しく微笑みかけてきた。
「せっかくじゃ、今日は祭りでも開こう。ランディアも久しぶりにかえってきたことじゃし」
「いいですね! それじゃあ私がみんなに知らせてきます」
まずいことに着々と準備が進んでいった。
さすがに罪悪感に耐えられなくなり、俺は何とか村長にだけは事情を話しておこうとした。
村長だけになったタイミングで声をかける。
「村長、実は今回の婚約なんですが……」
「分かっておる。ランディアに頼まれて無理やり婚約させられそうになっておるんじゃろ? 心配するな。村の者にはあとでわしから説明しておく」
なんと、ありがたいことに村長はすべて察していてくれたようだ。
初めて会った俺にまで気を使ってくれたのか……
村長の慈悲深さに感謝しなくては。
「ホントですか……。ありがとうございます」
「フム。じゃが、せっかくきたんだし、祭りには参加していってはもらえないか?」
「それはもちろん! 喜んで参加させていただきます」
「……ランディアは昔から内向的で、あまり誰かに頼ったりしない子なんだ。ましては種族の違う人間には特に警戒心が強くて。だけど君たちには心を許しているように見える。婚約うんぬんは置いておいて、これからもランディアのことをよろしく頼むよ」
そう語った村長は、さっきと同じように優しく微笑んだ。
(……ランディアのことを本当に大切に思っているんだな)
村長の思いをしっかり受け止め、俺は力強く返事をした。
「はい。こちらこそよろこんで」
※次は明日の19時20分ごろに第43話を投稿します。
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